『溶ける糸』 ☆☆☆
コロンボ15作目。今回の犯人役はミスター・スポックことレナード・ニモイ。私はスター・トレックをほとんど見たことないので、スポックってどんな奴なのか良く知らないが、アメリカ人にとっては常に沈着冷静で頼りになる典型的キャラらしい。そういうゲストが犯人役でコロンボと対決するということでテンション上がるエピソードらしいが、知らない私にとっては単なる顔の長いおっさんである。
さて、ミスター・スポックじゃなくてドクター・メイフィールド、研究を自分のものにしようと恩師の殺害を企てる。心臓弁の手術中にある細工をするのだが、看護婦が糸が怪しいと気づき調べ始め、バレそうになって看護婦を殺す。このドクター・メイフィールド、淡々とした顔で冷酷な犯行を繰り返すかなり悪質な犯人である。人格者の看護婦にモルヒネ横流しの汚名を着せ、今は立ち直った元麻薬中毒患者の青年を犯人に仕立て上げようとし、コロンボがあれはシロだというと、無理矢理モルヒネを打って殺してしまう。とんでもない奴だ。しかしいつもニヤニヤしていて不細工なデブの『二枚のドガの絵』のデイルと違って、りりしい真剣な顔をしているので、そこまで嫌悪感を抱かせない。ルックスって重要だ。
さて、コロンボはだんだんメイフィールド医師が怪しいと思い始め、やがて糸にたどり着く。糸にどんな細工があるのかは中盤まで分からないが、邦題が最初からネタバレしている。要するに心臓弁の手術に溶ける糸を使ったのである。コロンボに図星を指されて笑ってごまかそうとするスポック。コロンボは珍しく激怒し、置時計をデスクに叩きつけて怒鳴る。「ハイデマン博士の面倒をよく見ることだ。もし博士が死んだら検死をして、心臓発作か糸のせいかはっきりさせるからな」
スポックの偉いところは何があっても冷静に、ただちに最善の行動を取るところだ。コロンボの恫喝のあと、すぐに彼はハイデマン博士の再手術をして糸を取り除こうとする。二人も殺しておいて、本来の目的であるハイデマン博士の殺害を諦めるのだ。普通の人間なら相当がっくりくると思うのだが、スポックはまったく動揺を見せない。この平常心にはつくづく感心する。
そして最後、コロンボは手術室を強引に捜索するが証拠となる糸を発見できない。一度は敗北宣言をして去っていくコロンボだが、たった一箇所、捜索されていない盲点があることに気づく。そして糸を発見するのだが、しかしまあ、あの状況で頭を働かせて一瞬のうちにそんな場所に糸を隠すというのは尋常じゃない。さすがスポック、いやドクター・メイフィールドである。
今回は本来の目的である殺人は最後まで行われず、その企てに気づいた第三者が先に殺されるという変則的な構成になっている。ドクター・メイフィールドは冷酷に理知的に次々と手を打ってくる切れ者だが、よく考えるとかなりドツボにはまった犯人と言えるだろう。
このエピソードを前にアメリカのテレビ番組で見た時は、なんか陰気なエピソードだと思った記憶があるが、今回見返してみてかなりコミカルということが分かった。一番笑えるのは何といっても殺される看護婦のルームメイト、マーシャである。初登場シーンのコロンボとの会話は爆笑できる。コロンボに手術を見せながら糸のことを解説する医者も、ものすごく嬉しそうなのがおかしい。
コロンボの推理部分はそれほど鮮やかでもないが、最初モルヒネに惑わされていたコロンボが徐々にメイフィールドに目を向けていく過程は丁寧に描かれていて楽しめる。そしてあそこまで怒るコロンボも珍しい。『殺人処方箋』などではテクニックとして怒って見せているが、本エピソードでは本当にキレているようだ。それに最後、一旦部屋を出て行き、また戻ってきて謎解きをするのだが、出て行った時はしゅんとしているのに戻ってきたときはやたらはしゃいでいるのが何かおかしい。気持ちは分かるが、私は最後の謎解きをする時のコロンボはクールな方が好きなのである。
コロンボ15作目。今回の犯人役はミスター・スポックことレナード・ニモイ。私はスター・トレックをほとんど見たことないので、スポックってどんな奴なのか良く知らないが、アメリカ人にとっては常に沈着冷静で頼りになる典型的キャラらしい。そういうゲストが犯人役でコロンボと対決するということでテンション上がるエピソードらしいが、知らない私にとっては単なる顔の長いおっさんである。
さて、ミスター・スポックじゃなくてドクター・メイフィールド、研究を自分のものにしようと恩師の殺害を企てる。心臓弁の手術中にある細工をするのだが、看護婦が糸が怪しいと気づき調べ始め、バレそうになって看護婦を殺す。このドクター・メイフィールド、淡々とした顔で冷酷な犯行を繰り返すかなり悪質な犯人である。人格者の看護婦にモルヒネ横流しの汚名を着せ、今は立ち直った元麻薬中毒患者の青年を犯人に仕立て上げようとし、コロンボがあれはシロだというと、無理矢理モルヒネを打って殺してしまう。とんでもない奴だ。しかしいつもニヤニヤしていて不細工なデブの『二枚のドガの絵』のデイルと違って、りりしい真剣な顔をしているので、そこまで嫌悪感を抱かせない。ルックスって重要だ。
