アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

人魚の襲撃

2014-11-02 08:02:03 | 創作
          人魚の襲撃

 時は13世紀の半ば、場所はコタンタン半島にほど近い沿岸の港町ローゼンスタール。世界中のあらゆるものが行き交うこの新興の港町で特に盛んなのは亜麻、羊皮紙、香油の交易である。人口は増え続け、道路と下水道は整備され、新しい事業に投資家たちが群がる。手入れされた散歩道と広壮な館の数々からなる区画が蜃気楼のように出現し、広がり、この土地を金持ちたちが午睡の中で夢見る蜜の国に変える。その後に出現するのはレースの薄絹の女たちが男を天国へと誘うお決まりの娼館で、中でも一番大きく豪奢なひとつは誰からともなく「月の館」と呼ばれ、七色のステンドグラスと月光を思わせるおぼろな灯りで蜘蛛の糸の夢想を紡ぎ出す。最後に、町の成熟と栄華を象徴する三つの尖塔をもった大聖堂の建築がようやく終わると、敬愛おくあたわざる枢機卿の一行がローゼンスタールを訪問し、大々的な祭典が催される。季節は輝くような秋、町の栄華はここにきわまった。しかしその一方で、ノルマンディーの海を跋扈する海賊たちの悪行が、徐々にローゼンスタールの繁栄に影を投げかけつつあった。

 貨物船が立て続けに行方不明になった時、ローゼンスタールの市長はこれを憂慮し特に念入りな指示を与えて事件を調査させたが、事態は思わしくなかった。さらに奇怪な噂が広まり、それは船を襲ったのは人間ではなくアマゾネスのように凶暴な半人半魚の女たち、つまりモンスターの如き人魚の集団だったという信じがたい噂で、襲撃の生存者から直接話を聞いたという者によれば、人魚たちは人間には理解できない怪鳥のような金切り声で会話するという。更に、そのような生存者と出会うことができるのは決まって一番うらぶれた場末の酒場であり、彼らの顔は恐怖のせいで老人のように皺だらけ、九死に一生を得た証拠として紙にくるんだ自分の親指を、常に懐に入れているのだという。

 最初はばかばかしいと笑っていた人々の顔にも次第に不安の影が滲むようになったのは、襲撃事件が一向に止む気配を見せないことと、事件に人間離れした点が多いという否定できない事実のせいだった。乗組員は常に皆殺しにされ、襲われた船は消失する。たまたま残骸となった船が発見された時には、そこに跡を留めるすさまじい暴虐ぶり、狂気のような破壊の痕跡が調査官たちの顔色をなからしめる。加えて少数の生存者たちの振る舞いがあまりに不自然であることも、人々の不審を助長した。ちょっとしたものの影に異常に怯える、卑屈に視線を彷徨わせる、口の端から涎の泡を吹く、そして最前まで屈強でたくましい船乗りだった彼らは野ざらしの骸骨そっくりに変貌し、一夜にして老いさらばえた廃人そのままの腐臭を放つ。そして誰かから―――おそらくは官憲から―――理不尽なやり方で口止めをされたとしか思えない、ひどく裏表のある態度を取る。中には精神病院に送られた者もいるらしい。

 こうして恐怖と迷信が町に蔓延し、野放図な活気は徐々に失われていった。教会の権威にすがりつこうとしても無駄で、聖職者たちもまた不安におののいていた。これは劫罰だ、世界の終わりは近い、と語る悲観論者たちで酒場は満ち溢れたが、ここに至ってもローゼンスタールの市長だけは超然としていた。私は神は信じるが人魚などは信じない、まったくの子供騙しだ、ばかばかしいにもほどがあると笑い飛ばした。自ら科学と理性の信奉者であると公言し、彼とその支配下にある警察当局は絶対に人魚の存在を認めなかった。

