崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

「伊豆の踊子」

2018年11月01日 05時35分46秒 | エッセイ

 コンサートや演劇などの誘いのチラシが届いている。「伊豆の踊子」を楽しく、精読した。映画から考えてあまりにも短い「短篇」文庫本20数ページの小説、辞書を引きながら読んだ。映画より感動した。私の二十代、文学青年だった私が韓国伝統的な芸能グループを追って歩いた「場面」とオバーラップしている。「軽蔑を含んだ婆さんの言葉」「土地の人は馬鹿騒ぎをするばかりで」「二人が夫婦であることをちっとも知らなかった」「生娘」「今夜が汚れるのであろう」「寂さを感じた」・・・と詩のように綴られている。
 自分の人生を振り返ってみると、多くの失敗は文学の影響であると思うことがある。李光洙の「土」「友情」「無情」などのロマンチックな世界、文学家になろうとし、そして旅芸能集団の調査が私の学問の基礎となった。そこには差別と芸能が生かされていた。芸能を長く鑑賞しても歌一曲歌うこともできない私。学ぶことも練習もしなかっからである。私の学問は計算や訓練的なものとは異質のものである。ただアマチュア的なものである。私はいまだに幻想の世界から世俗を批判する傾向がある。