河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2241- ジェルジ・リゲティ没後10年、日本現代音楽協会、2016.12.11

2016-12-11 23:59:38 | コンサート

2016年12月11日(日) 5:20-8:20pm 石橋メモリアルホール、上野学園

リゲティ ポエム・サンフォニック 40′(5:20-6:00pm) 聴衆持参メトロノーム
リゲティ コンティヌウム(1968) 4′          cem、新垣隆
鈴木純明 リゲティーヤナⅡ(2016) wp  12′    org、近藤岳+アシスタント2名
リゲティ 管楽五重奏のための10の小品(1968) 15′  fl(pc)-ob-hrn-fg-cl
リゲティ アヴァンチュール(1962)  15′ *1
Int
リゲティ ヴォルミナ(1961-2)  13+3(無音)′        org、近藤岳+アシ2名
松平頼暁 オートル・アヴァンチュール(2016)wp 12′  org、近藤岳+アシ2名
リゲティ ヌーヴェル・アヴァンチュール(1962-5) 10′6′ *1

*1
演出、大岡淳
指揮、杉山洋一  副指揮、橋本晋哉
fl-hrn-vc-cb-perc-cem-pf
歌唱、ソプラノ、アルト、バリトン
パフォーマー、ソプラノの影、アルトの影、バリトンの影
ダンサー、3人
人形遣い、1人
音響、照明、衣装、映像


アヴァンチュール、ヌーヴェル・アヴァンチュールの一挙上演。約15分ずつ30分の上演。
奇抜な面白さでユニーク過ぎ、これがリゲティのしたいオペラだったのかと妙に納得の空気感。
上演状況はとても言葉で書き尽せるようなものではない。映像をとってあると思うので是非それを見れるようにしてほしいものだ。
三つ目のセーラー服女子が三つ目のアヒルを撫でる。こういったことの連続。もう、書くのは無理。

ステージ左半分に楽器群。歌と演技は右半分とオルガンのある奥を使う。聴衆席通路も活用。
登場拍手の抑止。暗くしてから、指揮の杉山さんが登場してポーディアムで振る。細身で上背があるのでこういったあちこち向いて振るのに向いてますね。スーツ姿にさりげない赤のスニーカーと、大ホールで観る彼の姿とはちょい違う。
副指揮者はステージ下、右寄り最前列席あたりに陣取り歌と演技用の指揮ですね。
歌い手3人は原色系の奇抜なコスチューム、まぁ、声も奇抜。ステージ右半分に横に並び歌うのが基本姿勢。
パフォーマー3人がそれぞれの歌手の影としてアクションする。まぁ、目が凍りつくような面白さだ。
それに、奥のオルガンの位置で、ダンサー3人が動く。ダンスをしている雰囲気は無くて、奇抜な衣装でくねくねと歩き回り、オルガンの奥に消える。
高さ3メートルほどの人形遣いは最後、衣装が取れて爆笑となる。これは後半のヌーヴェル・アヴァンチュールのほうだけに出てくる。
天井にはなにやら蜘蛛の巣のような映像が動く。アヒル、歌手によるメガホン声、その他盛りだくさん、トリッキーで脈絡のない事が次から次へとハプニングしまくる。

異様な光景だ。
リゲティのアンタイ・オペラの一つの表現なのだろうか。
脈絡やストーリーとは別世界の事をしているのではなくて、ことごとく反対の事をしていると思えばいいのだろうか。まぁ、観ていてそんなことを考える暇はない。視覚に吸い込ませなければならない。
今日のプログラムノートを読んでいるとリゲティの体験と思考のことを少し理解できる。

