2018年11月8日(木) 7:00pm サントリー
ブラームス ヴァイオリン協奏曲ニ長調op.77 23-9+8
ヴァイオリン、レイ・チェン
Int
ブラームス 交響曲第4番ホ短調op.98 13-12-6+10
小泉和裕 指揮 東京都交響楽団
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レイ・チェンのヴァイオリンはめっぽう大人びいていて落ち着きがある。そう見えるのは音出しのフレーズ前部分に次の音に対する見定めがあって、イメージを固めてから弾き始め、出てくる音を吟味している様子があるから。そういったあたり余裕に見えるのだが、意識されたイメージが一つ先を行く。先を行く弾き手はやっぱり、凄いなと思う。シックでたっぷりとした自在余裕弾きは結局、作品の偉大さをあらためて教えてくれる。
小泉の棒のもと随分と弾きやすそう。ピアノ伴奏では一滴もピアニストを向かず、アイコンタクトなんて言葉あったのか、といった振りなのだけれども、ヴァイオリンだと角度の違いがあるのか、アイコンタクトは全くないものの身体全体をレイのほうに揺り動かすこともあって、彼独特のコンタクト方法があるのだろう。
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取り巻きの中に居ると居心地が良くなって、見失うものもある。ヨーロッパ公演で気づきを察知し、身を粉にして切磋琢磨が必要であった。別にツアーでなくてもいいのだが、居心地のいい世界から一度離れるのがいい。今日の演奏はオケ自身がプレイすればするほどに、自分たちに何かが足りない、そういうことをプレイしながら気づいてしまっている。空虚な鳴りを感じているのだがどうすればいいのかわからない。プレイヤー達が虚しさに気づいてしまっている。
鉄板に壁ドンのブラス、それの場も無くて、ざっくり目のザッツ弦、前進力推進力それも横に置いたとき、じゃあ、なにでこのブラームス4番を表現するのかと、何か必要なものがあるはずだともがくオケ。
小泉はなにやらわかっていそうだ。気づかせの棒はなかなかうまくいくものではない。空虚寸前の音響を小泉は踏みとどまらせた。
全体に音色を変えることなく、折りたたんでいくようなブラームス、そういった手応えはありました。
おわり