 こうした態度が、結果的に一部の市民たちの反感を買うこととなった。有識者たちとの会食の場で遠回しな非難の言葉を投げかけられた市長は、ナプキンで口元をぬぐい、うんざりした様子を隠そうともせずに立ち上がり、よく通るバリトンを張り上げてこう宣言した。私が人魚の存在を信じないということは、言うまでもなく、このところ立て続けに起きている襲撃事件を放置することを意味しない。ローゼンスタールの市長として、私はこれらの被害を見過ごすつもりは毛頭ない。事件を解明し、犯人を突き止め、必ずや被害を食い止めることをお約束する。事実、そのために―――と市長は言葉をつないだ―――私はすでにノルマディー地方長官に使者を派遣し、海軍の出動を要請した。一旦海軍が動けば、海賊たちの命運は尽きたも同然である。居合わせた有識者たちは顔を見合わせ、誰からも反論の言葉は出なかった。ところが数日後、市長の使者は芳しからぬ結果を携えて戻ってきた。長官が海軍の出動を拒否したのだ。人間の海賊相手ならまだしも、と長官は言った、人魚退治などというばかばかしい名目で兵を動かすことはできない、私は国中の笑いものになりたくはない。報告を受けた市長は部下の前で毒づいた。体裁ばかり気にする、役人根性の小心者めが! 

 間をおかず、再び被害の報告がもたらされた。王侯貴族のご婦人方さえ心とろかすという貴重な香油と織物を奪われた船主が市長室に靴音高く入ってきた時、その顔は怒りでどす黒く変色していた。即刻あの忌々しい人魚どもを何とかしてもらいたい、でなければ我々はこの町から出て行って二度と戻らないだろう。市長は氷のごとく冷ややかに言った、あんたみたいな人までがそんなことを、そのばかばかしい迷信こそが問題をややこしくしているのが分からんのかね。船主は言った、人間だろうが人魚だろうが、こっちにしてみれば同じことなんだよ。

 ところで迷信的恐怖で麻痺状態に陥ったローゼンスタールにも、まだ気骨がある猛者たちが残っていた。人魚云々を冗談扱いして頭から笑い飛ばし、歯牙にもかけなかった叩き上げの船乗り達が、ここへきてようやく事態の深刻さに気づき、メンツを潰された腹立たしさで煮えくり返る思いを味わっていた。おい、聞いたか、半島じゃ、ローゼンスタールの船乗りは子供の絵本に出てくる人魚を怖がって家に閉じこもってるってもっぱらの評判だぜ。ふざけた話だ、思い知らせてやる。こうして、まじめに仕事するより酔っ払っていることの方が多い連中が腰を上げた。とりあえず場末の酒場で罵声を吐きながら怪気炎を上げているうちに、似たような乱暴者たちがあちこちから集まってきて、たちまち義勇軍が出来上がった。顔ぶれの大部分はむしろ自分たちが海賊をやりそうな凶悪な面構えで、町の人々に煙たがられている厄介者ばかりだったが、こうなるとこの義勇軍がローゼンスタール最後の希望となった。不安で息がつまりそうだった人々の気分は舞い上がり、一転して熱に浮かされたような騒ぎになった。実業家たちは競うように資金援助を申し出た。地方長官や市長に頼っていてもどうにもならない、自分たちの町は自分たちの手の守るしかないんだ、そういってますます人と金が集まった。やがて武装した船が準備され、荒くれ者たちの集団は急ごしらえの軍隊へと変貌を遂げた。

 市長はその様子を執務室の窓から冷ややかに見下ろしていた。その口元はいつも固く結ばれていたが、ついに義勇軍の船が出航するというその日には、冷笑とも憫笑ともつかない笑みを浮かべた。町長は事務官に声をかけた、あの連中が本当に出航するとは思わなかった。調子を合わせて事務官が答えた、連中は、寄付された金を酒代に変えることで忙しかったようですからね。一方、桟橋では船乗りと女たちの別れの光景が繰り広げられていたが、女たちはほぼ全員が「月の館」の娼婦で、色とりどりの異国風の衣装を身につけ、白昼の光の中にさまよい出た毒蛾のたたずまいを見せていた。船乗り達は人によっては放埓に、人によっては優しく、つまり長年の習慣で身についたそれぞれの流儀で女達に別れを告げた。「待ってろよ、人魚の燻製をみやげに持って帰るからな」

