くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「悪夢の棲む家」小野不由美

2011-06-20 05:53:38 | ミステリ・サスペンス・ホラー
処分する本を整理していたら、発見しました。小野不由美「悪夢の棲む家」(講談社ホワイトハート)上下巻。
三人称。SPRその後ですね。登場人物は共通しているけど、タッチは違います。
いつも一人称の麻衣をみてきたので、依頼者から見てこんなに落ち着いて好感のもてる人だとは意外でした(笑)。
まあ、読みすすめるうちにいつもの面々が揃って、なじみやすくなっていくんですけどね。
OLの翠が母と引越してきたのは、何かしら不吉な感じが残る家。玄関を開けると誰もいないような寂しさを感じ、出ていくように警告を受ける。
すぐにブレーカーが落ち、誰かが窓を叩き、いたずら電話が続く。
母はノイローゼ気味になり、翠自身も不安にかられます。友人の咲紀に相談したところ、二つの提案を受けます。
自分の同僚である広田を、用心棒として泊まらせること。そして、渋谷サイキックリサーチに依頼すること。
広田は武道を一通りこなす熱血漢ですが、心霊的なものを全く信じていません。だから、ナルや麻衣のことを胡散臭い目で見る。詐欺師と罵倒し、事あるごとに食ってかかるのです。
この本は、ゴーストハントの一冊でありながら、発売されなくなって結構時間が経つうえ、まんがにも今回のリライト版にも含まれないという不遇な存在です。
ネタバレしてしまいますが、この家に嫌がらせをしているのは隣の笹森家。敷地の境界をめぐってごたごたしているのです。
なにしろ、この家の近隣は軒下がもう隣の家の壁というくらいぎゅうぎゅうに建てられていて、窓を開けても景色なんて見えません。そのせいか、窓という窓に鏡がはめこまれていて、一階には大きな姿見まであるのです。
麻衣はその姿見の前で、「コソリ」がくると予兆を受けます。
霊的存在を受け入れられない広田は、翠が「鉈を持った血だらけの男」に襲われたときいて、SPRの仕組んだ芝居だろうと考えます。その現場となった浴室を調べるうちに、血糊を見つける。調査してもらおうとハンカチに染み込ませ、なお観察するうちに、決して人が覗けない場所から見ている誰かと目が合うのです。
慌てた広田は風呂の縁から転げ落ち、浴槽の中に血の海に浮かぶ男の首を見るのでした。
叫び声に駆け付けてくれた人がくると、そのような状態はすっかり消え、彼のハンカチにも血のあとは残っていませんでした。しかし、頑なな広田は、それをナルに話すことをためらいます。
この家で何があったのか。安原の調べで、一家惨殺の現場であったことがわかります。たった一人、修学旅行に行っていた娘。死にゆく家族は娘の無事を祈りますが、この娘も殺されてしまう。彼女の思いが、この家には「悪夢」として残っていたのでした。
ずいぶん前に読んだのですが、ナルが鏡の中のジーンと同調する場面の印象がかなり強くて、いつ出てくるかと思っていたらクライマックスシーンでした。
やっぱり小野さんは「家」「母親」「呪い」がキーワードのような気がします。