くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「聞き出す力」吉田豪

2014-12-21 19:41:43 | 言語
 息子が、「クリスマスに『空想科学読本』の十巻セットがほしい!」というので、本屋をめぐってみましたが、売ってない……。でも、本屋に来たからには何か買って帰りたい。隣のショップで買い物するつもりなので、駐車場借りるだけではあんまりですよね。
 でも、先週かなり買い込んだので、なかなか気に入ったものが見つからなかったのですが、ふとカートを見たらこの本が!
 吉田豪「聞き出す力」(日本文芸社)。阿川佐和子さんに便乗したそうです(笑)。連載は「漫画ゴラク」。冒頭を立ち読みして、即レジに向かいました。プロインタビュアーとしてかなりの強敵だった潮田玲子さんについての話題です。わたし、オグシオ全盛期にバドミントン部顧問だったので、彼女たちの本も読みました。(地元ニュースで松友さんの取材も見ましたよー)
 しかし、吉田さんはオリンピックにまるで興味がなく、彼女のブログを見ても引っかかるものがなく、好きな音楽とか旦那さんのこともよくわからない。あたふたする感じが伝わってきて、非常におもしろかったのです。
 基本的にはインタビューに行ったときのエピソードと、話を引き出すときに心がけていることで構成されています。
 杜喜朗から古舘伊知郎、さとう珠緒、ターザン山本……様々な人のことが語られますが、印象に残ったのは、前田吟です! 
 家庭環境がよくなかったために養子に出され、その養父母も死別。親戚をたらい回しにされる過酷な人生には驚きました。
 いや、でもそれ以上に、Wikipediaで当時、グループサウンズのヴォーカルを担当していたことがあると書かれていたのが全くの嘘だったこと、これが衝撃です。
 意外と常識が大切、ということもよくわかります。かさにかかって無理を通そうとするターザン山本とか、取材前に下調べを一切しないという吉田照美には批判的でした。
 永江朗さんのインタビュー本を読んでから、吉田豪に興味はあったので、こういうコラムとめぐり合えてよかったなあ、と思っています。
 

「ここはボツコニアン4」宮部みゆき

2014-12-20 19:23:11 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 「ここはボツコニアン4 ほらほらHorrorの村」(集英社)。
 ホラーの村、どうなるのかと思っていましたが、前半すっかり忘れていまして。でも、女の子にでれでれする軍師はちょっと嫌だなあ。
 今度は「カイロウ図書館」を目指して旅をしてきますが、この町ではロボットが中心に労働を担っていて、さらな住民が別の人にすり替わるという事件がおきています。
 この莢ニンゲンたち、一体どんな目的が?
 宮部さんの文章はするするっと読めてしまうのですが、わたしはゲームに一ミリの関心もないので、あんまり熱心ではありません。
 でも、つい続けて読んでしまう。今回は、「四千枚の原稿を書いてしまう」がネタになっていました。
 連載40回記念のおまけが巻末についていましたが、五巻でも終わらない気はします。
 

「宮城の法則」宮城の法則研究委員会編

2014-12-18 21:11:02 | 歴史・地理・伝記
 ローカルルール本、流行ってますよね。コンビニで、「宮城の法則」(リンダパブリッシャーズ)を売っていたので、買ってみました。仙台ものは多かったけど、宮城全体だと題材が少ないですよね。
 狩野英孝の実家「イケメン神社」とか、宮藤官九郎の実家は文房具屋とか、地元ではよく言われることも紹介されています。
 卓球の愛ちゃんが仙台出身とは知られていないと書いてあってびっくりです。愛ちゃんのお母さんの実家が近くなんですよ。(義父とお兄さんは同級生だそうです)
 方言ネタがおもしろかった。「おばんです」(こんばんは)が絶滅危惧方言と書いてあって……。学校では、会合の挨拶、今でもそうなんですけどね。以前、同僚の旦那さん(東京出身)が「俺は『おじんです』と挨拶すべきなのか?」と悩んでいた話を思い出しました。
「ご飯は『分ける』もの」にも、びっくり。えーっ、よその地域は分けないってこと? じゃあ、どうするの?
 ……「よそう」のだそうです。
 「ページワン」の終わりは「ノームサイ」……。これが宮城独特なら、普通はどうやって終了するのでしょうか。
 聞こうにも、わたしの周囲には宮城県民しかいない。
 さらに、お祝いごとには、鯛などのおめでたいモチーフを扱った栗原市の「花かまぼこ」と紹介していたけど、あれってそういうネーミングだったのですね。「さとうかまぼこ」と言っていました。かまぼこ屋の息子も教え子なのに!(佐藤さんという名前のわけではありません、念のため)
 ずっと宮城で生活してきたわたし、外からみると意外なことがたくさんあるんだなーと思いました。
 今度は「栗原あるある」でも作るべきでしょうか?

