崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

お知らせ:下川正晴氏東亜大学で特講

2018年12月15日 06時28分17秒 | 講義

 日本で韓国の映画を紹介している言論人下川正晴氏(元毎日新聞ソウル支局長、論説委員)が明後日12月17日12時50分から東亜大学で「植民地朝鮮の映画」について講義をする。市民の参加も歓迎している。下川氏は1970年毎日新聞山口支局、1980年に北九州に務め、大分短期大学では韓国映画上映会も多く行った方である。ソウル留学、韓国人が偏見と誤解に凝り固まっているのが分かったという。彼は次のように「下関は、僕の朝鮮理解の出発点になった場所と言って良い」と書かれている

レジュメ:「映画は超時空旅行である〜日本統治下の朝鮮シネマ群像」
 ●ソウル特派員としての体験(例:慰安婦問題)
・書かれたものは信用しない(特に教科書)。理由:思想で再構成されたものだからだ。
・証言も全ては信用できない。裏取りが必要だ。
・映像の力=①意図しなかったものまで映っている②その時代の思想によって編集されている③目と耳による感性的認識は、多様な歴史認識に至る入り口である。

●植民地朝鮮(台湾)をめぐる論争:「収奪論」vs「開発論」vs 「植民地近代論」

●日本統治時代の朝鮮シネマの発掘:2004年以降、中国電影資料館などで見つかる。十数本。新しい(自分ならではの)植民地認識への入口になる。韓国で研究進む。日本での研究は崔吉城先生など一部にとどまる。

●実例①ネットで全部見られる朝鮮シネマ:李炳逸監督『半島の春』(1941)。朝鮮の美人女優・金素英(女学校を卒業したばかりの女優志願生役)が主演。1940年当時の京城(現在のソウル)を活写し、当時の朝鮮映画界の苦闘をメロドラマ化した作品。→では、見てみましょう①何を感じましたか?

●実例②DVDで見られる朝鮮シネマ:崔寅奎監督『授業料』(1940)。光州の朝鮮人小学生の作文が原作(朝鮮総督府学務局長賞)。八木保太郎が脚本を書き、薄田研二が先生役を演じた。当時の小学校の様子がよく分かる。僕の評価=朝鮮シネマのベスト・ワン。崔吉城先生もDVDを持っておられる。→では、見てみましょう②何を思いましたか?
●実例③DVDで見られる朝鮮を舞台にした日本映画:今井正監督『望楼の決死隊』(1943)。「永遠の処女」原節子らが主演した共産ゲリラ掃討の国策映画。監督は戦後の共産党員。朝鮮人出演者は解放後の朝鮮映画界トップに抜擢されたが、のちに金日成によって粛清された。Amazonで中古DVDを売っている(僕が宣伝して以来、値段が高くなる一方です、笑)→では、見てみましょう③何を勉強したくなりましたか?
●歴史認識とは何か?:戦争は、人民を大量殺害した「大火事」であった。
「円錐」は、どんな形をしているか? 真横から見れば三角形、真上から見れば円である。
新聞記者の基本「火事取材」=前後左右から、上から下から観察し、被災者(火元?)や消防団員らに話を聞く。
●再び「映像の力」とは何か:①意図しなかったものまで映っている②その時代の思想によって編集されている③目と耳による感性的感覚は、多様な歴史認識に至る入り口である。そして「敗者は映像を持たない」(大島渚監督)=終わり。