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『スーパートランプ』 スーパートランプ ☆☆☆
『ブレックファスト・イン・アメリカ』が大ヒットしたスーパートランプのファースト・アルバム。スーパートランプは三枚目の『クライム・オブ・ザ・センチュリー』でブレークしたバンドだが、その前に二枚、ひっそりと売れないアルバムをリリースしている。これがその一枚目だが、後の超ポップで洗練された『ブレックファスト・イン・アメリカ』はもちろん、知性溢れるプログレの『クライム・オブ・ザ・センチュリー』ともまったく違うサウンドで、これが同じバンドかと驚くほどだ。暗い幻想的な作風にちょっとプログレ志向が感じ取れるぐらいで、全体にフォーク・ロックにややブルース風味を加えたような、非常に地味なサウンドである。まあ、これじゃ売れないわな。
スーパートランプは三枚目の『クライム』以降7枚目まで不動の布陣となるが、初期はメンバーチェンジを繰り返している。自分たちのサウンドを求めて試行錯誤していたのだろう。このアルバムでも『クライム』と同じメンツはソングライター兼ヴォーカルのロジャー・ホジソンとリック・デイヴィスのみで、楽器編成も異なっている。ドラム、ベース、キーボード、ギターの四人編成で、後にキーボードとギターを担当するロジャーはベースを弾いている。キーボードはリック・デイヴィスだが、オルガン主体でたまにピアノが入るぐらい。シンセサイザーなんて洒落たものは一切ない。
しかし私が最初にこのアルバムを聴いた時一番意外だったのは、ほとんどの曲がロジャー・ホジソン主体で制作されていることだった。曲を書いているのもほぼロジャーだし、ごく一部リックとギタリストが歌っているのを除いてヴォーカルもロジャーだ。スーパートランプの全アルバム中もっともロジャーが目立っているのがこのファーストなのである。もともとスーパートランプはリック・デイヴィスをリーダーとして結成され、ロジャーはオーディションで参加したはずなので、これは意外だった。もしかしたらビートルズ系のメロディを書きハイトーンで歌うロジャーを中心に売り出そうとしたのだろうか。ともあれ、このファーストはロジャーの繊細さと暗さ、哀愁、幻想味が全篇を覆う出来上がりとなっている。
そしてまた、次のセカンド・アルバム『消えない封印』が打って変わってリック・デイヴィスをフィーチャーしているのが面白い。音楽性もガラッと変わっていて、ファーストの哀愁漂うフォーク・ロック系に対し粘っこいR&B系である。まあロジャーとリックの志向性の違いがもろに出た結果ということだろう。しかし三枚目の『クライム』ではこの2人がそれぞれの個性を活かしつつも統一感をもって、ピンク・フロイドを思わせる緻密なプログレを聴かせてしまうのだから感心する。半分ぐらいはプロデューサーの手腕なのだろうが、バンドのマジックというものを考えてしまう。
さて、そんなわけでロジャーが全篇にフィーチャーされたこのファースト、先に書いたとおり地味だし、全然垢抜けないが、私は結構好きである。『ブレックファスト』の頃ほど中性的ではない、独特の翳りがあるロジャーのハイトーン・ヴォーカルをたっぷり聴けるし、彼が書く哀愁漂うメロディにはちょっとS&Gを思わせる素朴な味わいがある。何より、雰囲気がいかにも英国的だ。ギターやオルガンにはブルース・ロックの影響があるが、決してアメリカでは生まれない音である。アルバムは「Surely」の短いバージョンで始まり、最後にまた「Surely」のロングバージョンで終わる。これはいかにもロジャーらしい、メロディアスな優しい曲である。「It's A Long Road」のようなジャズ・ロックっぽい曲もあれば、「Aubade And I Am Not Like Other Birds Of Prey」のような幻想的なバラードもある。どの曲も、リック・デイヴィスのオルガンがちょっとサイケデリックな風味を与え、アクセントになっている。
また、フォーキーな雰囲気の中にもインストゥルメンタル部分を重視する姿勢が垣間見え、それが『クライム』以降のプログレ路線を予感させる。「Maybe I'm A Beggar」はギタリストとロジャーが半々にリード・ヴォーカルをとる陰気な曲だが、かなり長いギター・ソロがフィーチャーされているし、「Try Again」も歌メロはシンプルなのに間奏が異様に長いため、12分の長尺曲となっている。全体に、アレンジにメリハリをつけて曲を盛り上げる手法を模索している感じが伝わってくる。
要するにちょっとプログレががった、70年代初頭の英国フォーク・ロックだと思ってもらえばいい。私はこの雰囲気も嫌いじゃないが、間違っても『ブレックファスト・イン・アメリカ』を期待してはいけない。
