くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「間違いだらけの少年H」山中恒・山中典子

2010-04-27 05:41:08 | 書評・ブックガイド
妹尾さんの「河童が覗いた」シリーズがすごく好きだったわたし。でも、「少年H」は読んでいません。どうしても食指が動かなかったのです。戦争ものもなるべく読むようにしているのに、冒頭でもう関心をなくす。装丁もいいのに。
多分文体が気に合わないのでしょう。没頭できない。
それからしばらくして、高島俊男さんが「お言葉ですが…」でこの作品について触れているのを読みました。戦時中の世界観が違うというのです。あの戦争のさなかにこんなことを考える少年はいない。この思考は現代のもの。今の視点でさも当時自分の家族だけが先進的なものの考えをしていたように描くのはいかがなものか。
そこで紹介されていたのが、山中恒・山中典子「間違いだらけの少年H」(辺境社)でした。
その後図書館で発見したのですが、ものすごく分厚い。先送りしているうちに随分経ってしまいました。
意を決して借りてみたのですが、二百五十ページ読んでまだ四分の一くらい……。スピンをはさんだ部分がなんとなくあわれです。
でもこれ、おもしろいよ!
山中恒さんが、なぜこの作品を「間違いだらけ」と評するかというと、戦時中の思想のみならず、時系列が間違っている。しかも、その章の中だから接近した事項なのだろうと思うとさにあらず。冬なのに入道雲が出ているわ、まだデビュー(?)していない力士の絵をブロマイドにするわ、とにかく山中さんの目からみるとおかしなことだらけなのですね。
二宮金次郎の像を供出するのは戦争末期のことなのに、時系列でたどるとかなり早いうちに学校から無くなったように書かれている。どこから読んでもいいように書いたということなんですが、非常に曖昧な設定であり、いつのことなのか書かれていない。だから、Hの年齢で判断するしかないのですが、そうすると時代が合わない。とにかくそういうことが続くのだそうです。
うー、残りもすごく読みたいのですが、そろそろ返却しないとまずいようです。また近いうちに借りたいと思います……。