加東市立鴨川小学校の入学式に出席した。昨日の雨は上がったものの空模様はまだすっきりしない。楽しみにしていた樹齢百年と言われる校庭の桜の老木はどの木もほぼ満開になっているのに、残念ながら日の光がない。
在校生23(24だったかもしれない)人、10人の先生方、そして校区の役員さん方をはじめ、副市長、市会議員、中学校関係者の皆さんなど来賓に迎えられ、式場に入場してきた新入生は一人の男の子だった。鴨川小学校135年の歴史始まって以来初めての「新入生一人」の入学式。担任の先生と一緒に式場の正面ま真ん中の席に座った新入生の男の子。在校生席の後ろの保護者席のご家族も少し不安そうに見つめる。
国歌斉唱、新入生紹介に続いて、校長先生の式辞が始まった。それまでかちかちに固まっていた感じの男の子だったが、一言一言ゆっくりはっきりとしかもやさしく話される校長先生の笑顔に思わずにっこり。「よかった」と思っていると、校長先生は演壇から男の子のところへ近寄って行き、「これから今年最初の全校授業を始めます」と一言。
そして、男の子と在校生が対面する形で向き合い、校長先生が在校生に向かって質問する形式で授業が始まった。「鴨川小学校の自慢を紹介してあげて」「自分が一年生の時のことを話してあげて」などいくつかの質問を投げかけると、在校生は次々と挙手して、「自然がいっぱいあるよ」「わからないことがあったらみんなに聞いて」などとしっかり発表していった。
小さな山の学校のたった一人の新入生を迎える入学式が校長先生の全校授業という企画で素晴らしい入学式になった。新入生の男の子もそして保護者の方もその顔はニコニコ。きっと学校生活への不安は消し飛んだことだろう。
校長先生はじめ先生方にもたった一人の一年生を受け入れることについてはいろいろなプレッシャーもあるにちがいない。しかし、それ以上にこれを契機にさらに鴨川小学校の教育をよくしていこうという意欲と情熱に燃えておられることが今日の入学式で伝わってきた。
式が終わり、玄関を出ると運動場が白く光っていた。見上げると式の間に空も晴れ、まぶしい春の陽が差していた。そして今年も鴨川小学校の桜の古木に満開の桜花が光っていた。
少子化が進み、全国的に学校の統廃合が行われている。加東市内でも小学校へ上がる子が一人もいない地区も少なくないと聞いた。式に出席された地元の区長さんの「小学校は私たちの地域のシンボルだから守っていく」という言葉が重く心に残った。幸い来年は鴨川小学校に10人ぐらい入学してくる予定という。豊かな自然と古い歴史に包まれた環境抜群の鴨川小。この小さな小学校で展開される教育に「ふるさとを愛し地域を守っていく人材の育成」を期待し応援していきたい。