ポポロ通信舎

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国家とインターネット

2014年03月06日 | IT関連

【国家とインターネット】和田伸一郎著(講談社選書)


ビットコインはモノ扱いで封じられるか

「ビットコインは通貨でなく“モノ”として扱う。取引売却益は課税対象とする」との政府見解に基づき明日にも閣議決定される。インターネット通貨には網をかけ封じる方向に感じる。新経済連盟の代表理事、三木谷浩史氏(楽天社長)は「拙速に動かない方がいい。日本国内でどこまで規制ができるか実効性に問題がある」としている(TBSラジオ)。

私も三木谷氏のコメントに同感です。インターネットの世界は簡単に国境を超えてしまう。日本が一国で規制を強めても果たしてどこまで効き目があるものだろうか。それよりその規制によって日本企業やユーザーがビジネスチャンスを逃してしまう損失の方が心配になる。

ちょうど今、『国家とインターネット』を読み終えたところです。書名に惹かれて手にしたものですが学術書独特の難解な言い回しが多く途中、幾度となく寝入ってしまった。ただ丁度ビットコインのことが話題になっていたこともあり、国家の通貨とネットの通貨のあり方を考えながら本書を読んでいると参考になるところはあった。


軍事技術が母体のインターネット

インターネットはアメリカの国防総省が構築した軍事技術のネットワーク(ARPAネット)の開発から始まった。ソ連の人工衛星(スプートニクス)打ち上げ成功に衝撃を受けた(スプートニクショック)米国は、ソ連からの核攻撃の脅威に対抗するための防衛システムの研究が国策としてなされた。そのためARPAネットは中央集中管理でなくサーバーを分散することによっても運用が維持される不滅のネットワークとして設計された。それにしても米国はこのような国家的な重要技術をなぜ惜しみもなく広く民生化するに至ったのだろうか。

その答えは「冷戦終結」が周知の認めるところ。しかし旧ソ連・東側の脅威が消えたとはいえ、それだけで軍事技術を世界に開放してしまって国防上問題はなかったのだろうかと常々疑問に感じていた。本書はもう一つの答えを「新自由主義の規制緩和」に求め詳しく言及している。

新自由主義は国家の関与を弱め民営化を強く押し進め「小さい政府」を理想とする。そのため国家負担を軽減するためには軍事技術といえども民生化を進めたとみることができる。(民間の戦争請負会社も一例)。「フリー」「オープン」「共有」の賞賛できるネットの世界ですが一方で著者はインターネットの軍事化といった側面、ネットの両義性についても目を向けている・・。

それにしても固いコチンコチンの記述がオンパレードです。途中で腹を決め、分からないところは立ち止まって用語を調べたりせずに、そのまま飛びきり飛ばして“ロックンロール”のステップで行きました(笑)。すると中盤から次第に著者の言い回しにも慣れ理解が進むようになってきたから不思議でした。

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国家とインターネット (講談社選書メチエ)
和田伸一郎著(中部大准教授)
講談社
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