佐藤栄佐久(前福島県知事)著『知事抹殺』を読み溜息が出た。フゥー。
佐藤栄佐久氏は元首相の故佐藤栄作と名前の発音が同じ。覚えられやすいようで他県のものにとっては佐藤栄作のイメージが邪魔をして、氏名からの印象は薄かったように思う。元々は自民党出身で参議を経て知事になる。原発政策でも容認推進の人であった。この人がなぜ?
読んでいてこの人、佐藤栄佐久の主張、意見はごく真っ当であると思った。実弟の会社がやり玉に挙がった「汚職事件」には関与していないであろうし、この事件自体フレームアップされたもののように思えてならない。
検事が取り調べの中で、なぜプルサーマルに反対なのかと尋ねる場面があるがその答えに氏の考えが要約されている。「プルサーマルに反対ではなく、計画に一番最初に賛成した知事は私。ただMOX燃料のデータ改ざん、福島第一原発の点検トラブル隠ぺいを受けて安全管理上、県も研究会を発足させ(1)県民理解(2)長期計画(3)MOX燃料の安全性(4)被曝防止の4条件を設定したが、国の反応はなかった・・」と。
国家の逆鱗に触れた不当逮捕の背景としては、(1)東電・原発の次からつぎと露呈される不祥事には厳しい態度で臨む(2)大型店規制では経産省とも対立(3)地方分権の大原則から道州制反対、などが推測される。
虚偽自白してしまったのは、自殺2名、県民支持者への迷惑、自分を支えてくれた同志達への道義的責任から、もうこれ以上犠牲者を出したくない気持ちからだった。これは十分に同情に値するものだ。
「佐藤優は『国家と罠』で、国策捜査は・・早く「罪」を認めれば再出発できると注釈がついたが、私(佐藤栄佐久)の場合、支持基盤も、(弟の会社は廃業)すべてすりつぶされた」。
本書『知事抹殺』はすべての福島県の有権者には一度、目を通していただきたい。そして佐藤栄佐久の名誉回復と、できればもう一度、福島県知事に返り咲いていただきたいと願ってやまない。
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知事抹殺 つくられた福島県汚職事件 |
佐藤栄佐久著(前福島県知事) | |
平凡社 |