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何故米国はテロに狙われねばならないか

2008年09月21日 17時22分14秒 | 外交問題
米国はイラク戦争でイラクの石油利権を確保することと、イランに対する「西側防壁」を築く必要があった。サウジをはじめとする湾岸諸国への緩衝地帯があることは、中東の安定に役立つと考えられるからだろう。ペルシャ湾を挟んでイランと向かい合っているので距離的には近いのだが、「海がある」というのは、それだけで緩衝作用を持つのかもしれない。


一方、イランの東側はといえば、パキスタンとアフガニスタンがあるけれども、どちらも米国の戦略が成功を収めているとは考えられない。パキスタンは一時期インドとの緊張緩和や旧西側諸国との関係を改善したものの、再び混乱に陥りそうな情勢となっている。米国がインドに肩入れし「インドの核」を認めるに至ると、パキスタンとしては「面白くない」ということになるし、いつまでも「親米路線」を続けることもできなくなるだろう。ムシャラフ大統領が去った今、パキスタンは独自路線を進むかもしれない。アフガニスタンについては、旧ソ連時代も含めて30年に及ぶ戦争の歴史を持つので、そう簡単に戦争を終わらせられるとも思われない。むしろ、米国が介入するようになってから、事態は一層悪くなった。その悪化した地域に、「酷くなったので戦力を増強する」という米国の軍事的方針そのものが、何の効果をもたらすのか定かではない。


現在アフガニスタンで米軍やNATO軍と戦っているらしい、テロたちの目的や目標というのは、一体何なのであろうか?

アフガニスタンの山奥に住むテロたちが、「米国占領」とか「米国支配」を目論んで、米国まで進軍して行くとでも言うのであろうか?
或いは、「虎の穴」(笑)のようなテロ養成所の本拠地があって、そこからテロリストが大量に送り出され、大挙して米国を襲いに行くということなのだろうか?
欧米諸国が介入することを止めたら、テロ国家が誕生してしまい、その国が周辺の国々に戦争を仕掛けたり、欧米に攻め込んだり(笑)するので、後々大変なことになってしまう、ということなのか?たった一つのテロ国家が誕生すると、その国が世界制覇をしてしまうと?


仮定でしかないが、もう少し考えてみよう。
アフガンから全軍撤退し、自由にさせたとしよう。
アフガン国内で内戦となって、米国の言う「テロ国家」が誕生してしまう、と。その国をとりあえず「ネオ・テロ国」と呼ぼう。
ネオ・テロ国は内政運営は自由なので、急速に軍事力や核ミサイルなどの攻撃力を身に付けて、世界征服に乗り出す。そうなれば、悪の帝国であるネオ・テロ国が世界を支配してしまうであろう。何としてもこれを阻止せねばならない。正義の国アメリカが、そうなる前に悪巧みを粉砕しなければならない。放置すれば、必ずや「ネオ・テロ国」が誕生してしまうであろう。

大体、こんなストーリーでしょうか?
つまり、ひとたびネオ・テロ国が誕生してしまうと、アメリカやイギリスやその他先進国の軍事力が太刀打ちできないくらいに強力な国家となってしまい、みんなが勝てなくなると信じているということであろう。テロ指定国家である北朝鮮は、軍事力を背景にゴネて「金をせびる」が、国自体は極めて貧乏であり、韓国、中国や日本に攻め込める程の脅威とはなっていない。もしそれ程の脅威国と認定されているなら、米国が2国間交渉などするはずもなく、軍事的攻撃によって北朝鮮の軍事力を破壊し政権を倒してしまっていても不思議ではない。だが、現実にはそうなっていない。「ネオ・テロ国」が誕生したとして、本当に強力な軍事国家ができるのだろうか?米英軍を打ち破れる程に強力な軍事力を持つことが可能なのだろうか?私には、そんなことが可能とは思われない。

実際には「強大な敵」でも何でもなく、ただの辺鄙な片田舎にいる武装集団、というだけに過ぎない。
米国本土でテロが行われることがあるとしても、それは戦争なんかではない。単に憎まれていたというだけ。報復の連鎖を引き起こした元凶である米国に対して、仕返しが行われたということだ。その種を蒔いたのは誰か?米国自身だ。重大な犯罪ではあるけれども、国家間の戦争ではない。過去40~50年間で、テロ行為が行われたことを理由にして戦争を行うということが、果たしてあったのか?
アイルランド、スペイン、イタリアなどが数十年も続く戦争となってしまった、などということは聞いたことがない。


海上でテロリストが攻撃してくる、という話もあるが、もし実際にいるとしても、それはアフガンではないだろう。陸地を飛び越えて海に攻撃には行けないからね。パキスタンやイランにテロの船がある、とでも言うのであれば、その船を攻撃する方が効率的である。アフガンの山奥に行くより、断然早く片がつく。
ソマリアのように海賊行為で稼ぐ連中もいるようだが、それは戦争には関係のない話である。海賊退治なんて「対テロ戦争」なんかじゃない、と言っているのですよ。


麻薬密売取引によって金が入り、その金で武器を買い、結果的にテロが武力を持ち続ける、という話もあるが、それなら資金源を絶つことを考えれば済む話ではないか。買ってる連中がいるからこそ、金になるわけで、それはどこの人ですか、と言えば先進国の誰かであることが圧倒的に多いだろう。自国内の麻薬密売者を徹底的に摘発してしまえばいいだけだ。どこかの国のように、死刑や終身刑なみに重い刑罰として、麻薬密売ルートを壊滅させたらいいよ。買う人間がいなければ、誰も作らなくなるに決まっている。売れないのに麻薬栽培したいアフガン人は誰もいない(笑)。
もっと極端なことを言うなら、「もっと安い麻薬」を南米や東南アジアあたりで効率よく栽培して、合法的に商売できるようにしたらいいんじゃないか?米国ならば、それくらいは簡単にできるであろう。元々麻薬使用が蔓延しているし、麻薬禁止に反対する経済学者はいくらでもいる、ということなのだからね。資金供給を絶つ手段なんて、いくらでもある。

