くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「天のシーソー」安東みきえ

2011-06-29 20:07:48 | YA・児童書
教科書閲覧会に行ってきました。センスのいいA社、マニアックなB社、ちょっと幼いのではと思うようなC社等々、各社の品揃えもそれぞれです。そのうち詳しく書きたいところですが、今回は教科書のための書き下ろしがわりと多い感じがしました。
中でも必見は光村の「星の花が降るころに」! 書き下ろしでなければ、即単行本を買いに走るところですっ。
金木犀の木の下で友情を誓った友達とのすれ違い。クラスの男の子を意識し始める時期。長編小説の一場面のようなみずみずしい短篇。これを授業するのは難しいかもしれませんが、心の底にそっとしまっておきたいような素敵な作品です。
著者は安東みきえ。会場が図書館の二階だったので、もちろん探しましたとも。とりあえず「天のシーソー」(理論社)。これ、前任校にあったなあ……。
小学生のミオが、妹のヒナコや周囲の人々と成長していく物語です。一話一話エピソードを丹念に重ねています。
子供たちの間で流行するピンポンダッシュ。ターゲットは燃えるようなシクラメンの花鉢をたくさん並べる「マチンバ」です。
山に住むのがヤマンバならば、町に住むのはマチンバだというネーミングには笑ってしまいました。
奔放なようでいて結構まじめなミオは、知り合いになった男の子たちの面倒をみたり、電話で脅されてクラスの子の連絡先を話してしまい自己嫌悪に陥ったりします。
なんというか、日常生活の中にふっとありそうな話なんですけど、それがとてもきらきらしているんですよ。この年頃の女の子にはたしかにあるきらめき。ガラスみたいな繊細さと切なさが感じられます。
ひとつひとつの物語のあらすじを書くのは意味がない気がします。そのくらい語りで読ませます。
「ひとしずくの海」と「天のシーソー」はとくに好きです。
ちなみにあと二冊借りてきました。ふふふ、楽しみです。