アブソリュート・エゴ・レビュー

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SPACE BATTLESHIP ヤマト

2011-07-29 20:18:34 | 映画
『SPACE BATTLESHIP ヤマト』 山崎貴監督   ☆☆☆

 レンタルDVDで鑑賞。宇宙戦艦ヤマトの実写版である。すごい企画だ。しかも主演が木村拓哉。最初聞いた時は冗談かと思った。

 私ももちろんTVアニメは観たことある世代だが、別にファンというわけでもなく、最後がどうなったのかも知らない。だから思い入れはまったくない。面白ければそれでいい、というスタンスで観た。で、まず思ったのは、予想してたより映像がチャチくない。日本のCGのショボさについては先入観があったのだが、どうやら進歩したらしい。ハリウッドに及ばないまでも、ハリウッドっぽい雰囲気はまあまあ出ていたと思う。

 木村拓哉は古代進というよりいつものキムタクなのだが、それを言うなら黒木メイサや高島礼子やその他の人々の演技もトレンディドラマ的で、全体に「月9」的雰囲気が充満している。そもそも乗組員に女性が多い。沖田船長のまわりに座っているのも半分ぐらい若い女性で、おまけに男たちも軍人らしくない、線が細い若者ばかりだ。戦艦の司令室というよりドコモのサービスセンターみたいである。確かアニメでは呑んだくれのおっさんだった医者も、メガネ美人の高島礼子になっているし。私は高島礼子は好きだが、この映画での演技はいただけなかった。

 おまけに、軍人さんであるはずのこういう人々が、事態の進展にやたら一喜一憂する。映画的に盛り上げようとしてるのだろうが、役者の演技をオーバーにすることで盛り上げようとしてはいけないんじゃないか。観客は逆に引いてしまう。最近の邦画は現代の日常的な描写はうまくなった印象があるが、こういう荒唐無稽な映画になるとまだまだリアリティを出せないようだ。

 ついでに言うと、戦艦内でも戦闘後でも黒木メイサや高島礼子は常にヘアスタイルばっちりのメイクばっちりで、キューティクルきらきらである。これはこの映画に限ったことじゃないが、たとえばハリウッド映画では、スター女優といえども映画の中では役柄に合わせて薄汚れた格好をするのは普通だ。状況に応じて汗まみれになったり煤で汚れていたり、女でも兵士ならタフな見かけに作ったりする。あくまで役のリアリズムが優先される。ところが、邦画では役柄そっちのけでとにかくきれいにしてしまう。私はこういうところに邦画の幼稚さを感じる。TVドラマならこれでもいいかも知れないが、映画だと安っぽくなる。この映画を海外に出したとして、CGが恥ずかしいとは思わないが、女優のきれい過ぎるメイクが恥ずかしい。

 それから、盛り上げようという意図が大げさであまりに分かりやすいのはどうかと思う。ラストの古代と森雪の別れに一体どれだけ時間をかけているのか。ガミラスの攻撃はどうなったのか。緒方直人はずっとそでに控えて待っていたのか。ああいう場面は物足りないくらいが一番いいのである。作っている側の自己耽溺が見えると一気にさめてしまう。

 あと、スターウォーズのR2D2そっくりの効果音を入れたりするのもやめて欲しかった。エンド・クレジットで流れるスティーヴン・タイラーは『アルマゲドン』そっくりだし。あちこちからパクってきた感じがあって、ああいうのがあるとどうしてもバチモンくさくなってしまう。せっかく「戦艦ヤマトがそのまま宇宙船になった」という日本オリジナルなアイデアがベースなのだから、そのオリジナルな感性を大事にして欲しかった。

 と、悪いことばかり書いてしまったが、全体としてはまあ水準的なエンタメ作品だったと思う。前に書いた通りCGは意外とちゃんとしていたし、これでもかとエピソードが詰め込まれていて、そのサービス精神は買う。


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