くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「ラブオールプレー」小瀬木麻美

2011-06-02 05:27:31 | YA・児童書
大矢博子さんの解説に力が抜けました。「愛がすべて」って……。
それまでおもしろく読んでいたので、ちょっと残念。装丁から解説からひっくるめて本だと思うのです。
非常に高揚感のある小説でした。「ラブオールプレー」(ポプラ文庫ピュアフル)。作者は小瀬木麻美さん。
当然タイトルはバドミントンの試合コールからきています。バドミントン部での活動をまっすぐに書いた作品で、大矢さんのいうように喧嘩とか陰謀とか、そういうものはなく、仲間たちとの友情を通して物語は軽快にすすみます。
主人公水嶋亮の一人称。
一年先輩でカリスマ的実力をもつ遊佐、彼のダブルスパートナー横川。同期(文中では「タメ」)の榊、松田、太一と陽次(双子のダブルス)、そして参謀の輝。水嶋の姉・里佳や顧問の海老原など多彩な登場人物たちが織り成す部活小説です。
指導者もいないような中学でバドミントンを始めた水嶋は、自分たちで練習方法を研究するなど努力して県大会を勝ち上がります。そんな彼に県下有数の強豪横浜栄から声がかかるのでした。
目標はもちろん全国優勝。しかし、関東には埼玉光という名門高があり、その壁はなかなか厚いのです。
イケメンで頭脳も優秀(特別進学科に在籍)、バドミントンでは負けなしの遊佐というエースを中心に、メンバーたちが力をつけていく様子がおもしろい。
水嶋は相手の技術を吸い上げ、冷静に試合を振り返ることができますが、流れを一瞬で変えるような強烈なショットを打ったことはないタイプ。けれど、仲間たちと過ごすうちにプレーに厚みが出てきます。
みんなバドミントンが大好きで、毎日やっていても飽きることなく自主トレまでしてしまう。いや、合宿とか過酷なことはありますよ。でも、年末年始さえ部活をやりたいと思うような集団なんです。
このメンバーの中で、わたしが気になるのは横川さん。ダブルスにかける意気込みがたまりません。気さくで頼りになる先輩そのものです。読み進むうちに結構遊佐が意地悪だということがわかるので(笑)、彼を支えつつも自分のプレーを振り返られる面が素敵だと思うわけです。
中学ではシングルスとダブルスが明確に分けられてしまうので、結構どちらのタイプなのかはっきりしているんですよね。でも、高校では両方できる。最高のダブルスは、質の高いシングルスの二人を組み合わせたペアだと聞きますが、水嶋と榊はどうでしょう。この二人、シングルスの癖がとれなくてダブルスローテーションがあわないために、ずっとトッパンバックでやっているようです。うーん、上位校ならそれでもいいのかしら。バックの疲労はかなりきついよ。攻撃も付け入りやすいし。
最終的には水嶋はシングルスのエースになっていきます。もちろんダブルスもやるんですが。
こういうスポーツものを読むときのネックは、試合の場面だと思うのです。とくに対戦相手。次々と出てくると名前だけでもまぎらわしい。でも、意外とわかりやすかった。岬省吾なんか冒頭にしか出ないと思っといたら、高校生になって登場したからびっくり。
二複一単(複はダブルスで単はシングルスのこと)など語句説明もあって、実際にはバドのルールを知らないという人でも楽しめると思います。