アブソリュート・エゴ・レビュー

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Spider-Man 3

2007-05-13 12:13:20 | 映画
『Spider-Man 3』 Sam Raimi監督   ☆☆☆★

 土曜日に『スパイダーマン3』を観てきた。かなりいい席だったので満足。映画は楽しめたが、期待したほどではなかった。『スパイダーマン2』が傑作だったので期待していたのだが、さすがにあのレベルを連発するのは辛かったようだ。

 今回は敵が3人もいる。一人目は前作の最後で予告されていたように、親友ハリーのゴブリン・ジュニア。二人(ふたつ)目は宇宙から隕石に付着してやってきたねばねばした黒い物質。これがスパイダーマンに取りついて黒いスパイダーマンとなる。そして三人目はピーターの伯父を殺した犯人が脱獄し、変な光線を浴びて体が砂と化すサンドマンとなる。

 黒いスパイダーマンは悪の権化となって町を破壊して回るかと思っていたら、そんなことはなかった。ピーターが女たらしみたいになってMJに嫌がらせをしたりする程度だ。まあヒーローが一時的に悪になってしまうという展開はお約束で、『スーパーマン』でも3作目ぐらいでそういう展開があったが、どうせやるならもうちょっと強烈でないと生ぬるいと思うのは私だけか。町の人々のスパイダーマン賛美が最高潮に達しピーターがうぬぼれるという前半の展開からして、黒スパイダーマンにはもっと悪の限りを尽くしてほしかった。その方が終盤にまた赤青スパイダーマンに戻ったときのカタルシスが大きかったんじゃないかな。

 あのねばねばはピーターを黒スパイダーマンにして終わりかと思ってたら、その先があったのでびっくりした。ピーターを恨む別人に取りついて、今度こそスパイダーマンのバケモノみたいなものになる。口が裂けてて牙がずらっとならんでいる。ヴェノムとかいうらしい。あの顔はこわい。

 アクション・シーンはあいかわらずCG全開でよく出来ているが、全体に平坦だった。それも不満の一つだ。最初のゴブリン・ジュニアとの闘い、サンドマンとの闘い、最後のヴェノム・サンドマンのタッグチームとの闘い、それぞれ趣向を凝らしてあるのは分かるが、流れが単調なのである。『スパイダーマン2』のあの電車が暴走する前後のシークエンスは動と静の分配が見事で最高のカタルシスを与えてくれたが、ああいうシーンは今回見られなかった。それから最後、サンドマンの告白とハリーの死という主役が異なる二つのお涙頂戴シーンを連続させたのも流れが良くなかったと思う。あと、なぜサンドマンはあそこで戦うの止めてしまったんだろう。理由が分からない。スパイダーマンを憎んでたんじゃないのか? 私が英語のセリフを聞き逃してしまったのか?

 けれども、敵だったハリーがスパイダーマンを助けにやってくるところ、あのシーンはかっこよかった。ハリーというキャラクターはこれまであんまりいい感じじゃなかったが、今回はすごく良かった。記憶をなくして恨みを忘れた時のあの目じりにぐわっと皺が寄る笑顔もいいし、オムレツ焼いたりするあたりの雰囲気もいい。今回一番ポイントが高かったのは彼だろう。

 それから『スパイダーマン』シリーズはコメディ・パートの充実も特徴だが、スパイダーマンがエレベーターに乗ったりコスチュームをランドリーで洗ったりしてはじけまくっていた前作と比べて、今回のコメディ・パートはそれほど面白くなかった。新聞社の編集長があいかわらず笑わせてくれたぐらいだ。ピーターが踊りながら歩くあたりで映画館では笑いが起きていたが、別に笑えなかったなあ。

 今回のテーマは「復讐はいけません」「許す心が大事」ということだったが、一作目の「大いなる力には大いなる責任が伴う」というのと同じく、ものすごく分かりやすいテーマと結論だった。ある意味薄っぺらい。これはやっぱり子供達を意識してのことだろうか。今回ダークサイドに落ちたスパイダーマン、しかしダークサイドの描き方は『スターウォーズ/エピソード3』あたりと比べるとかなりちゃちい。やり過ぎるとヒーロー像に支障をきたす、という製作側の煮え切らなさが伝わってくるようで、そこもやはりスケール感の小ささにつながったような気がする。


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