河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

PC版に一覧等リンクあり。
OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2303- 神々の黄昏、ヤノフスキ、N響、2017.4.4

2017-04-04 23:26:35 | オペラ

2017年4月4日(火) 3:00-8:25pm 東京文化会館

東京・春・音楽祭 プレゼンツ
ワーグナー 作曲
田尾下哲 映像
神々の黄昏 (演奏会形式) 34+74′、61′、72′

キャスト(in order of voices’ appearance)
1-1.第1のノルン、金子美香(Ms)
1-2.第2のノルン、秋本悠希(Ms)
1-3.第3のノルン、藤谷佳奈枝(S)

2-1.ブリュンヒルデ、クリスティアーネ・リボール(S)
2-2.ジークフリート、アーノルド・ベズイエン(T)

3-1.グンター、マルクス・アイヒェ(Br)
3-2.ハーゲン、アイン・アンガー(Bs)
3-3.グートルーネ、レジーネ・ハングラー(S)

4.ヴァルトラウテ、エリーザベト・クールマン(Ms)

5.アルベリヒ、トマス・コニエチュニー(BsBr)

6-1.ヴォークリンデ、小川里美(S)
6-2.ヴェルグンデ、秋本悠希(Ms)
6-3.フロースヒルデ、金子美香(Ms)

合唱、東京オペラシンガーズ
マレク・ヤノフスキ 指揮 NHK交響楽団

(duration)
序幕+第1幕第1場+2場+3場 34+12+28+34′
第2幕 61′
第3幕第1場+2場+3場 21+23+28′


4/1初日に続き2回目。感想、舞台状況などは4/1公演に書きました。
個々の動きや感想は4/1と概ね同じです。
2301- 神々の黄昏、ヤノフスキ、N響、2017.4.1

今日は2回目。
初日にキャンセルしたメインロール二人のうち、ブリュンヒルデは蘇り、代役ティームから本来のリボールが復活。
初日に比して9分ほどグッと伸びた上演時間、薄まった感はまるでなくてむしろより濃い内容となった。
序幕でのリボール一声、歌がこなれていてかつ正確な歌唱から始まりまずは一安心。このあと2幕の悪だくみ三重唱では見事な絶唱。3幕の自己犠牲ではやっぱりちょっと本調子ではないなという感じでした。
初日のティーム、この日のリボールと結果的には二人のブリュンヒルデを聴くことが出来て良かった。

第1幕3場、小走りで颯爽と登場のクールマンはそれだけでヴァルトラウテの切迫感があり、舞台のシーンが目に浮かぶ。初日にもまして正確な歌、フレージングがきっちりときまる。メッゾで高中低とおしなべて明瞭な歌唱はほれぼれとする美しさ。ヴァルトラウテの存在感大きいですね。
それと、クールマン登場でオーケストラが一段引き締まり、雄弁なうねりとなる。ヤノフスキとN響、それにソリストが一体となった素晴らしく深みのあるシーンが醸しだされた。この3場は秀逸でした。

3場のもう一つのポイント、グンターにはジークフリートがそのまま出てくるというコンサートスタイルならではの混乱があるので、小道具隠れ頭巾があったほうがわかりやすい。1場での忘却ドリンクの小道具も欲しいところ。さらに終幕大詰めジークフリートの背中を刺すアクションも一つ欲しい、と言い出せばキリがない話ではあるが。

2幕、アルベリヒの出番は15分ほど。コニエチュニーは本当にいい声。黒光りする発声、グンターのアイヒェとはまた違ったいい声。ハーゲンとの会話は見事な二重唱でした。
このあと最後のカーテンコールを待たず、ミラノでの公演リハのために東京を足早に去ったとのことで、多忙な絶頂歌手ではあります。

2幕はリング唯一の合唱が聴きどころだが、弱い、ビーンと前に出てくるような力が無くて。

2幕大詰め、悪だくみ三重唱、リボール、アンガー、グンター。白熱の重唱。鬼気迫るブラックホール。カミタソの中心点で空気もゆがむ、圧倒的なシーン。スバラシイ。
4/1のティームも素晴らしかったし、ワーグナーのまとめ力、この作品の凄さ、再実感。

大詰め終幕。
清涼感漂う乙女たちの歌に続き代役ベズイエン、3幕は総じて声が良く通る。調子もあるのだろうがオタマの位置がこの3幕特に、彼の声に適しているのではないか。まるでソプラノのような光り輝く声でキラキラと。
最後の小鳥のセリフを歌う正確なピッチ、本当に小鳥のようだった。きれいな小鳥、悲壮感が漂い始めるシーン、自然とその雰囲気が醸しだされる。名唱でした。
力より技のテノール、技の勝ち。
初日より拍手が少な目でそこは少し残念。

リボールの自己犠牲は少し不安定。2幕まではよく流れていたが、ここでちょっとかすれ声もあったりした。音程が今ひとつ決まらず探しているような歌いっぷりのところがありました。まぁ、初日キャンセルした理由は分かりませんけれども、万全の本調子ではないのでしょう。

オーケストラは雄弁、指揮者の意向をよく汲んでいる。ただ、
バックに大ブラスが構えている中で高弦は総じて弾きが弱い。アンバランスです。ジャストマッチなブレンドではない。振り返ってみれば終始ブラスが咆哮していたという後印象。
コンマスのキュッヒルのような圧力のある猛弾きをしている人は他に誰もいない。彼の音だけが飛んできてよく聴こえる。他は束音。彼のような猛烈な弾きがいいものなのかどうなのか知りませんけれども、例えば昨年2016年メータ、ウィーンフィルによるブルックナーの7番、特に第1楽章コーダでの地鳴り的なトレモロ演奏を思い起こすと、N響でさえまだまだ弾きは足りないと思わざるを得ない。

右手の棒を下に小さく突き刺すようなヤノフスキの指揮はどのフレーズであっても明瞭、細かく振るが疲れを感じさせない一見軽い振り。音の出が遅れない。N響も慣れてきているのだろう。きっちりとザッツして、そのままスーときれいなハーモニーが美しい。
ヤノフスキのワーグナーは大音響をドロドロさせずコントロールし整理する。そこからにじみ出てくるのもまたワーグナーと、教えてくれる。
すばらしい演奏会でした、ありがとうございました。
おわり