リゲティのリアリティーはどこにあったのかという話ですね。

今回の公演、はたと気がつくと、そこらへんにころがっている田舎芝居(失礼)を1パーセントも思い出させない。プロによるパーフェクト上演と思います。これがあればこそ作曲家も浮かばれるというものだ。
まず、インストゥルメントの技がさえている。ビシバシ、シャキッとした響き。研ぎ澄まされた音。アンサンブルの正確性は指揮の杉山さんによるところが大きいと思うし、個々人のスキルハイなプレイヤー自身によるものがまず第一だろうとも思う。それやこれや、もはや明白明瞭。慣れがなれ合いになっていないフレッシュなものを感じました。プロの技ですな。
そして歌い手3人衆。奇抜な原色系の衣装そしてポイントをついた動き、のみにとどまらず、包帯で巻かれても動じない信念で歌い尽くす。
声は色々と技法技巧を尽くしているんでしょうね。ユニークな響きがアンタイ・オペラへの妙な充実感を誘う。正確性に優れた歌唱があって、雄弁な動きがある。完全なプロ技ですね。凄いもんだと思いました。

演奏と歌がこれだけ締まっているから上質のものが出来上がる。そしてパフォーマー、ダンサー、ポイントをついた切れ味のある動き。演奏、歌唱と良くマッチした動きでシンクロしている。
全てハイレベルで、結果、充実の上演。一点にコンセントレートしていく様はお見事でした。
ワンダフルです。

アヴァンチュール、ヌーヴェル・アヴァンチュールのアンサンブルに加わっていた新垣さんが一曲目のコンティヌウムでチェンバロ独奏。
ちょっとテレビとかの印象があったんですが、やっぱり、そのことに至る前の、なんというかストイックというか、本質的なものは演奏にあらわれる。そういうことなんでしょう。
虫の音のような細かい響きが折り重なるようになっていく様は幾何学的ではあるが、トンボの眼のような動きでもある。お見事なプレイでリゲティワールドの一曲目を満喫。

管楽5重奏のための10ピース。
グレイななめし皮のような響きから、明るくて、淡白だったりする、色模様が魅力的。
曲の構成感は明白なものです。
プレイヤーの技がさえているので曲の事がよく理解できる。高性能、緊密なアンサンブルで作品を堪能。

オルガン独奏によるヴォルミナ。強烈な持続音で開始。トーン・クラスター盛りだくさん作品。クラスターによる多数の色あいや質感を表現、確かにそう感じる。スコアはグラフィック・ノーテーションになっているとのこと。オルガン演奏なので、客サイドから楽譜が見える。目を凝らすと太い帯のようなものが横に流れているように見えましたね。
右と左に2人のアシスタント付き。フメクラーとオルガンの補助役といったところですかね。
演奏を終えて送風機をオフにして、音が消えた後30秒間その状態を続ける、一連のことが終わり切って演奏が最終的にフィニッシュ。実際のところは3分間ほど無音の空白が出来ました。長かったです。
リゲティの押し込まれた音の状態変化といったあたりの醍醐味を味わえる作品でした。

リゲティの作品の間に、鈴木純明のリゲティーヤナⅡ、松平頼暁のオートル・アヴァンチュールの初演が挟まれた。
現実の世界に引き戻される具合で、リゲティのリアリティーとの距離の違いというよりも世界観の相違に、都度、催眠術から目が覚める感じ。こういった作品が挟まれたのは意義あることなのかもしれない。

開場時から鳴っていたメトロノームのポエム・サンフォニック。あれはノット東響の壮大な実演を思い出す。
2020- ショスタコーヴィッチ15番、ジョナサン・ノット、東響、2015.11.22
2021- ショスタコーヴィッチ15番、ジョナサン・ノット、東響、2015.11.23


ということで、
リゲティ没後10年記念の公演、いい企画と内容、圧倒的でした。
ありがとうございました。
おわり



曲目、出演者
http://www.jscm.net/?p=4122


リゲティ/コンティヌウム(作曲1968年)
 Ligeti/ Continuum – cemb
チェンバロ、新垣隆

鈴木純明/リゲティーヤナII(作曲2016年/世界初演)
Jummei SUZUKI/ Ligeti-jana II pour orgue – org
オルガン、近藤岳

