人生チャレンジ20000km~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

公共交通と原発を中心に社会を幅広く考える。連帯を求めて孤立を恐れず、理想に近づくため毎日をより良く生きる。

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次世代へつなぐ地域の鉄道——国交省検討会提言を批判する(緑風出版)
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原発を止める55の方法(宝島社)

●管理人の寄稿
規制緩和が生んだJR事故(国鉄闘争共闘会議パンフレット「国鉄分割民営化20年の検証」掲載)
ローカル鉄道に国・自治体・住民はどう向き合うべきか(月刊『住民と自治』 2022年8月号掲載)
核のない未来を願って 松井英介遺稿・追悼集(緑風出版)

●安全問題研究会が、JRグループ再国有化をめざし日本鉄道公団法案を決定!

●安全問題研究会政策ビラ・パンフレット
こんなにおかしい!ニッポンの鉄道政策
私たちは根室線をなくしてはならないと考えます
国は今こそ貨物列車迂回対策を!

【安全問題研究会の政策提案】新型コロナウィルス感染拡大後における医療従事者の待遇改善

2022-01-08 21:13:00 | その他社会・時事
安全問題研究会が、新型コロナに関して、昨年2月、医療従事者の待遇改善に関する政策提案を行ったことには、大晦日の「2021年10大ニュース」発表の際に少し触れた。秋以降、コロナ感染が急速に収束に向かっていたことから、どのタイミングでこの内容を発表するか計りかねていたが、年明け以降、再び新型コロナ感染が急拡大してきたことを踏まえ、このタイミングで内容を発表することにする。

すでに1年近く前だが、この提案が厚労省に聞き流されていまだ実現していないことを考えると、発表する価値は今もなお衰えていないと思うからだ。

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2021年2月10日

内閣総理大臣 菅 義偉 殿
厚生労働大臣 田村 憲久 殿

              平和と民主主義をめざす全国交歓会(ZENKO)

  新型コロナウィルス感染拡大後における医療従事者の待遇改善に関する請願書

[請願趣旨]
 新型コロナウィルス感染拡大後、各医療現場は不眠不休の対応を強いられており、その奮闘は1年を超える状況になっています。医療現場にとって、新型コロナとの闘いに収束のめどが立たないことが事態への対処を困難にしています。

 新型コロナウィルスの感染拡大によって、他の病気やけがの治療や診察も困難になっており、医療従事者の疲弊は深まっています。また、感染をおそれ、既往症患者が通院を控える動きも強まっており、新型コロナ病棟を抱える医療機関は、新型コロナウィルス対応に人手を割けば割くほど通院者が減り、医療機関の経営が困難になるとともに、医療従事者の待遇が経営悪化で引き下げられる事態も起きています。これほどの負担を医療従事者に強いる以上、待遇を上げるのが当然なのに、逆に待遇が下がるまま放置されているのは国の新自由主義的医療政策の明らかな誤りであり、直ちに転換されなければなりません。

 このような中、人事院は、2020年11月27日に人事院規則9-129-4(東日本大震災及び東日本大震災以外の特定大規模災害に対処するための人事院規則9-30(特殊勤務手当)の特例)の一部を改正しました。2020年4~5月の緊急事態宣言期間中、空港などの現場で新型コロナウィルスに感染し、または感染している恐れのある海外からの入国者の身体に接触する業務(移送など)に従事した法務省出入国在留管理庁職員、厚労省検疫所職員に対し、特殊勤務手当をさかのぼって支給することを内容とするものです。

 新型コロナ対策に関連し、危険業務に従事する国家公務員に特殊勤務手当の支給が認められたことは大変有意義なことですが、本来であればこうした手当は低待遇と誹謗中傷被害に長期にわたってさらされ続けている在野の医療従事者にこそ支給されるべきものです。

