書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

郭煥圭 『台湾の行方 Whither Taiwan?』 から②

2009年05月21日 | 抜き書き
 台湾政府は李登輝から今の陳水扁政権に至るまで意図的に日本における知的支持基盤を求めた。その動きに応じたのが右翼ナショナリストたちである。漫画家の小林よしのりがその最たる例であろう。 (「第四章 日本と台湾問題」 本書102-103頁)

 小林のように日本右翼インテリと結びついた在日台湾独立運動家たちの動きを「連鎖するコロニアリズム」と揶揄する作者も居るが、私見ではそれほど重大な問題ではない。そのような結びつきは今の日本では政治的インパクトは僅少だろう。日本の右翼というよりか、むしろナショナリズムをもてあそぶインテリたちと呼んだ方が良い人たちは、たまたま台湾を例に自分たちの皇国史観を正当化できないかと思っただけである。 (「第四章 日本と台湾問題」 本書103頁。太字は引用者)

 例とはダシの謂なるか。

 利用したのはむしろ台湾側である。〔中略〕彼等の知名度に託して日本でもっと台湾問題が正確に伝えられるのを、そして今の中国一辺倒の政策が是正されることをも願っているのが台湾側のホンネである。 (「第四章 日本と台湾問題」 本書103頁)

(創風社 2005年8月)

郭煥圭 『台湾の行方 Whither Taiwan?』 から①

2009年05月20日 | 抜き書き
 マルクス主義以外に社会科学の訓練を受けていない中国側学者の報告は実に顰蹙を買うものばかりだった。彼等は往々にして国家、党が与えた結論を前提に演繹法で固めるばかりである。例えば、「台湾が中国に戻ることは台湾人民にとっても最大の幸福に相異ない」と主張する。「何故、そして何処にその幸福があるのか。もっと具体的に説明してくれ」と要求すると、「必ずいいんだ。十二億の同胞がそれを保証する」と答える。正に「先に結論ありき」の論説である。政治は、とくに民主政治は決定のプロセスが大事である。トップの誰かがある目標を立てて、それでいいとは民主政治の立場から肯定できない。このような反論に、中国側学者はうろたえるばかりだった。 (第二章第二節2「『台湾之将来香山会議』――台湾人学者と統戦」 本書59-60頁、太字は引用者)

(創風社 2005年8月)

津田左右吉 『支那思想と日本』 から①

2009年05月20日 | 抜き書き
 言議を好み論弁を好むのが支那人の性癖であるが、それは外に向つて自己を主張し他を説伏せんとするところに本色がある。彼等は思索に長ぜず、反省と内観とを好まない。対するものの心理の機微を捉へて我が言に聴従させようとすることに力を尽くしても、思惟を正確にする方法は考へられず、論理の学は微かにその萌芽を見ながら成長せずして早く枯死し、却つて弁者の弁の如く真偽是非を没却する詭弁の術がそこから発達した。弁者といふのは、ものごとの真偽是非に一定の準則はなく、すべては考へやう次第いひやう次第であるとして、一種の警句めいたいひかたでさまざまにそれを論弁したものである。いくらかの形而上学的思索を試みた道家の所説も半ばは詭弁に堕してゐる。言説の多くが他に対するものであり実際的目的を有するものであるから、その思想は概ね断片的であつて、組織と統一とに欠けてゐる。或はまた自己の主張し又は要望するところを恰も現実に存在するものの如く考へ、それを根拠として理説を立てるのが支那の思想家に通有な態度であつて、儒家や道家の説が空疎に流れてゐるのはさういふところに一つの理由があるが、それは実は実行を要求する道徳や政治の教であるからであつて、畢竟、同じところに由来がある。実行を要求するところから、自己の主張を主張することにのみつとめ、それが実行し得られるかどうかを現実の事態そのものについて考へないのである。 (「日本は支那思想を如何にうけ入れたか」 本書24-25頁。原文旧漢字、太字は引用者)

(岩波書店 1938年11月)

J.M.ロバーツ著 金原由紀子訳 『世界の歴史』 6 「近代ヨーロッパ文明の成立」 から

2009年05月20日 | 抜き書き
 ロシアは強大な政治権力によって成立した国家であり、その原動力となったのは「ロシア皇帝(ツァーリ)」という絶対権力者の存在でした。ロシアには国家誕生の前提となるような民族的統一はなく、国境となるような地理的な境界線もほとんど存在しません。正教による結びつきこそありましたが、ほかのスラブ民族も正教を信仰していた点では同じだったのです。
 ロシアでは、ツァーリの個人的な領土と権力を拡大させることが、すなわち国家の建設を意味していました。 (「第三章 『列強諸国』による新しい世界」、本書150-151頁)

 ツァーリ出現以降、ロシアにも“公”はなかったか。

(創元社 2003年6月)

[AC論説]No. 183 「以『幇』治国」 から

2009年05月19日 | 抜き書き
▲Andy Chang「AC通信:No.183」2006/08/30。 (部分)
 〈http://www.melma.com/backnumber_53999_3332735/

