河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2425- 神々の黄昏、新国立、飯守泰次郎、読響、2017.10.11

2017-10-11 23:19:36 | オペラ

2017年10月11日(水) 2:00-8:00pm オペラパレス、新国立劇場、初台

新国立劇場 プレゼンツ
ワーグナー 作曲
ゲッツ・フリードリッヒ プロダクション
New production for opera-palace originally based on Finnish National Opera 1996

神々の黄昏  35+73、63、76

キャスト(in order of appearance, also voices’ appearance)
1-1.第1のノルン、竹本節子(Ms)
1-2.第2のノルン、池田香織(Ms)
1-3.第3のノルン、橋爪ゆか(S)
2.ブリュンヒルデ、ペトラ・ラング(S)
3.ジークフリート、ステファン・グールド(T)
4.ハーゲン、アルベルト・ペーゼンドルファー(Bs)

5-1.グンター、アントン・ケレミチェフ(Br)
5-2.グートルーネ、安藤赴美子(S)

6.ヴァルトラウテ、ヴァルトラウト・マイヤー(Ms)

7.アルベリヒ、島村武男(Br)

8-1.ヴォークリンデ、増田のり子(S)
8-2.ヴェルグンデ、加納悦子(Ms)
8-3.フロースヒルデ、田村由貴絵(Ms)

合唱、新国立劇場合唱団
飯守泰次郎 指揮 読売日本交響楽団

duration
プロローグ 35
第1幕 12+23+38
第2幕 63
第3幕 76


二日目の公演はこちら
2421- 神々の黄昏、新国立、飯守泰次郎、読響、2017.10.4


前3作の感想はこちら。

1999- ラインの黄金、千秋楽、新国立劇場、2015.10.17

2199- ワルキューレ、三日目、新国立劇場、2016.10.8

2358- ジークフリート、飯守泰次郎、東響、2017.6.7



2幕大詰め20分におよぶハーゲン、ブリュンヒルデ、グンターの悪だくみ三重唱。この最後のところで突然、弦が7小節に渡りフォルテを頭にしてトレモロを奏でる(*)。三人が歌う中、安定調で現れた結末の実行予告。あまりに見事な音楽の表情。ここを聴くたびにワーグナーのインスピレーションのきまり具合に、劇の表情、音楽の表情というのはこういうことをいうのだろうなぁと恍惚感とともに、慄然とするものを感じないわけにはいかない。
6時間劇、台本も音楽も全部が見えていたワーグナーならではの千変万化のつくり込み。すごいもんです。

(*)
dover1982-p411の5小節目から。(Noch etwas bewegterの34小節前から)
H 宝は俺のものにならなければならない。
B&G ジークフリートは血で償え。
H 指環をもぎ取る。
のシーン。
今回の公演では三重唱を舞台で歌ううち3人が前に出てきて一度幕が下り、手前で三重唱のところ。
このあと舞台は、幕が再度上がりカップル×カップルのお手々つなぎシーンとなり、ブリュンヒルデが振り向きハーゲンを指さしストップモーションでフィニッシュ。光が落ち幕が下り、再度幕が開き、聴衆にそのきまりぐあいをもう一度魅せてくれる。
(*)


今日の2幕は殊の外激しいもの。キャスト、指揮者、オーケストラ、至る所で大盛り上がり。二日目に観た時と時間を比べてみました。

プロローグ+第1幕 115 : 108
第2幕  68 : 63
第3幕  80 : 76
全体で16分縮みました。これは激しい。

最初は特に気に留めていませんでしたが、第2幕のあまりの激しさにこれは一体どうなっちゃってんの、という雰囲気が濃厚に。60~70分に5シーンが詰め込まれているのでそもそも動きの多い幕だけれども、前へ前へとのめっていく演奏。オーケストラはブラスセクションはじめ高密度の大咆哮。荒れ狂うめくるめく展開。本当にクラクラしてきた。
二日目の公演では全体が大きく波打つような展開。今日は部分も全体も激烈な演奏で、なにやら怒りすら感じる。

プロローグ。ノルンが去る前に現れたブリュンヒルデは、彼女たちが千切ったもしくは自然にもげた綱を梳く上げ千切る。夜明けドーンの前触れのフレーズの頭に合わせて2度千切る。色々とゲッツも細かいと、あとで思う。