 当会の試算では、全国の保健師、助産師、看護師、准看護師に対してこれと同等の手当を創設しても、必要な金額は年間1.9兆円に過ぎません。菅内閣がコロナ対策として計上している予備費7兆円の中から十分まかなえる額です。政府・厚労省の責任で直ちに医療従事者にコロナ対策手当を支給すべきです。

[請願項目]
1.2020年11月27日付改正人事院規則9-129-4に基づいて、新型コロナ対策に従事する法務省出入国在留管理庁職員、厚労省検疫所職員に支給されているコロナ対策手当と同等の手当を、新型コロナウィルス対策関連業務に従事している全国すべての医療従事者に対して、新型コロナウィルスが収束するまで支給すること。なお、人事院規則に基づく国家公務員への支給額は以下の通りである。

(1)感染者の診察、看護、護送業務(法務省出入国在留管理庁職員) 1人1日あたり4,000円(非感染者の場合、3,000円)

(2)入国拒否地域からの例外的入国者のPCR検査、採取、感染者対応業務(厚生労働省検疫所職員) 1人1日あたり4,000円(非感染者の場合、3,000円)

(3)地方自治体からの要請によるPCR検査業務(農林水産省動物検疫所職員) 緊急事態宣言期間に限り、1人1日あたり1,000円

2.最前線で感染対策を行う医療従事者に対する差別的言動、誹謗中傷を防止し、尊厳と名誉を守ることは政府としての責務である。誹謗中傷防止のための政府広報活動を実施すること。

<参考資料>

※看護従事者数は保健師、助産師、看護師、准看護師の合計。
出典:「平成30年(2018年)末看護職員就業状況」(北海道保健福祉部地域医療推進局)

<参考条文>
人事院規則9-129(東日本大震災及び東日本大震災以外の特定大規模災害等に対処するための人事院規則9-30(特殊勤務手当)の特例)<抄>

  第三章 新型コロナウイルス感染症により生じた事態に対処するための人事院規則九―三〇の特例

(防疫等作業手当の特例)
第七条 職員が次に掲げる作業に従事したときは、防疫等作業手当を支給する。この場合において、規則九―三〇第十二条の規定は適用しない。

一 新型コロナウイルス感染症(病原体がベータコロナウイルス属のコロナウイルス(令和二年一月に、中華人民共和国から世界保健機関に対して、人に伝染する能力を有することが新たに報告されたものに限る。)であるものに限る。以下同じ。)が流行している地域を発航した航空機若しくは航行中に新型コロナウイルス感染症の患者があった船舶のうち人事院が定めるものの内部又はこれに準ずる区域として人事院が定めるものにおける新型コロナウイルス感染症から国民の生命及び健康を保護するために緊急に行われた措置に係る作業であって人事院が定めるもの

二 新型コロナウイルス感染症から国民の生命及び健康を保護するために行われた措置に係る作業(前号に掲げるものを除く。)のうち、新型コロナウイルス感染症の患者若しくはその疑いのある者に接して行う作業又はこれに準ずる作業であって、人事院が定めるもの

2 前項の手当の額は、作業に従事した日一日につき、次の各号に掲げる作業の区分に応じ、当該各号に定める額とする。
一 前項第一号の作業 三千円(新型コロナウイルス感染症の患者若しくはその疑いのある者の身体に接触して又はこれらの者に長時間にわたり接して行う作業その他人事院がこれに準ずると認める作業に従事した場合にあっては、四千円)
二 前項第二号の作業 千円(新型コロナウイルス感染症の患者又はその疑いのある者の身体に接触して行う作業に長時間にわたり従事した場合にあっては、千五百円)

3 同一の日において、第一項各号の作業に従事した場合には、同項第二号の作業に係る手当は支給しない。

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【転載記事】〔週刊 本の発見〕核のない未来を願って 松井英介遺稿・追悼集

2022-01-06 23:11:09 | 書評・本の紹介
(この記事は、当ブログ管理人が「レイバーネット日本」の書評コーナー「週刊 本の発見」に寄稿した内容をそのまま転載したものです。)