 思い思いにハンカチやスカーフがうち振られる中、船はゆっくりと桟橋を離れて行った。その場にいた誰にとっても感動的な光景だったが、数日もたつと、あの連中が海賊と相討ちになってくれれば一番いいんだが、などと臆面もなく言い出す輩が出てきた。だってそうじゃないか、あの乱暴者たちが一掃されてしまえば、ローゼンスタールがどれだけ住みやすく平和な町になるか、考えてもみろ。とはいえ、そんなことを言いながらも、あの連中が本当に一掃されてしまうとは誰も思っていなかった。海賊といえども、破壊と殺戮にかけて連中の上をいくとは思えなかったからである。

 ところが一週間たち、二週間たち、一ヶ月たっても、船は帰って来なかった。すれ違う船に託すことによって届けられるはずの手紙も途絶えたままだった。その間、ローゼンスタールは奇妙な静けさと緊迫感に支配されていた。通りすがりの人間には穏やかで平和な町に見えたとしても、実は誰もが息を潜めるようにして暮らしていた。その本当の理由を知っていたのは市長ただ一人だったが、予期せぬ凶事の前触れを曖昧に感じ取っていた人々の数は、決して少なくなかった。

 三ヶ月たった月の最後の安息日に、その地方一帯を激しい暴風雨が襲った。街路に植えたばかりの若木がなぎ倒され、がけ崩れが起き、予想もしていなかった川の氾濫でいくつかの村が水没した。ローゼンスタールでも建物や道路に被害が出たため、役人と修理工たちは雨合羽を着て豪雨の中を走り回った。それ以外の人々は教会で祈りを捧げた。主の御許の薄闇の中にうずまっている人々の耳には、屋根とステンドグラスを激しく打ちつける雨音と、巨獣の遠吠えにも似た風のうなりだけが聞こえた。女たちが不安な視線を交わし合い、今にも不吉な、やりきれない、とりわけ血なまぐさい事件が起こりそうだと考えていた時、教会の扉が荒々しく開かれ、豪雨を背にした男たちの影が浮かび上がった。突風に揺らめく蝋燭の光ごしにそれを見た女たちが直感的にさとった通り、その男たちは恐ろしいニュースを携えてやってきたのだった。

 人々は黙りこくって、雨に濡れながら坂道を下っていった。嵐のせいで入り江に船の残骸が流れついていたが、豪雨に打たれ、惨めなまでに満身創痍となったその船は冥界から現れた幽霊船もかくやと思わせた。マストは根元からへし折れ、甲板には穴が開き、そこらじゅうにどす黒い染みがちらばっていた。染みは人間の血であり、クラゲの死骸と見えたものは腐肉の塊だった。そしてその中に、光を反射する無数の小さな鱗がまじっていた。魚の鱗にしてはいささか大き過ぎるそれらの鱗は、船全体にびっしり付着し、叩きつけるような豪雨と波しぶきの中でも洗い流されることがなかった。あまりの不気味さに、人々は船を遠巻きにして立ちすくんだまま近づくことさえできなかったが、わざわざ調べるまでもなく、それが激しい戦闘をくぐりぬけた義勇軍船のなれの果てであることは明らかだった。

 夜明け前に雨が止み、しばらくして風も止まった。午前8時、役所の執務室に入ってきた市長はすでに昨夜の発見について知っていたが、机の上に置かれた報告書をもう一度読み返した。事務官を呼び出し、ただちに義勇軍の葬儀を教会で執り行うように、そして葬儀には町の人々全員を招くようにと指示した。「死んだ連中全員を英雄として扱うんだ」と彼は言った。「あの連中の名前を、この町の歴史に残してやろうじゃないか」命令はただちに実行に移された。町を上げての盛大な葬儀が行われ、裕福な実業家たちも、商人たちも、弁護士も、ふだんはめったなことでは屋敷の中から出ることがない召使頭や執事たちも、そして「月の館」の女たちも、死んだ男たちを弔うためにやってきた。誰もが言葉少なく、厳粛な顔をして俯いていたが、本当に悲しみの涙を流し、死者の魂よ安らかなれと祈りを捧げているのは娼婦たちだけだった。あの男たちとベッドの中で愛の絆を確かめ合ったことがあるのは、彼女たちだけだったからだ。

