崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

「突然の電話」

2011年07月15日 05時22分59秒 | エッセイ
 一昨日、韓国の若手の学者に突然電話をかけた。数年前ソウル大学校で開かれた文化人類学会の時に初めて挨拶をかわした方で編集の件でメールが入っていたのでそのために電話をしたのである。彼は、電話に応じて「恐縮、恐縮、光栄だ」と驚きと嬉しさを何度も表現していた。私も嬉しかった。昔私も大先輩の学者から電話を受けて嬉しかったことを思い出した。日本では現在このような電話は突発、唐突なことになるかもしれない。しかし私が生まれ育った韓国では突然の訪問、突然の電話は嬉しいことである。しかし都市化され、今では時間などの約束が一般化されており、突然ということは少なくなっている。本当に稀に友人に電話をすると驚く声が嬉しさを感じさせる。このような嬉しさが減っていく。最近はメールなどでワンクッションをおくからである。突然に電話で音信を伝える電話か少なくなり、嬉しい電話は減っている。その代わりに約束の電話、約束しての訪問が一般的である。それは事務的、仕事的になる。昨日ある外国人から電話をうけた。今朝研究室で彼と会うことになった。お互いに話す内容や時間などが決まっている。
 昔韓国で電話が不便な時代にスイスから女性研究者が突然現れた。もちろん私よりもはるかに身長が高く、そのうえに、高い帽子を被った女性が突然現れたのにびっくりしてとっさに言葉が出なかったことを覚えている。しかしそれも驚いて、嬉しいことだった。彼女はシャーマンの研究者だった。初めて会う人には期待感が誰にでもある程度あるかと思う。見合いする人の心のように、心の準備をして相手を向かえることも嬉しいことである。