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気骨ある反核医師の生き様から核廃絶の重要性を学ぶ~『核のない未来を願って 松井英介遺稿・追悼集』(松井英介遺稿・追悼集編集委員会・編、緑風出版、3,400円+税、2021年11月)評者:黒鉄好

 核兵器と、核のいわゆる『平和利用』としての原発。その双方に反対し精力的な活動を続けてこられた松井英介・岐阜環境医学研究所長が82年の生涯を閉じたのは2020年8月。お連れ合いの和子さんから「故人の追悼集を出したいので、生前にゆかりのあった人に追悼文を寄稿いただきたい」と評者にも依頼があった。英介さんを中心に発足した「株式会社はは」の会報的なものだろうと思ったので気軽に引き受け寄稿した。贈呈を受けてから、立派な装丁を見て驚いたというのが正直なところである。

 「株式会社はは」は、福島で、子どもの歯の生え替わりで抜けた乳歯を保存、残留する放射性ストロンチウムのデータを記録し被曝の実態を解明するための民間プロジェクト組織である。放射性ストロンチウムはカルシウムに似た性質を持ち、歯や骨に蓄積しやすいことからこのプロジェクトが発足した。「はは」は2018年に開設したばかりで、まさにこれからという時期に英介さんは旅立った。

 評者と英介さんとの関わりは米軍によるイラク戦争に遡る。米軍が使用した劣化ウラニウム兵器の危険性を民衆法廷で証言いただいた。天然ウラン鉱石から原爆や原発の燃料となるウラン235を抽出後、残ったウラン238は核分裂を起こさないため燃料にはならないが、放射性物質であるため利用もできず各国は処分に困っていた。だが地上で最も重い物質である点に米軍が着目し砲弾に転用。砲弾が燃える際に飛散したウラン238を吸って多くのイラク市民が被曝した事実は、英介さんとの出会いなくしては知り得なかった。当時は距離感もイメージできないほど遠い国の出来事と思っていた放射能被曝に、その後よもや自分が遭うことになるとは夢にも思っていなかった。

 原発事故後、福島で今後どうすべきか途方に暮れていた私は、郡山市での講演会で英介さんに偶然再会した。「ヒトの肺胞というのは、大人の場合、広げると面積はテニスコート1面分と同じ。福島で生きるということは、その面積いっぱいに放射能を吸うことです」。肺胞の大きさを印象づけようと、両手をいっぱいに広げて話す「英介節」は昔と変わらず健在で、驚きより懐かしさを感じた。それまでの私は、福島原発事故が巨大すぎて現実感覚を持てずにいたが、8年前は写真で見るだけだった遠い異国の放射能被曝者と同じ数奇な運命を、これから自分も生きなければならないのだと厳しい現実を悟った。

 本書には、英介さんとともに直面したその厳しい運命と、それでも格闘しながら生きることを選択した137人もの寄稿者の思いが綴られている。そこには、原子力ムラの地位と利権に溺れた者たちが世迷い言のように繰り返す根拠なき楽観など微塵もない。緊急事態宣言下で強行された東京五輪は、多くの市民に日本の衰退と精神的荒廃を自覚させる契機となったが、本書の137人の寄稿者たちは10年も前から気づいていたのだ。

 原子力ムラ関係者を福島、そして世界から追放しようとする137人の闘いとそれにかける思いに本書を通じて接してほしい。その闘いはまだ緒に就いたばかりであり、10年経った今もなお、終わりが見える気配はない。

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【管理人よりお知らせ】「大阪メトロの大合理化を許すな! 9.12市民シンポジウム」関係資料を掲載しました

2022-01-03 11:17:03 | 鉄道・公共交通/安全問題
管理人よりお知らせです。

少し前ですが、昨年9月12日に大阪市内で開催された「大阪メトロの大合理化を許すな! 9.12市民シンポジウム」の関係資料を安全問題研究会サイトに掲載しました。

大阪市営地下鉄・市バスを民営化した2社では大合理化が計画されており、特に大阪メトロでは駅要員を2割も削減するきわめて危険な内容になっています。こうした危険な大合理化が行われようとしていることをぜひみなさんに知っていただきたいと思います。

