河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2643- 芥川也寸志、交響管弦楽のための音楽、團伊玖磨、飛天繚乱、黛敏郎、饗宴、千住明、滝の白糸、大友直人、群響、2018.11.26

2018-11-26 23:07:24 | コンサート

2018年11月26日(月) コンサート・ホール、オペラシティ、初台

芥川也寸志 交響管弦楽のための音楽  4-5

團伊玖磨 管弦楽幻想曲 飛天繚乱  16

黛敏郎 饗宴  10

Int

泉鏡花 原作 義血侠血
黛まどか 台本

千住明 作曲 滝の白糸 序曲と第3幕 (演奏会形式) 4、2-7-18-13

キャスト
滝の白糸、中嶋彰子(ソプラノ)
欣也、高柳圭(テノール)
欣也母、金子美香(メッゾ)

二場・乗客1、三場・傍聴人1、北原瑠美(ソプラノ)
一場・口上、児玉和弘(テノール)
一場・観客1、二場・乗客2、櫻井淳(テノール)
一場・観客3、三場・傍聴人2、芹澤佳通(テノール)
一場・観客2、二場・役員、大川博(バリトン)
二場・乗客3、三場・傍聴人3、小林啓倫(バリトン)

二場・南京出刃打ち、清水那由太(バス)
三場・裁判長、金子宏(バス)

合唱、群馬交響楽団合唱団

大友直人 指揮 群馬交響楽団


滝の白糸 duration
序曲  4
第3幕
第1場(晩夏) 福井の芝居小屋  2
第2場(秋) 秋・高岡一石動間の乗合馬車  7
第3場(秋) 金沢地方裁判所  18
第4場(晩秋) 13

この日のプログラムは昨年2017年に大友が東響を振ったプログラムとほぼ同じ。違いは前半1曲目の芥川也寸志のトリプティークが交響管弦楽のための音楽になっていることだけですね。

2394- 芥川、トリプティーク、團、飛天繚乱、黛、饗宴、千住、滝の白糸、大友、東響、2017.8.20

それで、まずはメインプログラムの滝の白糸。
昨年同様、オペラの序曲を演奏してから第3幕に入る。配役のポジションも昨年の事を思い出させるもので概ね同じものだろう。
4シーンあって最初の場は芝居小屋での口上のみで短いもの。ドラマとしての盛り上がりはこの幕最長となる3場。そしてメロディーがとめどもなく溢れ出て流れまくる4場終場。
客席は少し明るめにしてあるのでプログラム冊子に挟んである日本語リブレットを読みながら見ることは出来るものの、日本語での歌とは言え、やっぱり、字幕が欲しかったなあという思いもある。

初演指揮者による演奏は素晴らしく流れの良いもので、緊張感に溢れ、歌、オーケストラともに充実の内容。前半のプログラムの演奏から感じていたのだが、群響、この-ホールで凄く演奏しやすそう。思った通りの音をプレイヤー自身が感じているようで、鳴りがしっかりとしていてバンバン響いてくる。やってるほうが手応えあるというのは心地いいだろうね。
合唱は男声がややザラザラな地声が飛んできてもうちょっと滑らかに削って欲しいなあというところもあるが女性陣の張りつめた歌などなかなかいいものであった。

ソリスト陣は沢山出てきて、同じ人が別の役を歌ったりするので、コンサート・スタイルだと紛らわしいものなので、やっぱり字幕が必要だったなあとなる。白糸、欣也、欣也母は指揮者のところでの歌なので、観るほうも彼らの部分は手に取るようにわかる。

ドラマチックな3場、悲劇のデュエット4場。悲しくも甘い結末に向かっていくその果ての終場4場はあまりにメロディアスでちょっと向き変えるとそのままイタオペ突入という流れの中、ギリギリで踏みとどまる千住オペラ。音響のダイナミクスを少し横に置き、日本人的な心象風景のアヤのほうにかじを切ったような雰囲気を醸し出すあたりは、やはり、格別の味わいではある。

白糸中嶋は貫禄もので切迫感と潔い諦めが綯い交ぜになった役どころを多彩な表現で歌い尽くす。濃い濃い渾身の歌唱でした。こうなると、欣也も頑張らないといけない。もはや、つられて快唱的なところも合わせて、吹き上げるテノールはソプラノ中嶋のオーラが伝播したかのようだ。初演歌唱の自負はあるだろうね。こんなに屈折した役はめったにないだろうから、歌と歌周りの香りを出していかないといけないし複雑だ。
ドラマチックな内実を歌で話す欣也母金子、泣きの入る親の切なさを切々と。本当に悲劇、悲しさ極まる。

大友の歌を救い上げていくタクトは見事なものだ。一瞬の弛緩もない。淡々と進めているようで、音楽に隙間を作らない、このオペラにまことに相応しいものでした。伴奏のオーケストラはまるで自家薬籠中のお品。泣きから咆哮までニュアンスの層が多く有り多彩なパレット。彫りの深い演奏で奥行き感も十分。圧倒的な演奏でした。

プログラム前半に置かれたいわゆる三人の会の三作品。
芥川也寸志の作品は、粒立ちよく単調なリズムが心地よい前半と、音響で攻める後半。良く鳴らした作品でオーケストラの機能的なあたりのことを味わえる。オケ好演。

團伊玖磨の飛天繚乱は、もう、結構聴き馴染んでいて、自然に描写が目に見えてくる感じ。ハープをはじめとして、天女が舞い飛ぶ。本当に才能あふれるお三方だったんだと思いを新たにする。オケの滑り具合が良い。飛び・舞う、素晴らしい演奏。

黛敏郎の饗宴も、聴き過ぎている。オーケストラの咆哮。群響が腕まくりして全員吹奏、叩き、弾く。圧巻の内容でしたな。
ソプラノ、アルト2本、テノール、バリトン、計5本のサックスをウィンドレヴェル左側に一列に配し、目にも来る。右奥のティンパニはまるでジャズドラマー風味満載。ばちが低い天板にあたりそうだ。この派手さ、並ではない。終わったら整理体操要ると思うよ。
オーケストラという音響体をフルに鳴らした黛の傑作はいつ聴いても新鮮だ。オケの筆舌に尽くし難い爆演に大ブラボー。


ということで、三人の会の作品、そして千住明の滝の白糸。満喫しました。群響の快演にも大拍手。作品に寄り添った大友のタクトも見事なものでした。

千住さん終わったところでステージに。スペシャリスト大友だけではなく、たくさんの指揮者にこの作品を振って欲しいものですね。

今日は素晴らしいコンサート、ありがとうございました。
おわり