リゲティ/木管五重奏のための10の小品(作曲1968年)
  Ligeti/ 10pieces woodwindquintette – fl, ob, cl, fg, hrn
フルート、木ノ脇道元
オーボエ、大植桂太郎
クラリネット、勝山大輔
ファゴット、岡本正之
ホルン、猪俣和也

リゲティ/アヴァンチュール(作曲1962-63年)
Ligeti/ Aventures – sop, alto, bar, fl, hrn, perc, cemb, pf, vc, cb
*1

リゲティ/ヴォルミナ(作曲1961-62年)
Ligeti/ Volumina – org
オルガン、近藤岳

松平頼曉/オートル・アヴァンチュール(作曲2016年/世界初演)
  Yori-Aki MATSUDAIRA/ Autres Aventures – org
オルガン、近藤岳

リゲティ/ヌーヴェル・アヴァンチュール(作曲1962-65年)
Ligeti/ Nouvelles Aventures – sop, alto, bar, fl, hrn, perc, cemb, pf, vc, cb
*1
 

*1
演出:大岡淳 指揮:杉山洋一 副指揮者:橋本晋哉

S、松井亜希     A、澤村翔子    Br、青山貴
S影、平井光子 A影、佐藤萌子 Br影、小野良太     パフォーマー
ダンサー、市川まや、今村よしこ、新宅一平
人形遣い、小原美沙

フルート、木ノ脇道元
ホルン、猪俣和也
チェロ、山澤彗
コントラバス、佐藤洋嗣
打楽器、倉田瑞樹
チェンバロ、新垣隆
ピアノ、中川俊郎

音響、有馬純俊
照明、加藤瑞穂
衣装、富永美夏
映像、山田泰士

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2240- 悲愴、ワルトシュタイン、月光、熱情、清水和音ピアノリサイタル、2016.12.11

2016-12-11 23:33:27 | リサイタル

2016年12月11日(日) 2:00-4:00pm コンサートホール、オペラシティ

オール・ベートーヴェン・ピアノソナタ・プログラム

第8番ハ短調 悲愴         8′4′5′
第21番ハ長調 ワルトシュタイン   11′4+9′
Int
第14番嬰ハ短調 月光        5′2+7′
第23番ヘ短調 熱情         11′5+7′
(encore)
ショパン 英雄ポロネーズ       7′

ピアノ、清水和音


ベートーヴェンの有名どころを4曲。
協奏曲ではよくわからなかったところが見えてきます。力強い強烈な押し、そしてさっと切り上げるさっぱりした芸風ですな。
タッチはそうとうに強く激しく音がデカい。不明瞭なところはどこにもないと言っている。
いっぽう、緩徐楽章はさらりと進む。変に深刻ぶらない、沈みこまない。熱情の2楽章なんか進むにつれてどんどん速くなっていく。スピード感ある緩徐楽章といってはなんですが、先に進む力、推進力ある演奏で、力感がみなぎる。
また、ワルトシュタインの緩徐部はその経緯とは別にインスピレーションを強く感じさせるもの。点がつながっていく、きれいに光り輝き謎めいていて魅惑的。続く終楽章の圧倒的な演奏。水面(みなも)に水切りの輪が広がっていく様はこれぞベートーヴェンの美しき音楽かな。

まぁ、やっているほうは4曲とも朝飯前っていう感じ。
アンコールでは、ベートーヴェンとは別の面で主義主張をモロに出してきて、多才さを見せつけてくれた。

この4曲では月光の形式感が他と異なる。ソナタ形式の第1楽章が欠落したものと見ればわかりやすい気もする。清水さんの歩みは、冒頭に緩徐楽章があるという具合の入り、適切なテンポで惹きつける。ブルーな月光でベートーヴェンの形式感とご本人のスタイルがこの曲でも見事に、ぶれない。
悲愴は超有名な緩徐楽章にあまりウエイトを置くことはなく、3楽章のバランスがいいですね。やっぱり、彼の芸風だとこうなるんでしょう。

以上。4曲とアンコール、存分に楽しませてもらいました。
おわり