萩原健一さんが去る26日に都内の病院で亡くなった。萩原さんはザ・テンプターズのボーカルとしてデビュー。「傷だらけの天使」などで個性的な演技をした役者であったが、もっとも衝撃的であったのは、1989年発売の映画「2・26」で、野中四郎を演じたことだ▼野中は昭和11年の2・26事件の首謀者であり、現役の陸軍歩兵大尉であった。急進的な青年将校として知られていたわけではなく、最年長であったために、蹶起趣意書に唯一名前を書いた。2月28日にピストルで自決したのは、責任を痛感したからだろう。妻宛てに遺書を残しているが、そこでは自らの行動を「万死ニ値ス」と書くとともに、「貴女ハ過分無上ノ妻デシタ 然ルニ此ノ仕末御怒リ御尤モデス 何トモ申シ訳アリマセン」と詫びたのだった▼野中は自分よりも若い者たちが立ち上がったのを、見捨てることができなかったのである。野中は歩兵第3連隊第7中隊長であったために、約400名の蹶起部隊を率いて警視庁に陣取った。皇居を占拠する計画があったともいわれるが、最終的には野中は思いとどまったのである。首謀者として死を選択するしかなかった野中の葛藤を、萩原さんは見事に演じ切ったのである。彼がこの世を去ったことで、色々なコメントが出ているが、野中四郎に扮した俳優萩原健一の名演技も忘れるべきではないだろう。
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