100億円もする先端システム、SPEEDI(スピーディ、緊急時迅速放射能影響予測ネットワーク)の放射能汚染地図が事故直後なぜすみやかに公表されなかったのだろうか。この謎を解明するのは、本来は事故調査・検証委員会の役割だろうが、同委員長の畑村洋太郎氏(原発推進派)にそれを期待するのは無理だろう。畑村氏は検証する前から「個人の責任は一切追及しない」と免罪公言をしているほど最初から腰が引けているからだ。
朝日新聞が追跡報道として連日、「プロメテウスの罠」欄で事故検証を行っている。「研究者の辞表(木村真三氏)」シリーズの中でSPEEDIについても触れている。
尖閣ビデオもSPEEDIも
放射性物質は同心円状に広がらないのは常識。SPEEDIは拡散を最大79時間先まで予測できるすぐれ物。原子力安全・保安院のERC(緊急時対応センター)は、3月11日21時12分にはすでに1回目の放射能汚染地図を受け取っていた。にもかかわらず首相官邸(対策本部)が、同心円避難指示を独自に下したので、保安院ERC側は、その可笑しさを感じながらもSPEEDI地図を示さず、(同心円指示を)追認し従ったというのだ。しかし対策本部の構成は本部長は菅直人首相だが、事務局長は寺坂信昭氏(保安院院長)だったのだ。同じ対策本部にありながら寺坂氏は菅首相にSPEEDIのことを話していない。そのことについて寺坂氏に朝日新聞が取材を申し込んだが応じていないという。
「尖閣ビデオ」といい「SPEEDI」といい、なぜ公開すべき重要な情報を持ちながら隠ぺい、厳封してしまうのか。そして今度も、時とともに責任問題をうやむやにしてしまうのだろうか。
「500ベクレル」設定のいい加減さ
国の高い暫定基準値500ベクレル/キログラムも一体何を根拠にしたのか気になっている。農水省に聞くと決めたのは食品安全委員会(内閣府)だという。当の食品安全委員会に聞くと、厚生労働省だいう。同省に聞くとICRP(国際放射線防委員会)に基づいた原子力安全委員会の数値を援用したとの回答。「援用」という文字がくせ者だ。援用とは「自己の主張の助け」、つまり主体的には何も取り組んでいないということ。(「SPA!」11/1号参照)
しかし、このような国民の健康に関わる大切な数値を、どこもかしこも、しっかり自分のところで確証をもって決めてはいないことがわかる。知れば知るほどなんとも無責任でいい加減な原子力行政だと思う。
SPEEDIの公表されなかった6,500枚の放射能拡散試算図
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