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【管理人よりお知らせ】カテゴリーを整理しました

2022-01-03 10:22:26 | 運営方針・お知らせ
管理人よりお知らせです。

当ブログにカテゴリーは現在17あり、ずいぶん前から整理統合を考えていましたが、この新春、思い切って整理しました。

1.「航空問題・空の安全」を「鉄道・公共交通」に統合

このカテゴリーは、JALの相次ぐトラブルや御巣鷹123便事故、航空会社の経営問題などを取り扱うため、2000年代末期に、当時の「鉄道(安全問題・交通政策)」から分離独立して以来、15年近く続けてきた由緒あるカテゴリーですが、航空業界が以前ほど危機的状況でないこと、2010年末に行われたJAL労働者165人の整理解雇問題が膠着状態となったまま、今後しばらく進展が見込めないこと等の事情を考慮して、廃止することにしました。

このカテゴリーで扱っていた記事のうち、整理解雇問題や航空会社の経営問題に関するものは「鉄道・公共交通/交通政策」カテゴリーに、航空機事故や安全問題関係は「鉄道・公共交通/安全問題」カテゴリーに移しました。事実上、「分離独立」前の古巣に戻したことになります。今後はこれらのカテゴリーで扱います。

2.「農業・農政」を「社会・時事」に統合

農業・農政問題は相変わらず当ブログ管理人の関心分野ではありますが、記事数も少ないことから、独立カテゴリーとしての扱いをやめ、今後は「社会・時事」カテゴリーで扱います。過去記事もすべてこちらに移動しています。

3.「インターネット小説」カテゴリーの廃止

親サイトである「罪団法人 汽車旅と温泉を愛する会」サイトにインターネット小説を新規投稿した場合に、その告知にのみ使っていたカテゴリーですが、独立したカテゴリーである必要性に疑問を感じたことに加え、最近はインターネット小説の投稿も長く中断しており、再開時期も未定のため、記事を削除し、カテゴリー自体も廃止することとしました。

この結果、当ブログのカテゴリーは一気に3つ減り、14となります。

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【転載記事】「社会的共通資本」としての鉄道 「廃線」を回避しよう SDGs時代こそ公共交通機関が必要だ!

2022-01-02 00:00:00 | 鉄道・公共交通/交通政策
新年早々、鉄道ライター小林拓矢さんによる心強い論考がインターネットに掲載されています。長文ですが、読み応えのある内容ですのでご紹介します。なお、写真を含む記事全体は、リンク先からご覧いただけます。

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「社会的共通資本」としての鉄道 「廃線」を回避しよう SDGs時代こそ公共交通機関が必要だ!(小林拓矢さんのブログ)

 鉄道がなくなってしまうところには、あるいは路線バスさえもないところには、人は住まなくなるのではないだろうか――毎年のように起こる災害で、閑散路線の廃止が話題となり、そう思うことは多い。

 一昨年はコロナ禍の中でJR北海道の札沼線の末端部分が廃止され、昨年は日高本線の大部分が廃線になった。

 これらの路線以外でも、JR北海道では存続をどうするかが問われている路線がある。その路線の中には、かつては「骨格」と呼べたものも。

 ●危機の路線は全国に

 JR北海道だけではない。一昨年の豪雨で被災したJR九州の肥薩線八代~吉松間は復旧のめどが立たず、むしろそこから分岐していくくま川鉄道のほうが再開に向けた動きを見せ、昨年11月に肥後西村~湯前間で運転が再開した。

 時刻表の路線図の欄外を見ると、各地で被災路線の不通が見られる。路線ネットワークの上で重要だから復旧工事をするところもあれば、BRTへの移行をすでに決めたところもある。いっぽうで、どうするかを何年にもわたり議論しているところも。

