くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「巴之丞鹿の子」近藤史恵

2008-12-16 06:07:27 | 時代小説
近藤史恵「巴之丞鹿の子」を読んだ。
なるほどー、こういう展開だったのね。巴之丞のしゃべりかたが、近作に比べて関西色が強いため、始めはちょっと違和感があったけど、全体的にはおもしろく読んだ。トーンが「カナリア」のシリーズに似ているような気もしたなぁ。
ただ、ひとつだけ気になったことがあって、「寒椿ゆれる」で、千蔭の母親は「師走の夜」、「勝手口で足を滑らせて転んだ。(中略)明け方には息を引き取った。」とあり、その前には八十吉の女房おしげが、「奥様が亡くなったのも、こんな夜だったかねえ」と語るのだ。「もう二十年も昔」で、千蔭はまだ元服前だ。
で、「巴之丞鹿の子」にはどう書いてあるかというと、「千次郎の奥方は、八十吉が出入りをはじめた頃に病死した」。出入りを始めたのがいつなのかというと、「十四のとき、ちゃちな盗みをして、まだ同心だったこの千次郎に捕まった。それから千次郎の小者になり、そのまま息子の千蔭にも仕えている。」
八十吉って、わたしが思っているより若いのかな……。おしげと一緒になったのも早い時期なのかも?
でも、明らかにこれは「病死」ではないと思うのですが、どうなのでしょう。
発売が近いこともあって、両方読む人は多いと思う。長らく入手困難での再文庫本化なのだから、こっちをちょっと訂正してもよかったのではないかなと感じた。作品も生き物。書いていりうちに設定が変わってくるのは、ありうることだと思うので、ちょっとしたフォローがあるといいような気もします。まあ、初出通りというのも潔いですけどね。
続編「ほおづき地獄」も来年刊行とか。来年の何月ごろなんでしょうか? 早く手に取りたいわたしです。