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『必殺仕切人Vol.1』 ☆
必殺シリーズで「仕切人」というのがあり、かなり評判が悪いということは前から知っていたが、まったく観たことはなかった。放映されたのは「仕事人IV」と「仕事人V」の間で、要するに必殺のバラエティ化が最高潮に達した頃である。今回DVDが出たので、迷ったあげくVol.1だけ購入してみることにした。ネットで、第一話第二話あたりはまだよかったがその後迷走した、という評価を目をしたためである。ちなみにVol.1には第一話から第三話まで収録されている。
いやー、それにしてもひどい。見るも無残。あの『仕置人』や『仕業人』、それから『仕事屋』や『仕置屋』を送り出したシリーズがしまいにはこうなってしまうとは。悲しくなってくる。
キャストは無駄に豪華である。前作『仕事人IV』からスピンアウトした勇次の中条きよしに加え、京マチ子、小野寺昭、高橋悦史、芦屋雁之助という、過去の色んな必殺シリーズの出演者をあちこちから引っ張ってきたようなメンツになっている。これが殺しの実行部隊。ここに『渡し人』のお沢をやっていた「必殺」常連の西崎みどり、及び山本陽一がサポートメンバーとして加わる。ちなみに、芦屋雁之助のおかみさん役でアンヌ隊員ことひし美ゆり子も出演している。しかし最初見た時は全然分からなかった。なんだか目が細くなって顔立ちがまるで違うような気がするが、こんなに顔が変わった女優さんも珍しいんじゃないだろうか。
さて、ダメな要素は色々あるが、まずは人数多すぎ。実行部隊は5人もいらない。おまけに殺しのビジュアルだけで勝負しようとしているので、殺しの方法がいちいち回りくどくしかもパターン化されており、それが入れ替わり立ち替わり5人も出てくるので、芝居がかり過ぎで見られたもんじゃない。まるで演歌歌手の歌謡ショー並みのクサさだ。そのくせ殺し方は凝ったわりには妙に雑で、龍之助(高橋悦史)はでかいキセルで殴り殺すだけだし、勘平(芦屋雁之助)なんて『仕業人』の剣之助みたいに髪を切って手首を縛り上げ、そのあげくに思い切り突き飛ばす。そうすると壁だの柱だのにガンガンぶつかって死ぬ、というわけわからない殺し方である。この殺し方は後で、プロレスみたいなリングを作ってぶん回して殺す、というものに変更されたらしい。スタッフは何を考えているのか。
お国(京マチ子)、新吉(小野寺昭)、勇次(中条きよし)の殺し方はスマートだが、いかんせん全員凝り過ぎである。やはり、必殺シリーズ様式美の極致である勇次の三味線糸による吊るしも、比較的シンプルな主水と秀の殺しとセットになっていたからこそ映えたということがよく分かる。これだけ凝った殺し技ばかり続くとまるで曲芸大会だ。緊張感などまるでない。
それに勇次の吊るしも、ポーズから目線までここまで思いっきりキメられるとそれこそ歌謡ショーみたいで、かえってダサい。様式美は行き過ぎるとギャグに近づく。程よく臨機応変のアクションを取り入れた、『新仕事人』あたりの吊るしが一番クールだったと思う。
それから山本陽一のスキゾーはいらない。コメディ要員として西崎みどりに絡むため出てくるが「スキゾー、スキスキ!」なんて言ってるだけでまったく面白くなく、目を覆いたくなる。それからスキゾーが仲間になるあのなりゆきは一体何だ。仕事を見られて勇次と新吉が始末しようとするとお国が止め、命を助けるかわりに仲間になれと言ってメンバーに入れてしまう。仕切人チームは何のスキルチェックもなく、誰でもメンバーになれてしまうのか。
まあそれを言うなら、なぜ大奥勤めが長くて極端に世間知らずなお国が凄腕の殺し屋なのかということもある。本作の最大の問題は冗談としか思えない脚本だ。それは第一話、第二話からも明らかだが、第三話から耐え難いレベルに達する。なんせ江戸にピラミッドとスフィンクスが出てくるのだ。アホである。ゴレンジャーとかああいう子供向けの特撮番組みたいだ。笑うしかない。当時のはやりだったのか、ピラミッド・パワーの話題がさかんに出てくる。もうどうでもいい。