「明日の子供たち」有川浩

2014-12-13 19:48:48 | 文芸・エンターテイメント
 コンセプトとしては「空飛ぶ広報室」に似ています。児童養護施設の女の子が自分たちのことを本に描いてもらえないかと作家に手紙を書く。
 彼女たちは高校を卒業後自立を強いられる。就職するか進学するか。施設を出たあとに頼りにできる大人が、場所があるのか。
 そんなことを新米職員の三田村の視点を中心に描きます。
 有川浩「明日の子供たち」(幻冬舎)。
 わたしはベテラン職員の猪俣さんが好き。(映像化するなら、ぜひ松重豊さんで!) 久志くんもいいよね!
 あっこちゃんが大学をやめたエピソードには、涙がこぼれました。有川さんのことだから、こういう展開なんだろうと思ってはいたのですが。
 ずっと心に引っかかっていたことのために、奏子の進学にも反対していた猪俣さんが、やっと重いものを下ろすことができたのには安心しました。
 また、久志と奏子が本について語り合うところも、いい。福原さんが本のよさを幼い久志に伝える場面は、非常に共感します。本を読むのは素敵なことと考える大人が、近くにいることは、彼にとってどれほど救いになったのか。そう思うと切ないですね。
 集団読書を提案したとき、ぱらぱらと本をめくっただけで投げ出してしまった子もいました。今は気持ちが揺らいでいるように感じます。違う世界を覗くのもひとつの力なのでしょう。
 和泉さんや三田村くんの若いパワーが、読んでいて心地よかった。
 わたしも多少のことで動じないように頑張ろうと思います。

「プロジェクトX」パンダが日本にやって来た

2014-12-12 20:24:01 | 歴史・地理・伝記
 さて、問題です。「パンダのしっぽは黒い」。○か×か。「パンダは笹だけではなく、果物や肉も食べる」。
 これ、先日小学校のPTA行事で行った○×クイズの問題です。
 パンダ好きのわたし。「プロジェクトX」のジュニア版一巻めに、ジャイアントパンダが日本に来るときのことが描かれていることを知りました。こ、これは中川志郎さんのことじゃないのっ? と、ジュニア版もNHK出版版も借りて、比べて読んでみました。
 来日したパンダの大きさに驚いたり、餌として用意した高級なクマザサを食べないことに慌てたり、カンカンが病気になったり。
 なんといっても、飼育係の本間さんの熱心な働きが胸に響きました。
 ベテランで、「トラの本間」と呼ばれる飼育員さんを担当にするために、パンダをトラ舎に入れることにする計画を伝えたというあたりとか、病気のカンカンに薬を飲ませる場面がとてもよかった。本間さんは何日も泊まり込んで、パンダとのコミュニケーションをとろうとしたそうですよ。
 中川さんのパンダについての本、読み切らないままにしていたものを出してきました。中川さん自身の筆でこのあたりを書いているので、読もうと思ってます。

「プロジェクトX 挑戦者たち」

2014-12-11 20:38:08 | 歴史・地理・伝記
 古い道徳の教科書を読んでいたら、金閣寺再建に賭けた方々の姿を描いた作品に思わず涙が……。おそらく省略してあるものと思われるので、詳しく知りたいと図書館を訪れました。
 「プロジェクトX」のジュニア版(汐文社)を発見し、見出しを読んだところ、十巻に「幻の金堂 ゼロからの挑戦 薬師寺・鬼の名工と若武者たち」とあったので、早速読んでみました。
 そしたら。
 わたしの読みたかったものとは、どうも筋が違う。金箔を貼る作業がさっぱり出てこない。しかも、棟梁は「木のいのち木のこころ」の宮大工西岡常一。四十代でまとめ役が務まるかと悩んでいた、あの作品とは違うような……。
 でも、こちらはこちらでおもしろかった。わたしは薬師寺の月光菩薩が好きなので、非常にしんみりしました。高校時代に訪れたあの建物は、西岡さんや小川さんが手がけたものなのですね! 五センチ高く組んだ隅木のエピソードが印象的でした。
 で、次の日また図書館に行ったところ、NHK出版の「プロジェクトX」を見つけました。
 十七巻に、「金閣再建 黄金天井に挑む」を発見!!
 やっぱり金閣寺でよかったんだよねー、と借りてきました。
 道徳の教科書(ちなみに学研版です。今はもう載っていません)では、責任者の矢口一夫さんにスポットが当たっていますが、こうやってみると住職の村上慈海さんの苦悩がひしひしと伝わってきます。自分の弟子によって放火された金閣寺を再建するために自らも托鉢を行います。この弟子を責める言葉も言わない。なんとか建て直した金閣から、数年後、金箔が剥げ落ちて漆地が見えるようになり、「黒閣」と揶揄されてしまう……。(わたしが修学旅行に行ったのは、この時期かも。拝観停止のさなかでした)
 この原因は、金箔の薄さにあり、紫外線を通さない特注を使用することになります。
 一人金箔を押す職人柳生さんの手際のよさが心を打ちます。
 今度は映像を探してみます!

