くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「半落ち」横山秀夫

2009-07-29 08:10:23 | ミステリ・サスペンス・ホラー
横山秀夫「半落ち」(講談社)について語りたく思います。「このミス」で一位だったのが03年ですから、読んだのは04年ですね。
たくさんの方から好評だったようなので読んだのですが、期待しすぎたせいかあんまり……。
あらすじ。
アルツハイマーの妻から「殺してほしい」と懇願され、自らの手を汚した警察官・梶が自首してきた。調査するうちに、犯行から二日経っていることがわかります。しかし、その間に何をしていたのか。梶は口を割らず、マスコミに「空白の二日間」と書き立てられます。
梶を取り調べる刑事、検察官、新聞記者、弁護士、裁判官、そして刑務官の目を通して、各部署の駆け引き、正義と真実、迷い、感情がドラマチックに描かれます。
おもしろいのです。でも、なんかみんな、梶に対しての思い入れが強すぎる。「おいおい、またかよ」と感じたのは、わたしの心が狭いのですか。
「深度のある澄んだ瞳が印象的だ」
「両眼は澄み切っていた」
こんな描写がやたらと目につくのです。弁護士なんて俗物として書かれているのに、「梶がこちらを見下ろしているような気がした。深い悲しみを湛えたあの瞳で」ときたよ。当時人気のあったチワワを想像するわたし。「どーする? アイフル」
だって、梶さんいいお歳ですよね。向き合う方々もそれなりに経験を積んで、いいポジションにいるんですよね。そんなに潤んだ瞳が、心にひっかかるの?
結局は最初の視点者だった刑事が、梶の行動を看破するんだけど、なんだか付け合わせのように感じてしまいました。
あれから五年、直木賞事件があって、映画にもなって、いろいろ話題をふりまきましたが、どうなのでしょう。うーん、四五十代の男性の方なら、もっと通じるものがあるのでしょうか。
わたしは「第三の時効」や「陰の季節」は好きなんですよ。
ちなみに、この作品について論じた文章でもっともおもしろいのは、木村晋介「キムラ弁護士、ミステリーにケンカを売る」(筑摩書房)です。オススメ。