ポポロ通信舎

(旧・ポポロの広場)姿勢は低く、理想は高く。真理は常に少数から・・

なぜ戦争が起きてしまうのか

2023年05月12日 | 研究・書籍
みにくい悲惨な戦争がつづいています。
戦争はなぜ起こるのか』(佐藤忠男著 ポプラ社)を読んでみました。

2001年発行。著者は昨年、鬼籍にお入りの方ですが本書は今日的にも通用する内容です。少年少女用に書かれ全文にルビが振られていて読みやすい。図書館にはずっと置いていただきみんなに読んでもらいたい本でした。

「戦争は人間の本能か」の章で、コンラード・ローレンツ=動画参照=というオーストリアの動物学者の研究が紹介されている。ダマジカ(鹿)のケンカを例に、角をぶっつけて力比べはするが、相手を殺すことはない。犬でも同じ。同じ動物同士では仲間を殺すことはない。それは動物には「歯止めのシステムの本能」が働いているからだ。確かに負けたほうは、命を落とすまで歯向かうことなく降参する。
異なった動物の間では、弱いほうが獲物となって強者に食われてしまうが、犠牲になるのは一匹だけで種族全体に及ぶことはない。

では人間はどうだろう。人間は道具を使って争いをする。この道具がどんどん凶暴なものに変わっていくと闘争本能に歯止めが効かなくなってしまう。
刀ー銃ー大砲ー爆弾ー毒ガスー細菌兵器ー原子爆弾

人間は「民族VS民族」の争いでは果てしなく皆殺しになるまで止めない。

著者は14歳で海軍少年兵だった。その軍人経験から学んだことは、この地上に貧富の差がある限り戦争のタネは尽きない。自分が楽をして他人を働かせる気持ちが戦争のものなのではないか、と感じられたようです。

ではどうしたら良いのだろう・・・。

ヒントは、人間には恐ろしい本能はあるが、「理性」もある。理性で争いをやめることができるのではないでしょうか。
それには、戦争や平和についてポポロ(人びと)が、しっかり勉強して理性的な「平和学」を育てようということですね。



【木工さんの写真】矢嶋秀一作 フォト 田口大輔

 


ローレンツの動物と人間の心
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