あえていいところを探せば、小野寺昭の起用は良かったと思う。殺し屋っぽくない俳優の起用という必殺の伝統にのっとったキャスティングだが、「太陽にほえろ!」の殿下と違ってクールな雰囲気が新鮮だ。クールな二枚目で勇次とキャラがかぶっているが、勇次が女たらしの軟派なクール、新吉は堅物のクール、と一応差別化してある。このクール二人がなぜかいやに仲が悪い、という設定も面白かった。
新吉の殺し技はまず夜光塗料を塗ったマチ針を飛ばして標的の心臓部分に刺す。灯りを消して真っ暗にすると、マチ針だけが見える。刃を仕込んだものさしを抜き、駆け寄ってマチ針の光を目印に心臓に突き刺す、というものだ。凝り過ぎの感はあるが、目印をつけて暗闇の中で殺すというのは面白い。ただし、このVol.1の中でマチ針を使う殺しは一回しかない。
私が仕切人を企画するならば、実行部隊は京マチ子、高橋悦史、小野寺昭の三人にして、高橋悦史は骨外し系または絞殺系のシンプルな殺しにする。サポート要員は西崎みどりのみ、スキゾーは削除。要するに、大奥追放組(京マチ子、高橋悦史、西崎みどり)にプロの殺し屋一人(小野寺昭)を加えた編成にし、シリアスな脚本にすれば、それなりに見られる必殺ができたのではなかろうか。なんせ京マチ子は歴代の女元締めの中では一番美しいし、高橋悦史はとぼけた味と大人の包容力があって魅力的だ。素材はいいのである。この二人は「仕舞人」のメンバーでもあるが、「仕舞人」を見てみたくなった。
それにしても、この作品に出演した俳優のみなさんはさぞや無念だったことだろうな。
必殺シリーズで「仕切人」というのがあり、かなり評判が悪いということは前から知っていたが、まったく観たことはなかった。放映されたのは「仕事人IV」と「仕事人V」の間で、要するに必殺のバラエティ化が最高潮に達した頃である。今回DVDが出たので、迷ったあげくVol.1だけ購入してみることにした。ネットで、第一話第二話あたりはまだよかったがその後迷走した、という評価を目をしたためである。ちなみにVol.1には第一話から第三話まで収録されている。
いやー、それにしてもひどい。見るも無残。あの『仕置人』や『仕業人』、それから『仕事屋』や『仕置屋』を送り出したシリーズがしまいにはこうなってしまうとは。悲しくなってくる。
キャストは無駄に豪華である。前作『仕事人IV』からスピンアウトした勇次の中条きよしに加え、京マチ子、小野寺昭、高橋悦史、芦屋雁之助という、過去の色んな必殺シリーズの出演者をあちこちから引っ張ってきたようなメンツになっている。これが殺しの実行部隊。ここに『渡し人』のお沢をやっていた「必殺」常連の西崎みどり、及び山本陽一がサポートメンバーとして加わる。ちなみに、芦屋雁之助のおかみさん役でアンヌ隊員ことひし美ゆり子も出演している。しかし最初見た時は全然分からなかった。なんだか目が細くなって顔立ちがまるで違うような気がするが、こんなに顔が変わった女優さんも珍しいんじゃないだろうか。
さて、ダメな要素は色々あるが、まずは人数多すぎ。実行部隊は5人もいらない。おまけに殺しのビジュアルだけで勝負しようとしているので、殺しの方法がいちいち回りくどくしかもパターン化されており、それが入れ替わり立ち替わり5人も出てくるので、芝居がかり過ぎで見られたもんじゃない。まるで演歌歌手の歌謡ショー並みのクサさだ。そのくせ殺し方は凝ったわりには妙に雑で、龍之助(高橋悦史)はでかいキセルで殴り殺すだけだし、勘平(芦屋雁之助)なんて『仕業人』の剣之助みたいに髪を切って手首を縛り上げ、そのあげくに思い切り突き飛ばす。そうすると壁だの柱だのにガンガンぶつかって死ぬ、というわけわからない殺し方である。この殺し方は後で、プロレスみたいなリングを作ってぶん回して殺す、というものに変更されたらしい。スタッフは何を考えているのか。
