河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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2066- フランク、ラヴェル、タロー、チャイ5、イェンセン、新日フィル、2016.2.25

2016-02-25 23:08:26 | コンサート

2016年2月25日(木) 7:15pm サントリー

フランク 交響的変容  15′
 ピアノ、アレクサンドル・タロー

ラヴェル ピアノ協奏曲ト長調  8′9′4′
 ピアノ、アレクサンドル・タロー

(encore)
スカルラッティ ピアノ・ソナタ K141 、第1楽章  4′

Int

チャイコフスキー 交響曲第5番ホ短調  14′+13′+6′+11′


エイヴィン・グルベルク・イェンセン 指揮
新日本フィルハーモニー交響楽団


タローさんはお初で聴きます。
前半2曲ピアノを聴けるというのはいいことですね。
フランクの作品はこの作曲家が自分の中に入っていってしまったようなもので、なかなか聴く機会がありません。ラヴェルの前にこうやって聴けるのはラッキーです。
この曲はオーケストラもピアノも線のイメージ。いつになく引き締まったオケの伴奏のもときれいなピアノが響く。細身長身のピアニストで、デリケートで細部強調型のように聴く前は感じましたけれど、そんなこともなくて、スタッカート風に音がスキッと切れ味鋭く、余計な残響を音楽としない。歌いだしが細やかに始まるといったわけでもなくて、続く音の響きと同じ厚さの音が最初から響いてきます。ホロヴィッツをちょっと思い出しました。音がつながっていって一つの線のように感じる。オケも同質な表現を魅せていて、それぞれの線が美しく響きました。
私の席は前のほうですが、以前ほかのピアニストの演奏の時も書いたのですけれど、近過ぎてオケは全部は見えませんが、ピアノの開けたふたの裏にピアニストの動く両手が映ってよく見えるのです。

ラヴェルは何度も聴いていて、でも何度聴いても面白い。飽きませんね。伴奏のオーケストラのトリッキーな面白さがありますし。
デリカシーに富んだピアノとは別。きわどい。すごく微妙なバランスで。一つバランスを崩すと全部壊れてしまう。一本の線の上に乗っているような演奏。壊れそうで壊れない、崩れそうで崩れない、スリルといいますか、ちょっと共感するところがあります。
両端楽章はオケとピアノがそろわないところがあって、これは両者の呼吸が違う、スリルのフィーリング具合がもう、違う、何度やってもそろわない気がした。それはそれとして、アダージョ楽章の淡々とした美しさ、フランクで感じたものがここにもある。フレーズの頭に特に籠めるわけではなくて、そのあとのフレーズと同じ感覚で最初から弾いていく。淡々と。
音の粒がポロリポロリと鳴り、一個ずつ独立していてそれでいて音楽がつながっていく。あまり聴いたことのない響きですね。余計な余韻の抑止。
ベートーヴェンのピアノ‣ソナタをこのような響きで聴いてみたら素敵だろうなという思いが湧いてきました。スキッとした奏法があるのかどうかわかりませんけれども、ペダルの多用とも違うような気もしまして。
ダイナミックレンジを無理やりとらなくても、線の中にひとりでに浮き上がってくるような演奏でした。素敵なピアノでした。
アンコールのスカルラッティ絶品でした。比較的長めな楽章で彼の得意な部分じっくりと聴かせてもらいました。


後半のチャイ5はテンポ揺らし過ぎで強弱つけ過ぎ、いわゆるデュナミークとアゴーギクを、それ自体を目指したような指揮ぶりで、どうなっちゃってんのかな、と思いつつ、でもこれだけユラユラなスタイルを表現したオーケストラも割とすごい。あの棒によくついていきましたね。ギクシャクなところはあまりありませんでしたし。まぁ、過激な棒で、シンフォニーの表現スタイルというよりも、棒一本によるオペラ振り。全4楽章つなげて振ってしまうあたりにもそんな感覚を感じます。面白い演奏でした。
イェンセンは昨年、新国立でトスカを振っていて、そのときはダイナミックレンジはやたらと濃いが、ユラユラ感はあまりなかった気がします。シンフォニーでなぎ倒そうとしたのかもしれない。別になぎ倒さなくてもいいのだが、オペラでできないことをやろうとしたのかもしれない。
おわり

(参考)
2016- トスカ、初日、新国立劇場、2015.11.17