「かの男たちは恐るべき海の怪物たちを相手に、一人残らず勇敢に戦ったに相違ありません。それはあの船を見れば一目瞭然であります」と司祭は伸びやかな声で歌うように聴衆に語りかけた。「そして全員が海の藻屑と散ったのです。感謝を捧げましょう、そして、心からの鎮魂の祈りを捧げましょう」
 教会を出たあと、人々は長い行列を作って目抜き通りを歩いていった。トランペットと太鼓をもった音楽隊が両脇を固め、黄色と紺の制服で着飾った警官隊が先頭を進んだ。不自然なほど静かなことと音楽隊が葬送曲を奏でていることを除けば、葬列というよりむしろ祝典のようだった。明るい鐘の音が町全体に鳴り響き、空を見上げる人々の顔には安堵の色があった。ハンカチを握りしめて涙を流している「月の館」の女たちは、場違いな悲しみとともに、忘れ去られたように葬列の一番最後を歩いていた。

 その日以来、船を襲う人魚の海賊団も現れなくなったが、その理由をはっきりと説明できる者はひとりもいなかった。義勇軍と相討ちになって全滅したという者もいれば、全滅はしなかったが消耗し、故郷である南氷洋の凍てつく海へと帰っていったに違いないという者もいた。また必ず戻ってくるに違いないと主張する悲観論者も中にはいたけれども、大部分の人々はもう事件を終わったものと見なした。ローゼンスタールの市長もその一人で、彼はいつもの慎重さに似合わず、あちこちでもう事件は終わったと公言してはばからなかった。市長とクラブでブリッジをした時、まだ油断は禁物だと考える警察署長はそれとなく釘をさしたが、市長は気にしなかった。ブリッジの勝負は署長の勝ちだったが、市長は最後まで上機嫌だった。「私はもともと人魚なんて信じちゃいないが、それが何だったにせよ、海賊はもういなくなったんだ。まったく心配していないという証拠に、私自身、明日から船旅に出る予定だよ」「私なら止めときますね」と署長は慎重な口ぶりで言った。「もちろん、あなたを止める権限は私にはありませんが」市長は大笑いした。

 からかわれていると思った署長は内心腹を立てたが、市長の言葉は嘘ではなかった。翌日の午後二時半きっかりに、市長はオンフィール行きの帆船に乗り込んだ。そこで催される式典に参加するためだったが、半分は物見遊山もかねていた。部下たちにはそんなそぶりを見せなかったが、彼はこの旅行を久しぶりの休暇と見なしていた。船室に入り、ゆったりした麻のシャツに着替え、甲板に出て、日光浴をするためにデッキチェアに体を横たえた。そして満足のため息とともに呟いた。「大仕事をやり遂げたのだから、これぐらいの楽しみは当然だ」

 大仕事とは言うまでもなく、長い間彼を悩ませてきたローゼンスタールの無法者たちを一掃したことだった。どこの誰が調査に来ても絶対に尻尾を掴まれないように二重三重に煙幕を張り、安全装置をかませてあったが、相次いで発生した貨物船の略奪事件、船乗り達の皆殺し、町に広まった人魚の海賊団の噂、義勇軍の殲滅、もっともらしい船の残骸の発見、これらのすべては市長が陰で糸を引き、細心の注意と計算をもって引き起こしたことだった。この仕事のために本物の海賊を金で雇ったが、向こうの方では雇い主がローゼンスタールの市長だとは夢にも思わなかっただろう。荒唐無稽な人魚の噂を広めたのは、地方長官に海軍を派遣させないようにするためである。海軍を派遣されては義勇軍を結成する必要がなくなってしまうが、彼は長官の性格を熟知していたので、人魚の海賊などといううさんくさい話には、長官は絶対に乗ってこないと計算できた。彼はいまだに人魚の影に怯えている警察署長のことを思い出し、小さく笑った。勝利の美酒に酔い、ただ一人自分の未来に乾杯した。

