くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「ハルさん」藤野恵美

2014-01-19 07:06:53 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 「失敗屋ファザー」の次に読んだのは、藤野恵美「ハルさん」(創元文庫)です。
 同じシチュエーションなので、時々ごちゃごちゃになるかも。この本は返却してしまったので、記憶だけで書くけど間違ったらすみません。
 ハルさん、というのは主人公の男性です。四十代の人形作家。ミシンでお人形のドレスを縫ったり、娘にホームズみたいな服を作ってあげたりできます。本来なら西洋的なドールに、日本風なアレンジを加えたり、同じ型で限定のシリーズ作品を作ったり。新聞にインタビューが載るうえ、熱心なコレクターもいます。
 でも、この人が、非常に便りない。
 奥さんを亡くして、男手ひとつで娘を育てなければならないのに、母親たちの会話に混じるのは苦手。実の姉からの電話にも、対応は娘まかせ。さらに、幼稚園児のその娘風里(ふうちゃん)からも「ハルさん」と呼ばれています。
 さすがに中学生になってからは「お父さん」でしたけどね。
 このふうちゃんの成長を思い出していく連作短編です。ふうちゃんは、大学を卒業するやいなや結婚すると言い出し、相手は海外で働いているので、式の当日までハルさんとは会えません。ちょっと不安だけど、ふうちゃんの選んだ人だから、と奥さん(瑠璃子さん)のお墓参りに行きます。
 瑠璃子さんは、ふうちゃんのことでハルさんが悩んでいると、心の中に話しかけてくれるのです。そのおかげで、なくなった卵焼きのことも、はがれたふうちゃんのポスターも、人形を溺愛する婦人のことについても、解決することができました。
 どうしてふうちゃんは、彼を選んだのか。その運命の出会いが微笑ましいですよ。男親にとって、娘は特別なんだな、と思わせられました。ふうちゃんは、かなり行動力のある人です。おじいさんの花壇の花事件、結構考えてしまいました。自分のいるべき場所で、咲く花。そうですよね。
 でも、二冊続けて読むと、「あれ? 瑠璃子さんてクラリネット奏者だっけ?」なんて思うことがちょっとあって、我ながら苦笑してしまいます。