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道聴塗説 その七 1

(散歩道のコメザクラ)

散歩道に、コメザクラが咲きだした。ソメイヨシノの咲き始めるにはまだ一週間ほど掛かりそうだと、ニュースは報じていた。

午後、掛川文学鑑賞講座で掛川に行く。今年度最後の講座で、今日は「渋沢栄一」がテーマで、彼を扱った歴史小説が数冊紹介された。来年度の受講の申し込みもしてきた。来年度のテーマは、「井上靖」である。彼も静岡県にはゆかりの多い作家である。

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今日より「道聴塗説 その七」の解読を始める。

その七
一 問う。口伝鈔に、「されば常の人は、妻子眷属愛執深きをば、臨終の際には、近付けず見せんと、引き裂くる習いなり。それと云うは、着相に引かれて、悪道に随(ずい)せしめざらんがためなり。この条、自力聖道の常の心なり。
※ 眷属(けんぞく)- 親しく従う者、妻子や従僕をいう。
※ 愛執(あいしゅう)- 愛するものに心がとらわれて離れられないこと。
※ 着相(ちゃくそう)- 特定の物事に心がとらわれている状態。
※ 聖道(しょうどう)- 仏の教え。また、悟りを開く道。仏道。


他力の真宗には、この義有るべからず。その故は、如何に境界を絶離すと云えども、保つ処の他力の仏法なくば、何を以ってか生死を出離せん。仮令(たとい)妄愛の迷心深重なりと云えども、これがために、設けられたる本願なるによりて、至極大罪の五逆謗法等の無間の業因を重(おも)しとまし、まさざれば、まして愛別離苦に耐えざる、悲歎にさえ(添え)らるべからず。
※ 出離(しゅつり)- 迷いを離れて解脱の境地に達すること。
※ 五逆(ごぎゃく)- 五種の最も重い罪。一般には、父を殺すこと、母を殺すこと、阿羅漢を殺すこと、僧の和合を破ること、仏身を傷つけることをいい、一つでも犯せば無間地獄に落ちると説かれる。
※ 謗法(ほうぼう)- 仏法をそしり、真理をないがしろにすること。
※ 愛別離苦(あいべつりく)- 親愛な者と別れるつらさ。親子・夫婦など、愛する人と生別または死別する苦痛や悲しみ。仏教でいう、八苦の一つ。


浄土往生の信心成就したらんに付いても、この度が輪廻生死の果てなれば、歎きでも、悲みも、最も深かるべきに付いて、跡枕に並び居て、悲歎嗚咽し、左右に群衆して恋慕涕泣すとも、更にそれに依るべからず。さなからんこそ、凡夫げも無きて、ほとんど他力往生の機には、不相応なるかやとも、嫌われつべけれ。されば、見たからん境界をも、憚(はばか)るべからず。歎き悲しまんをも、忌むべからず」と云々とあれば、流義の意は臨終の行儀など別の設けるにも非ずと聞こえたり。
※ 跡枕(あとまくら)- 後枕。横たわった人の、足の方と頭の方。
※ 涕泣(ていきゅう)- 涙を流して泣くこと。
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