8日(月)、県議会自民党県議団の農政環境部会のメンバーで北播磨地域の老朽ため池、用水、井堰などを調査した。
この調査は、国の農業農村整備事業の大幅な削減によって老朽化したため池や用水路などの整備保全ができなくなるという事態に直面しているなかで、多くのため池、用水路などの農業施設がある北播磨の現場に足を運び、関係者の声を直接聞くことで課題を把握しようという目的で行ったものだ。
北播磨には大小合わせて7千以上ものため池があり、また、水源のダムとため池、田を結ぶ用水路は血管のように延びて、豊かな農業地帯を支えている。これらのため池や用水路は先人によって築かれ、守られてきたもので、現在、未来へと継続的に整備、保全をしていかなければならない。加古川流域土地改良事務所管内(東播磨・北播磨)では年間約30ヶ所の老朽化、警戒ため池の改修を行っている。そうした現場を訪れ、工事の進捗状況、地域の皆さんの声を直接聞いて、今後の政策に反映させようというのが目的だ。
今回調査した現場は、市原新池(西脇市)、昭和池(加東市)、高木井堰(三木市)、増田奥の池・中池(三木市)の4ヶ所。そして、加古川土地改良事務所で管内土地改良施設の状況を調査した。
市原新池の高い堤防の上に立つと、眼下の集落が視界に入る。この堤防に漏水箇所が見つかり、改修工事をしようとするもので、予算がつかなければ、決壊のおそれがあり、住民の安全を守ることができない。調査に立ちあわれた区長さんをはじめ地区の皆さんも改修工事の必要性を強く訴えられた。司会をした地元選出の内藤兵衛県議も地域の切実な願いを実現していくのが政治の役目と強調していた。
昭和池は大正末の大旱魃のあと昭和のはじめに築かれた巨大な灌漑用の池である。土堰堤の大きさに調査団のメンバーも驚きだったが、この昭和池から旧社町、滝野町の農地に水が送られていたが、この堰堤の洪水吐水路が老朽化し、危険な状況になっている。東播土地改良区の職員の方から説明を聞いた。同時に新東条川基幹水利施設の整備事業について、老朽化の著しい箇所の説明、整備事業計画について聞いたが、予算の削減によって整備が大幅に遅れることになるという。水利は農業の命である。耐用年数が過ぎているこれらの施設の整備は一刻の遅延も許されない、とあらためて実感した。
三木の高木井堰の改修工事の現場を視察した。平成16年の台風23号の洪水で危険となった井堰の改修と河床を掘り下げて洪水を防ぐ工事を実施しているが、すでに右岸の工事が終わり、左岸の工事へという状態だ。この井堰の工事を完成させなければ市民の安全を守ることはできないし、農業用水の安定的な供給もできない、との切実な声を聞いた。
加古川流域土地改良事務所での調査を終えて、日が傾く頃、三木市細川町増田地区の奥の池・中の池を視察した。谷の奥にあるこの池の堤体に穴が空き、一部崩落している箇所がある。ブルーシートで覆われているが、ここに至る途中でも波で浸食され細った法面や増田川への洪水吐底部が浸食されていたり、危険箇所が多く見られた。決壊すれば下流の人家・農地に大きな被害をもたらすことが予想される。地区としては何としても改修に着手してもらわなければというやはり切実な声だった。
今回の調査箇所だけでなく、管内には多くの改修を必要とする施設がある。予算の削減により、工期の遅延長期化や放置といった状況が余儀なくされるということになると、安定した農業経営はおろか、災害の発生、環境の破壊につながる。まさに現場では一刻の猶予もならないとの切迫感を実感した。