 中国人はこれから百年たっても民主国家を作れない。理由は簡単、「唯我独尊、排除異己」だからである。中華思想とは異民族を征服し同化する、同化できなければ滅ぼす。だから中華思想の根底は「野獣の集団攻撃」で反対者を抹殺することにある。国民は専制統治の対象で「臣下」であるから、自由を与える必要がない。
 チベット、新疆、台湾における中国人の制圧と掠奪を見ればわかるように、漢民族は異民族を同化または滅亡させる。世界中に分布した中国人は各地でチャイナタウンを作り、雑草が蔓延るように中華文化を広めていく。中華文化とは漢民族の幇派を作ることだ。

 これができないと中国人は不機嫌になるわけだ。这是为啥“中国不高兴”。

蘇暁康/王魯湘編 辻康吾/橋本南都子訳 『河殤 中華文明の悲壮な衰退と困難な再建』 から

2009年05月19日 | 抜き書き
 中国古代科学技術は近代に至ってはじめて落伍し、西方の近代科学はその成長を早め、たちまち中国を追い抜きました。これは科学技術を社会構造の面からみた場合です。それ以外に文化の方から見ると、中国古代の有機的自然観、「天人合一」思想、直感による演繹的思惟方法、また倫理中心主義、つまりいかなる問題でも価値判断を加える考え方、これらによって中国古代の人々は物事の是非とか倫理を越えることはできず、また客観的な中立性を以て事物の判断の原則とすることは困難でした。こうした文化と科学技術の関係について私たちの研究はまだ十分ではありません。 (劉青峰・中国科学院副研究員〔当時〕。「第三部 きらめき」、本書73頁) 

(弘文堂 1989年3月)

「<カバーストーリー>日本でマッコリが売り切れ(1)」 から

2009年05月19日 | 抜き書き
▲「中央日報 Joins.com」2009.05.19 09:44:15。(部分)
 〈http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=115425&servcode=300§code=300〉

 韓国の酒が外国人を引きつけ始めている。日本では「マッコリバー」が生まれ、モンゴルでは最も売れている輸入ビールが韓国産だ。国税庁の具敦会(ク・ドンフェ)消費税課長は、「焼酎、ビール、マッコリなどが65カ国に輸出されている。酒も今では輸出のドル箱商品だ」と話す。「世界化」にはまだ遠いが、少なくともそのスタートは切ったことになる。

 マッコリはたしかに美味しい。でも、記事を書いているあなたがたが造ったわけではないでしょう? 

 →今年03月30日、「アホバカ間抜け『中央日報』

外務省編 『小村外交史』

2009年05月19日 | 日本史
 信夫淳平『侯爵小村寿太郎伝』(1922年6月脱稿の「甲号本」)を大幅に補訂したもの。もと『日本外交文書』別冊として1953年刊。(以上、巻末の解説今井庄次「『小村外交史』と稿本『侯爵小村寿太郎伝』について」による。)
 乃木希典が殉死した後、頭山満はある人に、「先帝には小村を先供に、乃木を後供にせられて御満足でしょう」と言ったそうな。この挿話を承けて、「小村・乃木という代表的な文武の官僚を先後供とした明治天皇を語る国士頭山満、まさに明治史を結んで相応しい光景である。」という文章で、全編は〆め括られる。

(原書房 1966年5月第1刷 1980年8月第2刷)

「Utah Governor Chosen as Ambassador to China」 から

2009年05月17日 | 抜き書き
▲「The New York Times」May 16, 2009, JEFF ZELENY. (部分)
 〈http://www.nytimes.com/2009/05/17/world/asia/17ambassador.html?_r=1&ref=asia

 Michael Green, who was the top Asia adviser to the younger Mr. Bush, said Mr. Huntsman was well suited for the challenges ahead. “U.S.-China relations can get rough and tumble over the next few years,” Mr. Green said, citing Beijing’s economic and military expansion. “All of that is going to be harder, not easier, so putting someone in who knows China but is seen as firm is a good thing ― particularly someone who can bring along moderate Republicans.”

 This is why him?

阿呆の言うことは支離滅裂で時におもしろい②

2009年05月16日 | 抜き書き
 今年04月06日、「阿呆の言うことは支離滅裂で時におもしろい」から続く。

▲「中央日報 Joins.com」2009.05.16 06:45:12、イム・ミジン記者「明洞、あの日本人観光客たちはどこに行ってしまったのか」 (部分)
 〈http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=115339&servcode=400§code=400

 日本人のおかげで大盛況だった明洞隣近のデパートはすっかり静まり返った。流通業界の期待を集めたゴールデンウイーク(4月26日~5月10日)の実績が予想より悪かった。この期間、ソウル小公洞(ソゴンドン)ロッテ百貨店本店のブランド品の売上は、昨年同期間より45%増えるにとどまった。今年1、2月の売上伸長率(昨年同期対比117%)の半分にも及ばない。

 韓国観光公社チャ・ドンヨン広報チーム長は「危機管理対策班を構成し、韓国訪問者減少状況を把握している。日本の現地メディアと旅行会社、学校を対象に、韓国の防疫対策を積極的にPRしている」と話している。

 さんざんぱら侮辱しておいてどうして来ないと嘆く。