ふうるふうる・たらのあんなことこんなこと

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『アルコール依存症は治らない 《治らない》の意味』

2015-09-12 11:34:53 | 本や言葉の紹介

 ひじの内側をハルトに噛まれてアザになってしまったんだけど、それを見た獣医さんが、「ヤクチュウの注射あとみたいですねえ」と表現したのには大笑い。
 「いやあ、アル中って言われたらあえて否定はしませんが、ヤク中(いけないお薬中毒)って言われたら大否定ですよ」とお返事したわ。
 なんかその流れで、図書館でふと目についたタイトルの本を借りてしまった。それが『アルコール依存症は治らない  《治らない》の意味』(なだいなだ 吉岡隆 中央法規出版)。
 吉岡さんの本は以前何冊か読み、このブログでも2010年12月~1月に紹介したのですが、今回もこの本を読んでよかったなあと思ったので、2か所だけ抜粋します。両方とも吉岡さんの発言です。

●自分がすべきことを人に頼むのは依存だが、自分にできないことを人に頼むことは健康的なことだったのだ。

●共依存証のことを「お世話焼病」とか「あやつり病」などとぼくは読んでいるが、自分の低いセルフエスティーム(本物のプライド)を引き上げるために他人を利用するのがこの病気だ。
 共依存者は「私が助けなければならない」という強い思い込みで邁進してしまうので、「その手助けは本当に必要か?」と立ち止まって考えようとはしない。他人の問題には首を突っ込みたがるが、自分の問題には見向きもしない。頼まれもしないのにそうするのは、人から必要とされることを必要とするからだ。相手の自己解決能力も回復力も信じていないということは、自分の自己解決能力も回復力も信じていないということなのだ。


 で、この本ですが、アルコール依存症に解説や治療の本じゃないのね。
 3章立てで、「第1章 問答風スーパービジョン(なだいなだ×吉岡隆)」、「第2章 依存症から見えてきたこと(吉岡隆)」、「第3章 常識を治療する (なだいなだ)」という構成。
 第1章は、アルコール依存症と長年かかわってきた精神科医のなださんに、ソーシャルワーカーで心の相談室「リカバリー」を開いている吉岡さんがスーパービジョン(個人指導)を頼んだことから始まったやりとりがおさめられています。
 第2章は、自分が性依存症だと認識した吉岡さんがそれにどのようにアプローチしてきたかの体験と、援助職という仕事を通して見えてきたものなどについて語られています。
  第3章は、アルコール依存症のとらえ方や治療方法がどのように変わってきたかなどについてのなださんの体験が、とてもわかりやすく書かれています。


 たぶんこの本が出版された直後だと思うんだけど、吉岡さんはご自分のブログ中のエッセイ「第50話  《治らない》の意味」で、次のように言っています。

 《治らない》病気は世の中に沢山あるが、《治らない》からこそいいこともあるのだ。なぜなら、その病気と真正面から向き合うことになり、そこから学べることが沢山あるからだ。依存症の場合にも同じことが言える。依存症が三日で治ってしまったらつまらない。
《治らない》のも悪くはないのだ。

 うーん、おもしろい!