 そのような視点だと、昨年はうれしいニュースもあった。2011年7月の新潟・福島豪雨による只見~会津川口間の運休状態が、JR東日本と福島県の上下分離方式が成立したことにより、今年中の運転再開をめざして動いている。2011年には福島県では東日本大震災と福島第一原発事故があり、その影響で常磐線は長期間にわたる一部不通状態が続き、一昨年にようやく復旧した。福島県の鉄道が長く寸断されていたものの、ようやくつながった。

 鉄道の存廃論議が起こるとき、都会の人は経済効率性の観点からバス転換やむなしという考えを持ち、地元の人は存続を強く望む人もいれば、あきらめる人もいる。なお、国鉄末期からJR初期に廃止になった路線には、バス転換後そのバス路線もなくなったところがある。

 だが、鉄道が廃止になったところには、いったい誰が生活し、やってくるのだろうか。バス路線もなくなってしまったら?

 かつては人の営みがあったところも、だんだん人がいなくなり、地域が消えてしまう。

 ●路線網の衰退がもたらすものとは

 もし鉄道路線もバス路線もなくなり、自ら自動車を運転して移動するほかないところが多くなったら――完全に自力救済、自己責任の世界となり、社会的な、公共的なものというのが具体的に存在しない地域がかなり増えてくるということになる。

 昨年秋のダイヤ改正で、JR西日本は大幅な減便を行った。閑散路線では、ただでさえ少ない鉄道の本数がさらに減った。

 この流れは今春のダイヤ改正でも続く。首都圏の本数減が大きく取り上げられるものの、地方の路線もダイヤ見直しが行われる。野岩鉄道や会津鉄道のように、第三セクターでも大きく本数を減少させるところもある。

 鉄道はどの地域でも、地域の中心であり、社会の重要な要素となっている。そういった「社会」は鉄道網が弱くなることにより、衰退してしまうという悲しい未来が見える。

 公共交通は「社会」の重要な構成物であり、大切にしないといけない。鉄道は多くが企業の手により運営されているものの、単純に経済原理だけで考えていいものではない。

 世界的に「ソーシャル」なものが復活する中、日本だけ市場主義的なものが強く、その中で人々は苦しめられている一方、責任は当該に帰せられる。この国の場合、鉄道事業者と地域住民である。

 そのような風潮が強まるこの国で、鉄道はどこをめざしていくべきなのか?

 ●「社会的共通資本」としての鉄道・公共交通

 この「社会」の重要な要素として、人々のインフラとしての鉄道・公共交通を確実に維持・発展させていくためにはどんな考え方が必要なのか。

 宇沢弘文という経済学者は、「社会的共通資本」という概念を提示していた。人々がゆたかな生活を送り、社会を持続的、安定的に維持することを可能にする社会的装置のことだ。

 宇沢は社会的インフラストラクチャーもその一つとして挙げ、交通機関も重要視している。

 その著書『社会的共通資本』(岩波新書)で新古典派経済学を厳しく批判し、それに対して社会的な装置を大切にしようと主張している。『自動車の社会的費用』(岩波新書)で自家用車がいかにコストがかかるかについて書いた流れからこの「社会的共通資本」の概念は生まれた。

 宇沢は地球環境についても触れ、持続可能性や地球温暖化についても触れている。それらに対してもっとも優しいのは、鉄道であることは言うまでもない。

 近年、「SDGs」がさかんに言われている。鉄道会社でも、SDGsへの取り組みはさかんだ。「産業と技術革新の基礎をつくろう」「住み続けられるまちづくりを」「気候変動に具体的な対策を」をといったところが、鉄道、そして公共交通が大きく関与できるところである。このあたりは「社会的共通資本」の価値観と一致する。

 鉄道は本来エコな乗り物でありながら、現実の気候変動に対して厳しい状況にさらされている。だが、地域に人が住み続けられる基盤となり、誰かがやってくるにも便利な鉄道を残し続けることは、「社会」を維持する上で必要なことではないだろうか。