 出航の二日目に雨が降り、その翌朝、デッキに出た人々は船が濃霧に取り巻かれていることを知った。ミルクのような白く重たい霧で、海の上だというのに深い森に迷い込んだ気分になった。船客たちの会話も弾まなかった。船は動きを止めた。霧が晴れるのを待つしかないということで、船の中に物憂げな静寂が広がり、多くの人々はベッドにもぐりこんで再び眠りに落ち、夢の中をさまよった。市長もその一人だったが、昼近くになって目を覚まし、なぜだか苛立たしい気分につき動かされて甲板に上がった。上も下も区別がつかない、吸い込まれるような白い虚空がどこまでも広がり、かろうじて見分けられる甲板の上にはまばらな人影が滲んだシルエットとなって行きつ戻りつしていた。一人の貴婦人とぶつかりそうになり、市長は口の中で謝罪の言葉を呟いたが、その時貴婦人が尋ねた。「あの音は何かしら?」

 市長には答えられなかった。それはあえてたとえるならば、草むらの中を蛇が這う音か足元の薄氷が裂ける音に似ていた。霧の中のこだまか幻聴としか思えなかったその音は次第に高くなり、今では甲板にいる全員が耳を傾けていた。操縦室にいる航海士と船長もそれを耳にして、会話を中断した。市長は手すりに近づいて白い霧の中を覗き込み、そこに巨大な船の影が浮かび上がるのを見た。衝突が避けられないことは誰の目にも明らかだった。あちこちで悲鳴が上がったが、市長は腰のところがしびれたようになって動くことも口を開くこともできなかった。あわただしく自分の横を駆け抜けていく乗組員たちに、このままでは衝突してしまうぞと告げようとしたが、実のところ、今起きているのはそんなことではないと分かっていた。何が起きているにせよ、その意味を本当に知っているのは自分だけだと確信していたが、まるで覚めない夢の中でもがいている時のように、それを現実として受け入れることができなかった。

 彼が逃げもせず、また他の人々のように走り回りもせず、叫びもせず、ただ魂の抜け殻のようにじっと眼前の出来事を眺めていたのは、ただそれだけの理由だった。巨大な船の影が膨れ上がり、白い霧の中から船首が突き出し、手すりを破壊して甲板に突き刺さり、その異国のもののように思える奇怪な意匠、びっしり隙間なく貼りついたフジツボ、黒くすえた臭いを発する海草などに彩られた船から刃物を持った影が次々と飛び出してきた時も、それらが半人半魚の異様な形態をしていて、鎧から突き出した顔が銀色に光る鱗に覆われていると見て取った時も、殺戮を開始する時の異様な金切り声が耳に入った時も、ただ凍りついたようにじっとしているだけだった。そして甲板の上をすべるように近づいてくる一匹が剣を振りかざし、その頭がメデューサのような黒髪を振り乱しているのが目に入った時も、その腕の思いもよらないなまめかしい白さに目を射抜かれた時も、彼はただじっと、その場に根が生えたように立ち尽くしているだけだった。



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2 コメント

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海洋奇譚 (sagano)
2014-11-03 16:35:30
海に興味がありまして、クストーとか、それとロベール・ド・ラ・クロア、悪夢名画劇場なんかの花輪莞爾が思い浮かび、久しぶりに手にとって見ようと本棚探すにも見つからず、何処へ行ったのーー冷汗!!
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Unknown (ego_dance)
2014-11-07 11:33:07
書かれている名前はどれも寡聞にして知りませんが、この手の海難話はなぜか好きで、タイタニックの遭難事故の記録など夢中で読んだ記憶があります。が、私にとっての海洋奇譚のきわめつけは、やはりポオの「アーサー・ゴードン・ピムの物語」ですかね。
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