21日(土)夕方、加東市上田の正覚坊保育園では恒例の「じぞうまつり」が行われた。例年は保育園の庭で行われるが、今年は猛暑を避けて第一部の儀式や歌などは、冷房のきいた園舎の中での実施となった。正面にはおじぞうさまのお姿が描かれた絵が掲げられ、園長先生のお話、園児代表による献灯献花献水の儀式からじぞうまつりが始まった。
子どもも保護者も浴衣姿。「日本の風情、文化を伝承するよい体験」との考えから続けられている。まつりには、この春に卒園した小学1年生も出席し、園歌を歌って成長した姿を見せてくれた。おじぞうさまへの感謝の気持ちをこめて歌や踊りを披露した。みんなにこにこ笑顔で一生懸命に歌っていたのが微笑ましく思えた。
情操教育の重要性は言うまでもないが、幼児期にこうした落ち着いた雰囲気の中で、おじぞうさまに感謝の気持ちを献げて歌ったり踊ったりすること、そして、親や家族や地域のみんなの温かいまなざしに見守られているということを実感する機会を持つことが、まさしく情操を豊かにしていくことだと思った。
同じ日の午後は、加西市健康福祉会館(ラヴィかさい)で開催された「北播磨地域子育て応援ネット交流大会」に出席した。兵庫県自治賞、こうのとり賞、くすのき賞の表彰に続いて、講演、講義、事例発表が行われ、子育てをめぐるさまざまな課題や活動について考える機会をもつことができた。
今回は、主催者挨拶の中でも児童虐待の問題が大きく取りあげられ、家族の絆、地域の絆の大切さが強調された。会場の各団体の参加者もそうした言葉に大きく頷いている姿が目についた。甲南大学の森茂起先生は、表に出てくる虐待はもちろんだが、虐待に至らないまでも食事をまともに与えられていないなど、一般家庭の子育ての力、養育力が弱っており、そのために、情緒不安定、落ち着きのない子どもが増加する傾向にあると述べられた。しかし、一方で、確かに家族や地域の絆は大切なのだが、親子の絆の強化といったことが却って負担となるケースもあると指摘され、生育過程の中で不安定な親子関係があったような場合、ちゃんとした子ども時代を未経験のまま親になっているといった場合、絆の強化は負担となってしまうことになる。むしろ負担の軽減すなわち適度な距離をもつこと、社会による子育て、地域の親としての役割といったことに子育ての力点を考えていくことも大事だと述べられた。
小堀徹(兵庫県中央こども家庭センター育成支援課長)氏の講義でも、児童虐待について、自分は愛されない、愛された経験がない、愛せないという循環が世代を超えて虐待につながっていくといった話があった。人を愛すること、周囲におもいやりのやさしい心をもつこと、そうした感情、こころの発達は親を通じて身につけていくものであるというという話もあった。まさに今、あらためて親学び、親学といったことの大切さが叫ばれる所以だ。
その夕方、正覚坊保育園での「じぞうまつり」で子ども、親、家族の笑顔に感じたぬくもり、ありがたさ、よろこび、そして、祈りや言葉、笑顔、歌声のある環境がいかに大切なものかを実感した。