さて、コロンボはだんだんメイフィールド医師が怪しいと思い始め、やがて糸にたどり着く。糸にどんな細工があるのかは中盤まで分からないが、邦題が最初からネタバレしている。要するに心臓弁の手術に溶ける糸を使ったのである。コロンボに図星を指されて笑ってごまかそうとするスポック。コロンボは珍しく激怒し、置時計をデスクに叩きつけて怒鳴る。「ハイデマン博士の面倒をよく見ることだ。もし博士が死んだら検死をして、心臓発作か糸のせいかはっきりさせるからな」
スポックの偉いところは何があっても冷静に、ただちに最善の行動を取るところだ。コロンボの恫喝のあと、すぐに彼はハイデマン博士の再手術をして糸を取り除こうとする。二人も殺しておいて、本来の目的であるハイデマン博士の殺害を諦めるのだ。普通の人間なら相当がっくりくると思うのだが、スポックはまったく動揺を見せない。この平常心にはつくづく感心する。
そして最後、コロンボは手術室を強引に捜索するが証拠となる糸を発見できない。一度は敗北宣言をして去っていくコロンボだが、たった一箇所、捜索されていない盲点があることに気づく。そして糸を発見するのだが、しかしまあ、あの状況で頭を働かせて一瞬のうちにそんな場所に糸を隠すというのは尋常じゃない。さすがスポック、いやドクター・メイフィールドである。
今回は本来の目的である殺人は最後まで行われず、その企てに気づいた第三者が先に殺されるという変則的な構成になっている。ドクター・メイフィールドは冷酷に理知的に次々と手を打ってくる切れ者だが、よく考えるとかなりドツボにはまった犯人と言えるだろう。
このエピソードを前にアメリカのテレビ番組で見た時は、なんか陰気なエピソードだと思った記憶があるが、今回見返してみてかなりコミカルということが分かった。一番笑えるのは何といっても殺される看護婦のルームメイト、マーシャである。初登場シーンのコロンボとの会話は爆笑できる。コロンボに手術を見せながら糸のことを解説する医者も、ものすごく嬉しそうなのがおかしい。
コロンボの推理部分はそれほど鮮やかでもないが、最初モルヒネに惑わされていたコロンボが徐々にメイフィールドに目を向けていく過程は丁寧に描かれていて楽しめる。そしてあそこまで怒るコロンボも珍しい。『殺人処方箋』などではテクニックとして怒って見せているが、本エピソードでは本当にキレているようだ。それに最後、一旦部屋を出て行き、また戻ってきて謎解きをするのだが、出て行った時はしゅんとしているのに戻ってきたときはやたらはしゃいでいるのが何かおかしい。気持ちは分かるが、私は最後の謎解きをする時のコロンボはクールな方が好きなのである。
ところで、コロンボ・シリーズでいつも不思議に思っていることの1つは、彼がほとんど単独行動をとることです。
それがべつに問題にならなければ良いのですが、この作品のラストの場合はどうでしょう・・・
さっきまで自分が来ていた白衣のポケットから問題の糸を取り出す、その瞬間がすべての運命を決める時!でしょう。
このように刑事と犯人と2人しかいなかったら、後の裁判の時、犯人に「そんなことはなかった」と否定されたら、終わりでは・・・?
そこで、あれは何というタイトルでしたか、カメラのトリックの話で、犯人の行動について、その場にいたすべての人間に「君、いま見たね?」と念を押していたほうがリアルでしたね。
もちろん、コロンボにリアルは重要でない、と言われればその通りかもしれませんが・・・
ただ証拠能力という意味では、刑事の証言には充分な重みがあるのではないでしょうか。そうでないと、たとえ白衣のポケットに糸が入っているところを第三者に見せたとしても、コロンボが自分でこっそり入れたと言い逃れすることができます。更にこの場合、糸が入っていた場所だけでなく糸そのものに証拠能力があるとも考えられます。博士の体内に入っていたわけですから。
とはいえ、仰るとおり「逆転の構図」(カメラのトリック)や「二枚のドガの絵」では「コロンボ自身によるでっち上げ」と言われないために証人を用意していて、そっちの方がドラマティックだし「チェックメイト」感が強くていいですね。
家に帰ってきたら
溶ける糸をBSでやってました。
病院の感じが入院してたとこと
かなり似ていて
二人でチャンネルを変えました
(笑)
この作品でのコロンボ怒りすぎ
ですね。