崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

結婚誓約

2014年10月25日 04時47分44秒 | 講義
韓国の言葉と文化という講義で冬のソナタで教会式結婚式を見せて、せりふ「나 정유진은 강준상을 남편으로 맞아 평생 아끼고 사랑할 것을 서약합니다(私ジョンユジンはカンジュンサンを夫として迎え一生大切にして愛することを誓約します)」の意味を問いながら暗唱するようにした。「大切にして愛する」(아끼고 사랑할)という二つの単語の日本語訳が難しいことを知った。아끼고 という単語は節約、控え、「もったいない」などの意味があるがぴったりする日本語が見つからない。사랑(愛)という単語も日本語では愛と訳するより「好き」と訳した方がよい場合が多い。日本ではキリスト教会以外ではあまり使われない。韓国語でも古語でいう愛という言葉はクリダつまり懐かしむような間接的な言葉である。愛は近代語である。
 このように翻訳は文化や社会を知らないと難しい。辞書を以て言葉の変換式の翻訳ではうまく表現ができない部分もあり簡単ではない。先日オーストラリアの‎Adam Park-Zulawnik氏からその旨「文化訳」を紹介する文を送っていただいた。彼は英語圏の方で日本語と韓国語が完ぺきな方であり、翻訳の難しさに触れた。彼は韓国語の文学作品の良い英語訳が少ないのでノーベル文学賞が取れないと言った。そして韓国人がよく使うウリ(我が)を例にして韓国人がナショナリズム、民族主義から脱皮しないとノーベル文学賞は難しいと主張した。いま日本の右傾化を心配する声が高い。しかし日本は右翼といっても一部にすぎないが、韓国では国民の大部分が同じ考えであることが問題であるとも言われている。