つい最近、『愛の妖精』の英訳版が出たそうです。
La Petite Fadette
Gretchen van Slyke
The University of Vermont
日本で最初に『愛の妖精』が翻訳されたのは81年前の1936年のことで、宮崎嶺雄が訳出した岩波文庫でした。
その20年後には小林正訳(1953年、角川文庫)、以降20世紀後半まで、次のようにほぼ10年毎あるいはそれ以内に新訳が出ています。
田中倫夫訳(1962年、学習研究社)、足沢良子訳(1963年、岩崎書店)、谷村まち子(1964年、偕成社)、篠沢秀夫訳(1966年、旺文社文庫、のちに中公文庫)、桜井成夫訳(1967年、講談社)、権守操一訳(1973年、評論社)、南本史訳(1985年、ポプラ社)、篠沢秀夫訳(2005年、中央公論社)。
ところで、日本の翻訳文化は非常に発展していると云われますが、欧米とくにフランスでは翻訳はマイナーなものと見なされているようです。
実際のところ、翻訳の報酬額はフランスでは非常に低く、他の仕事と兼業しなければとても生活していけないそうです。なぜかくも翻訳が軽視されているのか。そこには、フランス語がメジャーな言語であるという事実が大きな要因として働いているように思われます。多くの人が話す言語で書かれた書物は、翻訳する必要はないからです。OIFの調査によれば、現在、世界でフランス語を話している人は2億2千万人も存在し、2050年にはフランスの高い出生率やアフリカ諸国の人口増加により、その数は5億人を超えると推測されています。
少子化まっしぐらの日本では、将来、翻訳はIT頭脳が担うことになるとしても、翻訳は価値ある仕事とみなされるのでしょうか。