2015年4月18日(土) 6:00pm みなとみらいホール
オール・シベリウス・プログラム
組曲カレリア 4′8′4′
ヴァイオリン協奏曲 16′8′9′
ヴァイオリン、三浦文彰
(enocre)
バッハ 無伴奏パルティータ2番からサラバンド 3′
Int
レンミンカイネン 17′16′9′7′
レンミンカイネンとサーリの乙女たち 17′
トゥネラのレンミンカイネン 16′
トゥオネラの白鳥 9′
レンミンカイネンの帰郷 7′
ピエタリ・インキネン 指揮 日本フィルハーモニー交響楽団
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指揮者自国ものオール・シベリウス・プログラム。大作揃いました。申し分ないプログラムです。
レンミンカイネンの全曲はネーメ・イエルヴィ&エーテボリ響で聴いて以来と思う。イエルヴィで聴いたときの印象は全部つながっている波打つ巨編みたいな印象。今回のインキネンはすっきり4章と言う感じ。随分と印象が異なる。曲順や譜面いろいろあるとのことでしたが、インキネンのとった順序は上記のとおり。ちょっと頭でっかちな順序で、最初の2編で30分越え、ここまででほぼ山を越えるといったところ。
カレワラは若い時に岩波文庫の2分冊一束のものを買って読んだことがあるが内容は完全に忘却。曲は切り取った章のシーンをそれぞれ音にしたもの。クッレルヴォと同じようなスタイル。シベリウスの作品はシンフォニックな形式曲やこのような交響詩のようなものでも、基本的にこれ以上は続かないというところまでギリギリ追い詰めた作品が多いと思う。オペラは書かないというか、オペラサイドからの視点、感情を音楽に詰め込む視点といったあたり得意ではない、スタイルではないといったところか。ぜい肉もたまにはあったほうがいいときもあると思ったりしますけれど、シベリウスのようにそぎ落とした曲はエキスのみ。エキスの50分。標題とストーリーの描写。
インキネンの作り出す絵音はスッキリとしているが終わってみると結構時間がかかっている。オーケストラをかなり引き締めていてハーモニーの美しさやアンサンブルに気を使いながらかなり細かく表情づけしていて、濃い味ではないが味わい深く全てくまなく響かせる。だれることなく表情を一つずつ押し出していく。シベリウスの曲想ですね。まぁ、見事なものです。オーケストラの反応もいいですね。快活さからウエットなものまで表現が多彩でした。
前半のコンチェルトの三浦はピッチに不安定なところがあるもののソリストの自覚があるところが堂々としていて良い。もっと大胆に恐れずに表現の振幅を大きくとっていってもいいと思う。
伴奏のオーケストラは黙るところでのピアニシモが雄弁。シベリウスの伴奏はこうでなくてはいけません。旋律を浮かび上がらせていくスタイルはふとムラヴィンスキーを思い浮べる。
通常ならこれら2曲で満腹になるところ、冒頭にカレリア組曲、劇音楽作品の残った断片ピース、どうしても長い作品は今一つのシベリウス、こうやって残ったものは馴染みのあるもので3曲目の行進曲はアンコールピースでよく取り上げられるしみんな知っている。このようにまとまりとして、わざわざプログラム冒頭に置いてくれるインキネンには称賛あれ。
おわり
2015年4月18日(土) 2:00pm サントリー
小山実稚恵 デビュー30周年記念
ウェーバー オベロン序曲 9′
ショパン ピアノ協奏曲第2番ヘ短調 14′8′9′
ピアノ、小山実稚恵
Int
ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番ニ短調 17′10′14′
ピアノ、小山実稚恵
(enocre)
ドビュッシー 「小組曲」から第1曲、小舟にて 3′
ピアノ連弾、小山実稚恵、大野和士
大野和士 指揮 東京都交響楽団
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小山デビュー30周年の演奏会は色々あるようですがこれもその一環。前半も後半もコンチェルトメインの演奏会で、普段はこのようなスタイルはほぼ無い。
曲のレベルがあまりにも違いすぎて、どうかと言うところがありましたが、そんな聴き方したらだめですね、特にこのような演奏会では。
とは言え、皇后陛下御臨席となった催し、後半のみのご臨席。因果関係があるかどうかはわかりませんが。
ここ半年で聴いたラフマニノフ3番コンチェルトは、及川、辻井、小山。及川は制御からの開放が過ぎるところがありますが迫力ありました。佐渡の伴奏指揮がご本人のメインディッシュのプログラムと同じ振り方で、伴奏指揮のような具合でないのが気になりました。
辻井は指揮のペトレンコそれにリヴァプールのオケと呼吸が同じなのが新鮮な驚きでした。
この日の大野都響は、前半のショパンがいくら伴奏とは言えさっぱりさえない演奏で彼らにこの音楽は合っていないのがよくわかる。後半のラフマニノフは水を得た魚のようになりまるで別オケみたいな生き生きとした伴奏でした。これだけ落差があるオケも珍しい。
小山のピアノは全く技巧を感じさせないもので、滑らかに飛び跳ねる。軽くならず重くならず、ソフトな感じというよりも角度をつけたメリハリのあるもの。重心が下がらないなかなかスペシャルな演奏でした。
最後の爆発前のひとときの祈り、静寂ニュアンスが歌心と言いますか完璧な弾き具合でいたく感動しました。
大野の棒は鬼気迫る感じ、シリアスで透明で、節度あるプレイから後半の開放までお見事でした。
前半後半、曲の密度、構成レベル等かなりレベルの違う曲で、たしかにショパンはショパンでいいところありますが、これは、もう、小山の十八番(おはこ)と言うことで。
小山はショパンもラフマニノフも、スキルに余裕があるというか、もう3回ぐらい弾けそうな気配、辻井の演奏とはずいぶんと違いました。一音ずつ粒立ちよく聴こえてきて、すごいものですね。
大野は終わってすぐに連弾アンコール用の譜面を用意するあたり、気持ちが良かったのでしょう。
おわり