くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「平和のバトンをつないで」池田まき子

2016-09-29 20:45:57 | 歴史・地理・伝記
 二重被爆者。
 広島で原爆を浴びた人が、長崎で再び被爆する。山口彊さんは、出張先の広島から命からがら故郷の長崎に戻ります。3ヶ月にわたる出張と、やけどを負って包帯を巻いた姿に、家族も誰なのか分からない程だったそうです。
 前半には山口さんの若いころのエピソードが書かれていますが、小学生のときに服装のことで絡んでくる上級生を蹴ったとか、弁論大会で将校ににらまれても自分の意志を発表したとか、英語に興味があって勉強したとか、この年代の方がいかにもしゃべりそうな内容だと感じました。
 わたしの祖父も、山口さんと同じ大正五年生まれ。先日、百歳を迎えました。
 子どもの頃、祖父から若いころの話をよく聞かされたので、特にそう感じるのかもしれません。
 山口さんは、普通の人。
 しかし、二重被爆という痛ましい体験が、山口さんをそのままにしてはくれませんでした。
 「平和のバトンをつないで 広島と長崎の二重被爆者山口彊さんからの伝言」(WAVE出版)。

 会社を解雇された山口さんは、英語を生かして通訳の仕事をします。米兵と関わるうちに、彼らと分かり合えるようになります。
 原爆を投下し、二重被爆という苦境にさらされたのに、「アメリカ兵だって、自分と同じ人間」と語ることができるなんて……。
 また、海外では二重被爆者のことが知られていないとして取材が次々にくる場面も、印象的でした。
 キャメロン監督も山口さんの人生を映画にしたいと来日したそうです。
 「核は人間の世界にあってはならないもの」と語られたという山口さん。わたしたちもその思いをつないでいくべきだと感じました。