 鉄道、そして公共交通機関を逆境に立たせ、脆弱にしてはならない。

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管理人より新年のご挨拶を申し上げます

2022-01-01 11:23:33 | 日記
元日も昼前になりましたが、安全問題研究会より新年のご挨拶を申し上げます。

2022年は、1872(明治5)年に日本初の鉄道が新橋(現在の汐留付近)~横浜間で開業して150年の節目を迎えます。しかし、近年の災害多発を受け、地方を中心にもともと衰退の一途をたどっていた鉄道は、新型コロナ禍による打撃で満身創痍状態です。節目を喜ぶ状況とはほど遠いのが実態です。

こうしたことを背景に、海外では鉄道の運営形態を見直す動きが広がっています。英国ではサッチャー政権時代に分割・民営化された国鉄が、2000年のハットフィールド脱線事故後、線路の保有・維持管理部分のみを国営ネットワークレイル社に戻す「上下分離・『下』部分の再国有化」が行われました。

2021年の10大ニュース10位で取り上げましたが、今回のコロナ禍を受けて、上下分離の『上』部分、すなわち列車の運行についても国営に戻すとともに、1970年代に「赤字」を理由に廃止した地方鉄道を復活させることを、英国政府は昨年決定しました。

<参考記事>
●「脱炭素」「コロナ対策」で鉄道復権、英国が廃線復活へ(「オルタナ」2021.1.30付け)
●コロナ禍を経て「再国営化」に向かう英鉄道の事情 複雑な「フランチャイズ制度」見直し一元化へ(「東洋経済オンライン」2021.6.19付け)

こうした世界の動きから、ここでも日本だけが大きく取り残されています。さらに驚かされるのは、この大きな政策転換を主導したのが労働党政権ではなく、国鉄民営化を主導してきた保守党政権であるという事実です。日本でも、過去に固執することなく、みずから民営化を決定した自民党政権「だからこそ」再国有化への政策転換を主導してほしいと当研究会は考えます。

岸田政権発足後、森昌文・元国土交通事務次官が首相補佐官を務めています。森氏は、国土交通次官時代の2018年、「文春オンライン」上で次のように語っています(該当記事)。

『(JR北海道問題で)いちばん大事なのは、公共交通って何なのかということだと思うんです。“公共”交通というからには、どこまでいってもプライベートではなくてパブリックなんですよ。でも、現状ではパブリックをどこまで支えていくのか、その視点での議論が充分されているとは言い難い。世界的に見れば、公共交通は国あるいは自治体がサポートして生き残らせていくものというのが当たり前。その点、日本ではどうしても採算が重視されます。海外の政策担当者に、こうした日本の実情を話すとみなさん不思議そうにします。「だってパブリックだろ?」って。』

『道路に税金を使って鉄道には使わない。それはおかしいと思いますよ。そもそも道路と鉄道、どっちを取るのかみたいな議論自体が違うんじゃないか。交通手段としても車と鉄道の二択じゃないでしょう。役割が違うんだから、棲み分けが成り立つはずなんです。』

『実際に上下分離を採用しているケースもちらほら出てきていますし、JR北海道にしても「上」の部分は観光列車に特化するとか、あるいはJR北海道に代わる運営母体が使用することだって考えられます。ただ大きな趨勢ではまだないので、大々的な規模でできるかどうかという議論も必要です。ただ、大前提にあるのは「公共交通とはなんぞや」という議論ですから、いよいよこの問題を国として詰めなければならないのではと考えています。』

鉄道開業150年を迎える今年は、良くも悪くも多くの注目が鉄道界に集まると思います。ここで、長年続いた新自由主義的鉄道政策~「商売としての鉄道」から公共交通としての鉄道~「公共の福祉のために走る鉄道」への再転換ができるかどうかが今後100年の鉄道の行方を決めることになるでしょう。2022年をそのための転換の年にすることが、当研究会の最大の目標となります。

今年もよろしくお願いします。

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