「くじけないで」柴田トヨ

2014-12-09 20:31:06 | 詩歌
 気持ちが暗くなっていると、文章を書く気力も失われるものなのですね。でも、やっぱりわたしは、書くことでしか浮上しないのだろうから、書き続けたいと思った矢先、この本に出会いました。
 柴田トヨ「くじけないで」(飛鳥新社)。評判になったとき、女性週刊誌で目にしたものです。わたしには合わないだろうと漠然と思っていたのですが……。
 素晴らしかった。帰りに本屋に寄って文庫版を買ったほどです!
 わたしは、一年生の冬に自分の気に入った詩を紹介する時間をとることにしていて、図書館などからも詩の本を借りてきます。今年は明日実施しようと思って、準備していました。
 子どもたちにはベストセラー化した本もいいかなーと柴田さんの本を手にとってぱらぱら見ていました。
「私 辛いことが/あったけれど/生きていてよかった/あなたもくじけずに」
 表題作がじわりと胸に沁みました。
 わたし、かなり言葉に傷つけられていたのですね。
 柴田さんのやさしさに溢れた言葉。どこを読んでも、非常に慰められるような暖かさがありました。
 くじけない。また、明日から頑張ろう。そんな勇気をもらったのです。
 そして、さりげないユーモアが大好きです。


   二時間あれば


  世間には
  まだ解決されていない
  たくさんの事件がある

  コロンボ警部
  古畑任三郎警部
  二人が協力してくれたら
  犯人をきっと
  つかまえてくれる筈

  二時間あれば


 この詩には、心から笑わせていただきました! この文庫が柴田さんの詩のすべてだと思うと寂しい気持ちもありますが、めぐり合えて、よかった。励まされ、おかげさまで、頑張りますね。

「黄金の烏」阿部智里

2014-12-08 19:27:59 | ファンタジー
 三冊めにしてこの衝撃! この世界、パラレルワールドだったのですね!
 「黄金の烏」(文藝春秋)。金烏と呼ばれる存在の真実を明かします。
 奈月彦がかっこよくて、どきどきしました。
 物語はこれまででいちばん過酷な展開でした。垂水のある集落で「猿」によって虐殺された村。生き残ったのは長持の中で眠っていた「小梅」と名乗る娘だけ。
 烏たちを食う猿たちは、山内にどうやって入ってきたのか。奈月彦は烏たちを守ることができるのか。
 地下街に降りて、迷宮をたどる雪哉のシーンや、長束の拘束をごまかす浜木綿が素敵でした。
 物語の舞台に慣れたからか、ひとつひとつの場面が鮮やかでした。
 次は猿たちとの抗争なのでしょうか……。ちょっと怖い気もしますね。

「明日は、いずこの空の下」上橋菜穂子

2014-12-01 21:08:48 | エッセイ・ルポルタージュ
 わたくし、このごろお疲れぎみでございます……。気持ちが入らないと文章を書く気にもならないんだなー、と感じました。
 この本も、すごく素敵な一冊なんですが、朝読書にと選んだらなかなか読み終わりません。集中できない……。
 でも、上橋さんが訪れた外国の様子を書いたパートが、素晴らしくおもしろいんです。特に、「ミスター・ショザキ」。アボリジニと日本人の血を引く彼は本当は「シオザキ」という名字。お父さんは毎日ドラム缶でお風呂をわかし、お正月には角松を作る。
 上橋さんは久しぶりに味噌汁を食べて、だしの味に強烈に反応をしてしまったといいます。
 様々な外国に出かけたことも描かれていますが、同行するお母さんがすごいパワフルで、感動してしまいます。
 トカゲの腹にある卵を食べたり、骨折していても旅を続けたり。
 文化の違いが浮き彫りになるような文章が多いのですが、イタリアで売っていた柿と、イランの明るさについての話題には目を見開くような思いでした。
 こういうお話を、もっと伺いたいですね。ちなみにカバー装画はお父さん(上橋薫さん)の作品ですよ。