お国(京マチ子)、新吉(小野寺昭)、勇次(中条きよし)の殺し方はスマートだが、いかんせん全員凝り過ぎである。やはり、必殺シリーズ様式美の極致である勇次の三味線糸による吊るしも、比較的シンプルな主水と秀の殺しとセットになっていたからこそ映えたということがよく分かる。これだけ凝った殺し技ばかり続くとまるで曲芸大会だ。緊張感などまるでない。
それに勇次の吊るしも、ポーズから目線までここまで思いっきりキメられるとそれこそ歌謡ショーみたいで、かえってダサい。様式美は行き過ぎるとギャグに近づく。程よく臨機応変のアクションを取り入れた、『新仕事人』あたりの吊るしが一番クールだったと思う。
それから山本陽一のスキゾーはいらない。コメディ要員として西崎みどりに絡むため出てくるが「スキゾー、スキスキ!」なんて言ってるだけでまったく面白くなく、目を覆いたくなる。それからスキゾーが仲間になるあのなりゆきは一体何だ。仕事を見られて勇次と新吉が始末しようとするとお国が止め、命を助けるかわりに仲間になれと言ってメンバーに入れてしまう。仕切人チームは何のスキルチェックもなく、誰でもメンバーになれてしまうのか。
まあそれを言うなら、なぜ大奥勤めが長くて極端に世間知らずなお国が凄腕の殺し屋なのかということもある。本作の最大の問題は冗談としか思えない脚本だ。それは第一話、第二話からも明らかだが、第三話から耐え難いレベルに達する。なんせ江戸にピラミッドとスフィンクスが出てくるのだ。アホである。ゴレンジャーとかああいう子供向けの特撮番組みたいだ。笑うしかない。当時のはやりだったのか、ピラミッド・パワーの話題がさかんに出てくる。もうどうでもいい。
あえていいところを探せば、小野寺昭の起用は良かったと思う。殺し屋っぽくない俳優の起用という必殺の伝統にのっとったキャスティングだが、「太陽にほえろ!」の殿下と違ってクールな雰囲気が新鮮だ。クールな二枚目で勇次とキャラがかぶっているが、勇次が女たらしの軟派なクール、新吉は堅物のクール、と一応差別化してある。このクール二人がなぜかいやに仲が悪い、という設定も面白かった。
新吉の殺し技はまず夜光塗料を塗ったマチ針を飛ばして標的の心臓部分に刺す。灯りを消して真っ暗にすると、マチ針だけが見える。刃を仕込んだものさしを抜き、駆け寄ってマチ針の光を目印に心臓に突き刺す、というものだ。凝り過ぎの感はあるが、目印をつけて暗闇の中で殺すというのは面白い。ただし、このVol.1の中でマチ針を使う殺しは一回しかない。
私が仕切人を企画するならば、実行部隊は京マチ子、高橋悦史、小野寺昭の三人にして、高橋悦史は骨外し系または絞殺系のシンプルな殺しにする。サポート要員は西崎みどりのみ、スキゾーは削除。要するに、大奥追放組(京マチ子、高橋悦史、西崎みどり)にプロの殺し屋一人(小野寺昭)を加えた編成にし、シリアスな脚本にすれば、それなりに見られる必殺ができたのではなかろうか。なんせ京マチ子は歴代の女元締めの中では一番美しいし、高橋悦史はとぼけた味と大人の包容力があって魅力的だ。素材はいいのである。この二人は「仕舞人」のメンバーでもあるが、「仕舞人」を見てみたくなった。
それにしても、この作品に出演した俳優のみなさんはさぞや無念だったことだろうな。
「必殺仕切人」、確かに時代劇とみればひどいです。
「仕掛人」「仕置人」が泣きます。
バラエティ路線はこの頃が最高潮で、「仕事人V激闘編」で少し抑えめになり、「仕事人V旋風編」でまた高まった記憶が。
内容も「旋風編」なんて1話からエスカルゴを食い、ラブホテルに行ったり、バースになったり、ワープロを打ったり。
それを考えれば「仕切人」のターザンやらピラミッドは、敢えてマンガチックなものを取り入れたのか、とも思えますが、似たようなもので。
そうはいっても、この「仕切人」、放送中にサントラアルバムも発売されたし、シリーズ最高の視聴率も本作だと聞いた記憶があります。
初動は良かったけど、みんな途中で飽きちゃった、という感じですね。
京マチ子、高橋悦史、小野寺昭は確かによかったと思いますが、小野寺氏の途中からのイメージ変更にはなじめませんでした。
まあなんにせよちょっとふざけ過ぎという気がします。