アフガンを放置したとしても、特別に凶悪な国家が登場してくるようになるとも思われない。強大な軍事力を持つのも難しいであろう。そんなに簡単に米英に挑めるのであれば、ロシアはもっと早くに実行できているだろう。


フランス革命が起こった時、フランス国内ではテロがごく普通に行われた。テロが成功したので、ギロチンで国王を処刑することができたのだから。既存の政治体制を倒す為の暴力、これがテロ行為と何ら違いがないのは当たり前だ。当時のフランスに介入した欧州列強国はあったが、フランスは戦い抜いて生き残った。フランス国民軍が海外の軍事勢力を退けた。ナポレオンも生み出してしまったけれどもね。
当時の介入した国々は、フランス国王側が正義で、テロ集団が悪いヤツラで、このまま放置すればフランスに凶悪なテロ国家が誕生するから、という理由とか大義名分で革命を潰そうとした。単なる自分の国の事情とか自己都合によるものだ。王権とか王政が揺らぐ、という危惧があったに過ぎない。要するに、これまで保たれていた「自分たちの権威(権限)喪失」と考えた国々は、フランス革命に介入して、反体制側の「テロ集団」(笑)を潰そうとしたということ。

アフガンのテロ集団を潰そうとしているのが、フランス革命への介入とはどう異なっているのか、その違いについてはよく判らない。
アフガンのテロリストたちは、テロ行為によって何処かを脅して金を奪ったりしているのだろうか?脅迫が成功しているのか?そんな話は聞いたことがないが。では、アフガン国外に「攻撃しに行く」というのが、政治的革命ではなくて「単なる暴力行為」に過ぎないから、その行為を止めさせる為に戦争を仕掛けているということか?それは国家の戦争ではなく、犯罪行為でしかない。
イギリス国籍を持つ人間がスペインでテロ行為を実行したら、スペインがイギリスに戦争しに行くのか?(笑)
パリにアジトを持つテロリストがベルギーでテロ行為を実行したら、ベルギー軍はフランスに攻め込むのか?(笑)
そんなことはあるまい。


元はテロ集団の打ち立てた国家であるフランスが、その後もテロ国家であり続けたとは誰も思わないだろう。テロを成敗するのは、犯罪行為を厳しく取り締まることであり、戦争をすることではない。
対テロ戦争とは、大袈裟に作られた「恐怖のイメージ」でしかない。想像上の産物なのだ、ということ。
米国が恐怖するとすれば、それは過去に「何人も殺しまくってきたから」であって、その仕返しを恐れているに過ぎない。ヤクザの「お礼参り」みたいなものと同じだ、ということ。犯罪は糾弾されなければならないが、根本原因がなければ「お礼参り」は引き起こされない。報復の連鎖は、誰かの命を理不尽に奪うという殺戮から始まるのだ。狂信集団の如く、思想的に「米国は滅びるべき国だ」と思われているならば、オウム真理教団の摘発と同じ意味合いであり、これも戦争ではないはずだ。米国は倒さねばならない、と考えるのと同じくらいに「イギリスは~(以下略)、フランスは~、ドイツは~」という具合になっても良さそうなのに、何故か狂信集団の敵とされるのは米国ばかりで(笑)、他の国は忘れ去られているらしい。


アフガンのゲリラやテロリストたちは、巡航ミサイルも持ってないし、ICBMも持ってない。戦略爆撃機もなければ、原子力潜水艦も持ってない。彼らの軍事力は、たかが知れている。その程度の相手に向かって、「強大な敵」もあるまいに。米国への攻撃は、厳しい入国審査や通信傍受や衛星画像・監視カメラなどの予防的措置によって、ほぼ防げているのである。これは犯罪予防という手段によって、「テロからの攻撃」というのがほぼ回避されているということであろう。「9.11」で受けた損害は小さかったとは言えないが、その死者数よりもイラク戦争やアフガンでの戦闘で死亡した米兵の数の方が多いだろう。これは、反撃する方が被害が大きい、ということなのではないか?

いうなれば、聖書の教えのように「右の頬を打たれたら左の頬を差し出せ」ということで、無理に反撃しない方が被害は小さいのに、殴られたから「何倍か殴り返してやるぜ、完膚なきまでに叩きのめしてやるぜ」と思って殴り返すと、余計に被害を拡大して反撃する前よりも大きなダメージを受けているのと同じだ、ということ。キリストは、「右の頬を打たれたら相手に往復ビンタを返しなさい」とか教えたのか?そんな教えを説いたことなどなかろうて。


欧米人の出す理屈というのは、無知による「自分勝手な主張」みたいなことがあるように思われないでもない。元から「自分の為に都合よく組み上げられた理屈」を、相手に押し付けている、ということだ。
「十字軍は正しく、敵であるイスラム教徒は倒されなければならない」みたいに、欧米諸国が面と向かって大声で言えるのか尋ねてみたいものだ。

「キリスト教徒を迫害したイスラム勢力は悪なので、全部やっつけなければならない、キリスト教徒を殺したイスラム教徒との戦いに勝って、我々の正義を示さなければならない」

アフガン戦争が十字軍と同じだとは言わないまでも、攻撃する正当性の理屈や「対テロ戦争」というスローガンを掲げている精神性は、あまり大きな違いがなさそうにも思われるのである。