くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「僕のお父さんは東電の社員です」その2

2012-03-26 19:34:03 | 産業
 決して少なくない数の子供たちが、悪いのは原発の設置を許した福島県であると書いています。いや、でも、分かっているんですよね? 原発があるのは福島だけではなく、日本中にそれこそ五十基以上あるんですが。同じように計画段階で受け入れた県に対しては? 同じように悪いのか、それとも地震で壊れたのはこの原発だからこその限定なのか。さらに、「東北の人が悪い」と書いている子もいて、相当遠くに住んでいるのか、電力会社の管轄地域で一緒にしてみたのか。
 ただ、東電に非難が集まるのは、原発が壊れたこともありますがそれ以上に、震災での対応がよくなかったからだと思うんですが。そりゃ、もともと原発がなければ事故もないわけだから、そう考えるのも仕方ないかもしれないけど、原因と結果を取り違えてはいけませんよね。
 わたし自身は、原発には長いこと不信感をもってはいました。原発施設で働いていた方が亡くなったお葬式で、息子さんが泣きながらお別れの言葉を読んでいた、あの場面は忘れられません。そのこともあって、社会の先生が後年原発問題の授業をするというので「パエトーン」(山岸凉子・角川書店)を紹介しました。授業後、ある生徒が
やってきて、「わたしのお父さん、女川原発で働いているんです」と言われたと複雑な気持ちを話してくれました。
 東野圭吾も、「天空の蜂」で原発問題は考えるべきことだて書いていたと思いますが、まず考えなくてはならないのです。でも、時がたつうちに、なんだか原発は「クリーン」なイメージをどんどん増していったのですよ。地球温暖化だから二酸化炭素の排出が少ないとか宣伝もしていましたよね。(実際には他の発電と比べてそれほどの違いはないと、森さんは言います) これがプロパガンダなんでしょう。
 わたしたちは、何を選択すればいいのか、それを判断するための情報が原発問題では不足していると思うのです。別に意図的に隠しているわけではなく、まだ分からないことの方が多いから、利益を期待してハイリスクであることから目をそらしてしまう。
 わたしたちが後世に残せるものは、もっと安心できる世界でなければならないはず。三十年前に比べて、便利な世の中にはなりましたが、なんだかいろいろ欠けているような気がするのです。


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