くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「国語ぢから」小林朝夫 その1

2011-06-30 05:23:29 | 社会科学・教育
この本を買った書店、もう今は営業していません。そして、この方も現在の肩書は地震予知研究家なんだそうです。東日本大震災を予知していたんだってさ。
小林朝夫「国語ぢから」(KKベストセラーズ)。ずいぶん前に買ったのですが、なかなか読まないまま月日がたち、処分する前に一回読んでおこうと手にとりました。
ごめんなさい。筆者の否定する「斜め読み」による読み取りなので、誤読しているかもしれません。でも、こういう実用書は拾い読みでいいとわたしは思うんですけどねぇ。
速読について、この方も映画を引き合いに出します。四倍速で見てもおもしろいといえますか? また、美術館で名画の前を素通りしただけで鑑賞といえますか?
まー、そうなんでしょうけど、そのあとに紹介されている「文学をこよなく愛する主婦Kさん」の実話が、なんとなく胡散臭い。
Kさんは売店でアルバイトすることになったのですが、時間に余裕があるので合間に読書をしようと思いたち、本屋に行ったそうです。そうしたら、文庫本の値段がかなり高くなっている。三百円くらいと思っていたのに、倍近くする。で、古本屋で「暗夜行路」と宮本輝の本を買ったそうです。
Kさんは毎日少しずつ読んではぼんやりと空想の世界に入り、一ヶ月で三十頁くらいしかすすみません。夫や友達に冷やかされた彼女は、速読を始めるのですが、内容がさっぱり頭に入らず、結局本を読むのをやめてしまいます。仕事もコンビニに移り、忙しいので読書からは離れていったようだというんですが。
不思議です。「文学をこよなく愛する」根拠が全く見えません。
文庫本の値段の移り変わりを知らない。それは彼女が主婦として多忙だったからなんでしょうが、そんなに長いこと本を手に取らない人をそういうふうに言えるのでしょうか。久しぶりに読み始めた本も読み終わらないままやめてしまったのですよね。一体どのへんがこよなく愛しているの?
想像の世界に没入することをすすめているようですが、読んでいる最中に限らず、読み終わってからいろいろと考えることだってできますよね。むしろ伏線をたどるなら読後の方が構造を見渡すこともできていいと思うんですが。さらに、これを映画にたとえてみたら、上映の途中でいちいち外に出てほっと一息つくような人のように思いませんか。
世界にひたるのは、幸せな読書の一形態ではありますが、それがすべてではない。そして、「こよなく愛する」という語句の用法に差異がある。
国語は語彙を培う学問、意味をきちんと読み取ることで芸術性を高めるといっていた前半部分と、矛盾しているようにも思います。だいたいこの主婦の方はどういった知り合いなのかしら。塾生のお母さん?
こういう話題を語る場面を「想像」してみますと、
「先生、わたし文学が大好きなんですよ」
「でも読むのが遅くて、一ヶ月で30ページしかすすまないの」
という具合に話されて、速読をしないで自分のペースで読むべきですよとアドバイスしたら、
「でも今はコンビニだから忙しくて読む暇がないんですよ」
と言われたのでは。違うかな?