河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

PC版に一覧等リンクあり。
OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2430- 神々の黄昏、新国立、飯守泰次郎、読響、2017.10.17 千秋楽

2017-10-17 23:37:37 | オペラ

2017年10月17日(火) 4:00-10:10pm オペラパレス、新国立劇場、初台

新国立劇場 プレゼンツ
ワーグナー 作曲
ゲッツ・フリードリッヒ プロダクション
New production for opera-palace originally based on Finnish National Opera 1996

神々の黄昏  35+80、68、79

キャスト(in order of appearance, also voices’ appearance)
1-1.第1のノルン、竹本節子(Ms)
1-2.第2のノルン、池田香織(Ms)
1-3.第3のノルン、橋爪ゆか(S)
2.ブリュンヒルデ、ペトラ・ラング(S)
3.ジークフリート、ステファン・グールド(T)
4.ハーゲン、アルベルト・ペーゼンドルファー(Bs)

5-1.グンター、アントン・ケレミチェフ(Br)
5-2.グートルーネ、安藤赴美子(S)

6.ヴァルトラウテ、ヴァルトラウト・マイヤー(Ms)

7.アルベリヒ、島村武男(Br)

8-1.ヴォークリンデ、増田のり子(S)
8-2.ヴェルグンデ、加納悦子(Ms)
8-3.フロースヒルデ、田村由貴絵(Ms)

合唱、新国立劇場合唱団
飯守泰次郎 指揮 読売日本交響楽団

duration
プロローグ 35
第1幕 15+28+37
第2幕 68
第3幕 79

二日目の公演はこちら
2421- 神々の黄昏、新国立、飯守泰次郎、読響、2017.10.4

四日目の公演はこちら
2425- 神々の黄昏、新国立、飯守泰次郎、読響、2017.10.11


前3作の感想はこちら。

1999- ラインの黄金、千秋楽、新国立劇場、2015.10.17

2199- ワルキューレ、三日目、新国立劇場、2016.10.8

2358- ジークフリート、飯守泰次郎、東響、2017.6.7

2015年10月1日、ラインの黄金の最初の音が出る前に現れたアルベリヒが舞台の大きな眼のようなものの中に映るシルエットの木を眺めているところから始まったゲッツのリングサイクルは今日のブリュンヒルデの鮮やかにしてさわやかに全てを悟り切った顔を眺めながら千秋楽の幕を閉じた。

終わってもなお闇というのが率直な気持ちだが、崩壊の中、まるで白装束のような布をまとったブリュンヒルデがそれを広げ黒いドレスで姿を現し、ワーグナーの怒涛のような音楽がきれいに閉じる。これは何だろうかと自問しても答えは出ず、ただ、ゲッツはこれを次の新たなプロダクションのリングの開始につなげたかったのではないのかなあ、などとあらぬことを妄想するのみ。

カミタソは、二日目、四日目、千秋楽。偶数回に観劇。

幕         二日目 四日目 千秋楽
プロローグ+第1幕 115 : 108 : 115
第2幕       68 :  63  : 68
第3幕       80 :  76 : 79

聴いた中では四日目の演奏が異常。他日に比べ15分以上短いもので、なぜあんなに荒れ狂ったのか、それは神のみぞ知る。

新たな発見としては、四日目の感想で書いた第2幕のトレモロのフシが、既に第1幕第2場、ハーゲン、グンター、ジークフリートという男同士のわるだくみ三重唱にちらりと出てくる。なるほど、と。

第1幕第3場前半、マイヤーPAならぬ効果音はおそらくホール左サイド上から、そのあとすぐに舞台に現れるマイヤーの離れ技。まぁ、演出ですね。
切々と歌うマイヤー、それに寄り添う伴奏の読響演奏が絶品。心象風景に忍び寄るような見事な呼吸。デカ音だけでなくこういったところもきっちりとパフォームするこれはもはやワーグナースペシャリスト集団ですよ。

この3場後半へ急転直下の場面転換ならぬ推移。ここでグンタージークフリートに襲われたブリュンヒルデが、次の第2幕、正気を失ったブリュンヒルデとしてグンターに手首をつかまれ婚礼舞台に出てくるシーン。ペトラ・ラングの鬼気迫るあまりに鮮やかな演技に声を失う。歌を越えた瞬間だろう。

といった具合で1幕2幕、観どころ聴きどころ満載でした。
2幕の合唱は強力だがもっと強力でいいし、それに真に迫った演技が欲しい。ストップモーションもきまったとは言えない。舞台が暗いものであればあるなりにメリハリのあるものが可能だったと思う。欲を言えばキリがない話ではあるが。


リング4演目フル出場のステファン・グールド。名前を初台に刻んだと思います。
プロローグや1幕で聴こえにくかった声はもしかしてワーグナーの書法のせいではないのかと思えるほど3幕でのほれぼれする最後の歌唱。なめし皮のようにしなるヘルデンテノールが今日はさらに輝き、なにやら一段帯の太さも増した。しなやかにして黒光りする美しさの極み。十分に味わい尽くしました。
それから、彼のフル出場、最初のラインの黄金でのローゲの歌唱とキャラクター、忘れ難きものがありましたね。thanx

憎きハーゲンのペーゼンドルファー、体躯といい顔つきといい、パーフェクトなキャラクター、ワルキューレではフンディングもこなした。
彼の歌唱にも感服。前に出てくるもので、それに決まりにくそうな低い低いところもきっちりと歌いにいく、ああいったところも圧巻ですね。悪役キャラに歌唱は誠実にして忠実、凄味あります。

安藤、ケレミチェフのカップルも印象的でした。双方スキニーでスタイル容姿良し、ベストカップルのように見える。ケレミチェフはやわな役どころなれど殊の外通る声で印象的でした。安藤さんは動きが華麗、細身から出てくる芯のある声で素敵でした。


飯守、読響はワーグナー王道、圧巻の演奏。
普段コンサートで聴く読響の正三角錐の音場が、ピットでも再現。揺蕩うバスを基底にそれに各インストゥルメントが上に上にと積み重なっていく音場。技と安定感。ズシリと響く手応え十分の重厚サウンド。本格的なワーグナーサウンドですな。
飯守の棒は激しい動きも魅せる中、歌に寄り添う呼吸もお見事で歌い手たちからの信頼も厚そう。いい棒でした。


リングサイクル、グールドに始まり、ラングに終わった感がある。
あっという間に終わってしまいました。素晴らしいリングサイクル。ありがとうございました。
おわり