『ブレックファスト・イン・アメリカ』が大ヒットしたスーパートランプのファースト・アルバム。スーパートランプは三枚目の『クライム・オブ・ザ・センチュリー』でブレークしたバンドだが、その前に二枚、ひっそりと売れないアルバムをリリースしている。これがその一枚目だが、後の超ポップで洗練された『ブレックファスト・イン・アメリカ』はもちろん、知性溢れるプログレの『クライム・オブ・ザ・センチュリー』ともまったく違うサウンドで、これが同じバンドかと驚くほどだ。暗い幻想的な作風にちょっとプログレ志向が感じ取れるぐらいで、全体にフォーク・ロックにややブルース風味を加えたような、非常に地味なサウンドである。まあ、これじゃ売れないわな。
スーパートランプは三枚目の『クライム』以降7枚目まで不動の布陣となるが、初期はメンバーチェンジを繰り返している。自分たちのサウンドを求めて試行錯誤していたのだろう。このアルバムでも『クライム』と同じメンツはソングライター兼ヴォーカルのロジャー・ホジソンとリック・デイヴィスのみで、楽器編成も異なっている。ドラム、ベース、キーボード、ギターの四人編成で、後にキーボードとギターを担当するロジャーはベースを弾いている。キーボードはリック・デイヴィスだが、オルガン主体でたまにピアノが入るぐらい。シンセサイザーなんて洒落たものは一切ない。
しかし私が最初にこのアルバムを聴いた時一番意外だったのは、ほとんどの曲がロジャー・ホジソン主体で制作されていることだった。曲を書いているのもほぼロジャーだし、ごく一部リックとギタリストが歌っているのを除いてヴォーカルもロジャーだ。スーパートランプの全アルバム中もっともロジャーが目立っているのがこのファーストなのである。もともとスーパートランプはリック・デイヴィスをリーダーとして結成され、ロジャーはオーディションで参加したはずなので、これは意外だった。もしかしたらビートルズ系のメロディを書きハイトーンで歌うロジャーを中心に売り出そうとしたのだろうか。ともあれ、このファーストはロジャーの繊細さと暗さ、哀愁、幻想味が全篇を覆う出来上がりとなっている。
そしてまた、次のセカンド・アルバム『消えない封印』が打って変わってリック・デイヴィスをフィーチャーしているのが面白い。音楽性もガラッと変わっていて、ファーストの哀愁漂うフォーク・ロック系に対し粘っこいR&B系である。まあロジャーとリックの志向性の違いがもろに出た結果ということだろう。しかし三枚目の『クライム』ではこの2人がそれぞれの個性を活かしつつも統一感をもって、ピンク・フロイドを思わせる緻密なプログレを聴かせてしまうのだから感心する。半分ぐらいはプロデューサーの手腕なのだろうが、バンドのマジックというものを考えてしまう。
さて、そんなわけでロジャーが全篇にフィーチャーされたこのファースト、先に書いたとおり地味だし、全然垢抜けないが、私は結構好きである。『ブレックファスト』の頃ほど中性的ではない、独特の翳りがあるロジャーのハイトーン・ヴォーカルをたっぷり聴けるし、彼が書く哀愁漂うメロディにはちょっとS&Gを思わせる素朴な味わいがある。何より、雰囲気がいかにも英国的だ。ギターやオルガンにはブルース・ロックの影響があるが、決してアメリカでは生まれない音である。アルバムは「Surely」の短いバージョンで始まり、最後にまた「Surely」のロングバージョンで終わる。これはいかにもロジャーらしい、メロディアスな優しい曲である。「It's A Long Road」のようなジャズ・ロックっぽい曲もあれば、「Aubade And I Am Not Like Other Birds Of Prey」のような幻想的なバラードもある。どの曲も、リック・デイヴィスのオルガンがちょっとサイケデリックな風味を与え、アクセントになっている。
また、フォーキーな雰囲気の中にもインストゥルメンタル部分を重視する姿勢が垣間見え、それが『クライム』以降のプログレ路線を予感させる。「Maybe I'm A Beggar」はギタリストとロジャーが半々にリード・ヴォーカルをとる陰気な曲だが、かなり長いギター・ソロがフィーチャーされているし、「Try Again」も歌メロはシンプルなのに間奏が異様に長いため、12分の長尺曲となっている。全体に、アレンジにメリハリをつけて曲を盛り上げる手法を模索している感じが伝わってくる。
要するにちょっとプログレががった、70年代初頭の英国フォーク・ロックだと思ってもらえばいい。私はこの雰囲気も嫌いじゃないが、間違っても『ブレックファスト・イン・アメリカ』を期待してはいけない。
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