予想に反した展開になっている。小池百合子候補が一歩リードしているからだ。今回の東京都知事選を見ていて伊藤昌哉の『実録自民党戦国史』の一文が頭をよぎった▼伊藤は「政治には一種の狂気がある。解決を迫られるいろいろな難問の中で、生きようともがく政治家の精神は異常な高ぶりを示し、そこから通常では考えられないような行動が出るものだ。この時、大根役者が突然、千両役者に変じたり、異常な能力の持ち主が、へんにおびえてポカをしでかしたりする。そこに人間喜劇の展開がある」と書いていた▼政治は人間がやるものであり、そこでの出来事は予想を超える場合が多いからだろう。「それが現代という社会の歴史となってゆくなどと知ったら、人々はそのことにひどく腹を立てるだろうし、戦慄することもあるだろ」との見方は、権力の中枢にあったものの正直な感想なのである▼今のところ元官僚で岩手県知事を務めた増田寛也候補は苦戦している。手堅い行政マンよりも、東京都民は自分たちの手で千両役者をつくりたいのである。時代が政治家をつくり、政治家を育てていくのである。小池候補には政治家としての才能が備わっており、東京都知事に当選すれば、常人にはうかがい知れない力を発揮してくれるはずだ。当然のごとくそこには女性であることも加味される。小池候補の顔が日増しに厳しくなっているのは、自らの使命に気付いたからだろう。大舞台で大見えを切ることができる千両役者は彼女しかいないのである。
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