goo

「校合雑記 巻の壱」の解読 21


校合雑記巻の壱 21P

「校合雑記巻の壱」の続き、20P4行目途中より。

針賣となら連し尓、匹馬(曳馬)と言所ヲ
過給ふ時、同国久野之城主松下加兵衛、浜松の飯尾豊前守(飯尾、松下して今川の幕下)
※ 幕下(ばくか)➜ 張りめぐらした幕の中。陣営。
可許(もと)江行希る秀吉越見付て其面(そのつら)、人尓もあら須゛。只猿の様
尓見へ介る越阿やしミて、何國のものそと問盤せ希る尓、
我盤尾州の物なり。奉公能望ミ有と答へら連介れ者、さらバ
我ホ尓志多可へ来れとて濱松江飯召具し、豊前守尓逢ふて
道より異人を召し具したりと語を彼を呼とて秀吉ヲ
召具し介る尓実尓其さ満猿尓似りとて豊前守内室なと
※ 内室(ないしつ)➜ 貴人の妻を敬っていう語。おくがた。
見物して皮の付多る栗越あ多へ介る尓其皮を口ニて
剥食し給へ介連者゛、いよ/\猿のことしとて、各/\笑ひあへ
りとなり。其後、加兵衛盤秀吉越召具して、久能ニ帰りて
初免ハ草履取を志介る可程なく取立納戸能奉行と為ス
此時自分、木下藤吉と改られしと也。
或人之曰、朝比奈三郎義秀可勇名越慕ひ其(いみな)
※ 諱(いみな)➜ 実名の敬称。貴人の名から一字もらうときなどにいう。

越轉倒(てんとう)して、秀吉と徒希られしといふ。一説ニ佐々木
※ 轉倒(てんとう)➜ さかさまにすること。
義秀諱の一字越給王る共云り。此説用ひか多起尓や。

【 読み下した文】

針賣となられしに、匹馬(曳馬)と言う所を
過ぎ給う時、同国久野の城主、松下加兵衛、浜松の飯尾豊前守(飯尾、松下して今川の幕下)
が許(もと)へ行きける秀吉を見付けて、その面(つら)、人にもあらず。ただ、猿の様
に見えけるを怪しみて、何国のものぞ、と問わせけるに、
我は尾州のものなり。奉公の望み有り、と答えられければ、さらば
我らに従え来たれとて、浜松へ召し具(ぐ)し、豊前守に逢うて、
道より異人を召し具したりと語るを、彼を呼べとて、秀吉を
召し具しけるに、実にその様、猿に似たりとて、豊前守内室など
見物して、皮の付いたる栗を与えけるに、その皮を口にて
(は)ぎ食いし給えければ、いよ/\猿のごとしとて、各々笑い合え
りとなり。その後、加兵衛は、秀吉を召し具して、久野に帰りて、
初めは草履取りをしけるが、程なく取り立て、納戸(なんど)の奉行と為す。
この時自分、木下藤吉と改められしとなり。
或人の曰く、朝比奈三郎義秀が勇名を慕い、その諱(いみな)
転倒して、秀吉と付けられしという。一説に、佐々木
義秀諱の一字を給わるとも云えり。その説、用い難きにや。

(21P1行目まで、以下続く)

********************

午後、駿河古文書会で、静岡へ行く。総会があった。

読書:「無明 警視庁強行犯・樋口顕」 今野敏 著

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )