書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

蘇暁康/王魯湘編 辻康吾/橋本南都子訳 『河殤 中華文明の悲壮な衰退と困難な再建』 から

2009年05月19日 | 抜き書き
 中国古代科学技術は近代に至ってはじめて落伍し、西方の近代科学はその成長を早め、たちまち中国を追い抜きました。これは科学技術を社会構造の面からみた場合です。それ以外に文化の方から見ると、中国古代の有機的自然観、「天人合一」思想、直感による演繹的思惟方法、また倫理中心主義、つまりいかなる問題でも価値判断を加える考え方、これらによって中国古代の人々は物事の是非とか倫理を越えることはできず、また客観的な中立性を以て事物の判断の原則とすることは困難でした。こうした文化と科学技術の関係について私たちの研究はまだ十分ではありません。 (劉青峰・中国科学院副研究員〔当時〕。「第三部 きらめき」、本書73頁) 

(弘文堂 1989年3月)