第3幕3場、ハーゲンがグンターを殺り、仰向けになって死んでいるジークフリートの右手から指環をもぎ取ろうとすると、ブリュンヒルデが現れジークフリートの右腕が上にあがってきてハーゲンが躊躇する。ブリュンヒルデが先かジークフリートが先か、どうなんでしょう。少なくとも彼女にはまだ神ぢからが残っていたのだと思わせるシーン。
ワルハラファイヤーしてグラーネとともに火に飛び込む。のではなくて、白い布で自分を包み最後まで残る。音楽が怒涛のように揺蕩う中、最後の瞬間、腕を広げ現れたブリュンヒルデ、この結末、おお、そうだ。プロローグ、ノルンが去る前に現れたブリュンヒルデではあったのだ。
ペトラ・ラング、3幕はヘトヘトで声が泳いでいるようなところが散見されましたけれども、モーションは全幕どこを切り取っても悉くきまる、ワーグナーのサマになる、絵になるラング、プロ中のプロを強く感じさせるもの。
この最後のシーン、いい顔してました。すがすがしいともいえるもので、これがブリュンヒルデの結末だったのか、はたまた、芸術を全うした高みの顔なのか、一種名状し難い感動に襲われた。

ラングの動きの素晴らしさ、そしてみなさんの強烈なワーグナー声、オケの読響もパーフェクトなワーグナーサウンド。

グールドのツボは3幕、ハーゲンに殺られる前の、過去を振りむき夢見るような絶唱。なめし皮のようにしなる。かどがまるでないシームレスでしなやか、黒光りするヘルデンテノール、美しい。
思えば、ラインの黄金のローゲ、ワルキューレのジークムント、ジークフリートのジークフリート、そして今回の、神々の黄昏のジークフリート。指環フル出場、分けてもローゲは大変に印象的でしたね。どれもこれも鮮やか、鮮明な印象がちりばめられた指環でした。
ダイエットが要りますが、あの体躯がパワーの源かと思うと痛し痒しのところもありますね。

ハーゲンのペーゼンドルファー。ちょっと不調と事前アナありましたけれども特にそのようなところはみられず。
まぁ、このキャラのきまり具合は尋常でない。限りなき悪に染まりながらもダースベイダー的、尾根の淵からどちらに転ぶか、そのような影をも感じさせてくれる。見事なもんです。むろん、声あっての称賛。深みともども前に出てくる押し出すようなバス。
舞台での立ち位置が非常にいいですね。主役になるところと影になるところをきっちりと分けている。演出の妙でもあるわけですが自然に陰に溶け込めるキャラ、お見事。

H愛を醸し出す兄妹、グンターとグートルーネ。安藤さんのスキニーで洗練された動き、身のこなし。ビューティフル。ポイントになるところでの歌の締め具合もいい。押し殺したような歌でワーグナービンビンになる局面もあり、変幻自在の優雅さです。
お兄さんのケレミチェフは安藤さんともどもスタイルがいい。役は煮え切らないものですけれども堂々とした声でものすごい存在感。
このお二方、劇中とは言わずなんだかお似合いのカップルのように見えますね。役的には近親相姦、これにハーゲンもおそらくその中にいる。ゲッツの人物描写はまことに見事で、こういったことが中心的なテーマではないと思うが、色々と散りばめられている。

第1幕の3場のヴァルトラウテのヴァルトラウト・マイヤー、姿みえずの第一声は、前回聴いた時は作為的なPA失敗かと思いましたが、これは計算された効果音的なものですね。声をホール奥で響かせ、そのあとすぐに舞台に姿を現す。
自分の役をわきまえた歌唱、派手に目立つものではなくて役のなかで最善の歌唱となる。見事なもんです。
若いときはマイクで拾えないデカい声という印象ありましたけれども、今は違う。

ノルンたちは一つ綱のように一人ずつ連鎖するかのような斉唱。かたや第1幕1場でラインの娼婦として、手、から出てきた乙女たち。あすこでジークフリートから指環を奪っていれば事は起こらなかったという思いがある中、最後は娼婦から、ラインの黄金同様、ピュアな乙女になり、ハーゲンを引きずり下ろす、彼女たちの重唱の美しさと力強さ。
女声3名×3名。コントラスト、お見事。印象的で味わい深いものでした。

もう一回観る予定です。
おわり