フラッシュを「たく」?!

 世のカメラ好きの今晩のblogは、ソニーから登場したミラーレスかつレンズ交換方式のカメラ(EVIL、つまり電子ビューファインダーを持つレンズ交換方式カメラではないかと書いたが、結局ミラーレスかつレンズ交換方式ではあっても内臓式電子ビューファインダーは搭載していない)の話題で持ちきりのことだと思う。へそ曲がりな郷秋<Gauche>としては、こう云う場合にはあえて世の中の「常」には背を向けて、まったく別の話題にいくのである。これが郷秋<Gauche>スタイルである。って、単なる偏屈だな。

 さて、今日の郷秋<Gauche>的話題はまたまた愛すべき「神奈川新聞」である。今日の生活欄に「コンパクトデジカメ ― 一工夫で写真をすてきに―」と云う半4.5段の、ちょっとした大きさの記事が掲載されていたが、記事を読んでいた郷秋<Gauche>はびっくり驚いた。

屋外で人を撮る場合、「逆光はもちろん、斜め方向の光でも顔に影が出来るので、順光でなければフラッシュを『たく』方がきれいに撮れる」

 そうですか、フラッシュを「たく」んですか。ところで「たく」って?って感じです。例によって広辞苑をひけば「拓」「択」「託」「琢」「濯」「炊く」「焚く」といろんな「たく」があるが、この場合の「たく」は「「火を焚く」の「たく」、つまり「もやす」と云う意味である。

 フラッシュは閃光、ストロボはエレクトリック・フラッシュ装置のことで、正しくはアメリカのストロボリサーチ社の製品の登録商標「Strob」のこと。現在私たちが暗いところで写真を撮るために使っているフラッシュはすべてエレクトリック・フラッシュであり、つまりは一般名詞化した「ストロボ」である。ではなぜ、電気的に閃光を発生させているのに「フラッシュを焚く」のか。

 最初期のフラッシュは実際に火を焚いていたのである。もっとも薪を燃やしたわけではなく、マグネシウムをお盆の上に乗せて燃やしたのである。だから「焚く」。勿論危険なものだからそのうちにブラスチック膜で包んだガラス球の中にマグネシウムの線を封じ込めて、これに電気で火をつけて燃やすようになった。郷秋<Gauche>以上の年配の方は良くご存知のフラッシュ・ライトであるが、いつしかそれも廃れて現在の「ストロボ」が当たり前の世の中となったのだが、何故かラッシュを「たく」と云う言い方だけが残ることになったのである。

 考えてみれば同じような例は結構残っている。筆なんか入っていないのに「筆箱」と云ってみたり、下駄なんか一つも入っていないのに「下駄箱」と云うのは同じ類であるな。

 神奈川新聞の記事に書かれた「フラッシュをたく」は、どうやらキヤノン関係者が発した言葉をそのまま文字にしたことによるようだが、ここは「フラッシュを使う」くらいに書き換えても良かったんじゃないかな。

 ついでに云うなら、タイトルの「写真をすてきに」は「写真を素敵に」と漢字書きした方が一目で意味がわかる。「ピントがぶれる」は意味がわからない。ピントはボケるものであり、ぶれるのは画面。「ズームをかける」も意味不明。望遠側にズーミングするのか広角側にズーミングするのか書かれていないから、初心者はかえって混乱する。
 
 いつもながら郷秋<Gauche>にblogネタを提供してくれる神奈川新聞は実に楽しい。当分神奈川新聞を止められそうにないぞ。しかしだ、毎回これ程に書いても「不当な指摘である。お前の文章の方がはるかに酷いぞ」と反論してこない神奈川新聞は実に懐が深い、良い新聞である。って、三大紙+日経ほどではないにしても神奈川を代表する新聞社が、郷秋<Gauche>ごときが書くことにいちいち反応する訳もないか(^^;。


 房の一番下まで咲きました。横浜あたりでは藤の花も終わりのようです。
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