goo

岡田原の「牧之原開墾紀功碑」を読み解く その2

(塩郷ダム)

昨日、漢文碑を探して川根に入った。帰りに初冬の塩郷ダムを見た。その前に上長尾で、走行中、小石が飛来して、ピシッと音がし、フロントガラスに20センチ強のひびが横に入った。今日はディーラーに修理に出した。免責分出費となる。どこに災難が有るか知れたものではない。

午後、静岡に駿河古文書会に出席した。その前に浅間神社に漢文碑を探しに行く。五基あったが、状態が悪くて読み解くには苦労しそうである。

「牧之原開墾紀功碑」の解読を続ける。

後、答えて曰く、君等の挙、可は則ち可なり。余の考えは反せり。今や天下新たに定なる。人心の不測知るべからず。この時にして空死す。何の益あらむ。我、君を以って駿河久能に拠(よ)らしむべし。君等精を養い、約を堅くし、一朝不測の変あらば、死を以って時に報ぜば、如何(いかん)。宜しく熟慮を以って、その去就を決せよと。後、君等、この議を可なりとし、終に去りて久能山に入る。
※ 可は則ち可なり - それはそれで優れている。
※ 不測(ふそく)- 予測できないこと。思いがけないこと。
※ 空死(くうし)- むだ死。
※ 駿河久能(するがくのう)- 静岡市にある久能山東照宮。家康を祭る。


後、国家益(ますます)無事。君等再び余に告げて曰く、今や形勢かくの如し。空しく久能にあり、徒食老死せむは、我輩誠に本意にあらざるなり。聞く、遠江金谷原は磽确不毛、水路に乏しく、民捨て願わざること数百年、若し我輩をしてこの地を与えば、死を誓いて開墾を事とし、力食一生を終らむと。
※ 徒食(としょく)- 働かないで遊び暮らすこと。
※ 磽确(ぎょうかく)- 石ころが多く、土地がやせていること。
※ 力食(りきしょく)- 力仕事で食っていくこと。


我これを聞き、感激殊に甚し。終に行事を斡旋す。今や開墾、その緒を成せり。今季(今年)聖天子、北に巡し、輦輿、我が静岡を過ぐ。君等の勉勱(勉励)、入叡聞こし召し見て、その篤志を嘉賞し、千金の恩賜ありと。
※ 行事(ぎょうじ)- ある事柄を中心となって担当すること。また、その人。責任者。世話人。
※ 聖天子(せいてんし)- 徳の高い天子。明治天皇のこと。明治11年、明治天皇、北陸・東海道地方巡幸があった。
※ 輦輿(れんよ)- 轅(ながえ)を肩に当てて移動する輿(こし)。
※ 入叡(にゅうえい)- お入りになること。「叡」は、天子の行いに冠して敬意を表す語。
※ 嘉賞(かしょう)-よしとして、褒めたたえること。


我これを聞いて感歎し曰く、嗚呼(ああ)君等一死の誓い三変して今に及び、能く小を捨て、大に移り、国家有益の大業を成就す。その始め、確乎たる精神、至誠にあらざれば、何ぞかくの如くならんや。然りと雖(いえど)も、今より後、益(ますます)勉勱(勉励)友愛して、毫(ごう)も賞に驕り、逸に失し、この聖天子の恩遇を辱(はずか)しむなかれ。
※ 逸に失し(いつにしっし)- 逸失。失うこと。手に入れられずになくしてしまうこと。
※ 恩遇(おんぐう)- 情け深いもてなし。厚遇。


今我れ、その開墾の淵源を述べ、後世、君等の子孫に伝え、その祖の勉勱(勉励)困苦、終にこの盛典に遭遇せしを知らしめんとす。
  明治十一年仲冬   友人勝安房、記して諸君に呈す。
※ 淵源(さいげん)- 物事の起こり基づくところ。根源。みなもと。
※ 仲冬(ちゅうとう)- 陰暦11月の異称。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )