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医療過誤と責任・賠償問題についての私案~その8

2008年09月04日 13時13分59秒 | 法と医療
これまでの経過>

医療過誤と責任・賠償問題についての私案~その6(1~5はこの中にリンク有)

医療過誤と責任・賠償問題についての私案~その7


過去に幾度か書いてきましたが、法案に反対するのはご自由ですので、好きにして下さい。
第三者機関ができない(代替案も実施されない)なら、これまでと同様の状況が継続されるだけなので、現行法制度の枠組みで頑張って下さい。多くの医師が反対しているであろうと思われる、「これでは警察や検察という司法の介入を招く」ということが、今までと同じ状態で維持されるというのが、法案が潰れた場合の結果である、ということです。そういうことを考えた上での賛否であろうとは思いますが。

ところで、反対している医師たちを説得する役割というのは、一体誰が担うのでしょう?国会議員ですか?官僚が行うのですか?それとも、マスコミ(笑)や患者ですか?

本気で刑法211条の改廃を目指すのであれば、そういう工作や運動を頑張ってやればいいだけです。お抱え弁護士だろうと、医学系団体だろうと、そういう運動を皆さんがやっていけばいいでしょう。少なくとも、法学関係者たち(法曹やその他学者さんとか)に論戦で勝てなければダメでしょうから、さっさと刑法の権威だとか法務省の偉い人とか、相手は誰でもいい(というか、私には適切な相手というのが判りかねます)ので法学的な決着をつけてごらんなさいな。
一部弁護士がそう言っている、とか、個人的見解とか、そういう末端レベルの話ではなく、本格的に残りの法曹や法学関係者たちを説得すればいいだけですから、「法学のド真ん中」で戦いなさい。そこで勝つ見込みというか目算があるのが当然だからこそ、刑法211条を云々できるわけでしょう?それをやれば、すぐに結論が出せるはずですよ。法学的な議論において、法学関係者たちを説得or論破できないとなれば、改正の見込みはあるのですか?主張している弁護士たちが、何故決着をつけないのか不思議だ。


法案に反対、と言っている医療側の人というのは、第三者機関設置に反対なんですか?もしそうであるなら、その旨表明するべきだし、設置には賛成だが法案の中身には反対ということであれば、何が反対なのか、修正では応じられないのか、そういうことを明確にすべきだ。全く別の案にするなら、自分たちの好きなように考えて、「対案」を出せばいいだけだ。


これまでの状況を傍から眺めていたのですが、一部弁護士あたりが「本当にそうなの?」と思うような解説を付けていたりするようなのですが、それを多くの人が鵜呑みにしているのでしょうか?
行政法や行政制度の知識に乏しいかもしれない弁護士の話というのは、どの程度の正確性とか妥当性があるものなのでしょう?低レベルの解説を聞いてみたところで、何の役に立つと考えているのか疑問に思います。



偶然発見したのですが、こういうご意見があるようです。

厚労省第三次試案の法的弱点(その3)ー井上清成氏による|kempou38のブログ

弁護士の方の意見ですから、きっと専門的立場からの意見なのだろうと思います。私は法曹でもない単なるド素人に過ぎないので、弁護士先生に批判できる自信があるわけではありませんが、中身を見ると「本当に行政について理解しているのだろうか」と疑問に思います。こういう意見を聞かされている医師たちの中には、信じてしまう人が出てもおかしくはないかもしれません。これに基づいて、当該委員会設置には反対だ、ということであるなら、お好きにどうぞ、と思います。


井上弁護士の指摘した各論点について、個別に書いてみる。

医療者代表選出には、医療者の選挙だの医療界団体協議による選出だの、委員会設置の根本的問題なんですかね(笑)。航空・鉄道事故調査委員会のメンバーには、そうした選挙みたいな制度があるんですか?それが法的に規定されていなければ、鉄道のことを何にも知らない人ばかりが選ばれてしまうわけですか?(笑)
通常、人事の決め方は似ていて、内閣が指名し国会同意というのが多いように思いますけれども、それで実務上大きな不都合を生じた事例というのがあるのであれば、それを示して欲しいものです。

法律家の参加は不必要、というのも、委員会設置の是非にはあまり関係のない論点であり、「絶対にいらない」と頑強に主張するなら国会にそうしてもらえればいいんじゃないですか?(笑)
日銀総裁(副総裁もだけど)人事で、不同意ということになれば決められなかったわけで、国会のチェック機構(笑)は一応機能していることが実証されたみたいですけど。これも主要な論点でも何でもなくて、反対すべき理由の一つに挙げてみたかっただけのようにしか見えませんね。

刑事司法のコントロール権を完全に与えるというのは、行政組織としてはあまりないと思いますけど。JR西日本の脱線事故の場合ですと、航空・鉄道事故調が報告を出してから送検ということであったように思います。事故調には刑事司法のコントロール権なんてないわけですが、そうであっても、そうした運用がなされているわけです。


公取の場合には、近年法改正されて犯則調査権が設定されまして、これは検察捜査(告発)を前提とした調査権限行使ということが法律上で定められました。それ以前には、検察告発事例というのが区分されておらず、どれも同じ調査権限でした。そうではあっても、全部を告発していたわけではなく、調査したうちの一部だけが告発対象となっていました。現在は、独禁法12章権限以外であれば、旧来と同じ行政調査権限です。この場合には、排除命令や課徴金納付といった行政処分か、不服として審判請求で争うというのは以前と同じです。審決が出ても争うという場合にのみ、訴訟ということになっています(高裁スタート)。

で、調査開始の契機といいますか端緒となるのは、職権、一般人の申告、内部告発(課徴金減免制度)、中小企業庁の請求、というのがあります。検察への告発を前提とする犯則調査で、一般人からの申告であった場合でも、公取がまず調査を行う、ということになっているわけです。行政調査権限であると、以前にも紹介した(法律家にお願いしたいこと)ような、多数の法律に見られるのと同等の権限ということになります。犯則調査のような「裁判所令状」を必要とする強制力が発揮されるものではなく、弱い権限という位置付けかと思います。

基本的には、行政調査の場合で刑事罰を受けることになるのは、違法にこうした行政調査に逆らうような場合のみであり、行政調査は「その後に続く刑事罰」を与えるということを目的としていないからではないかと思います(犯則調査であれば、その後には検察への告発があるという前提となりますので異なります)。つまり、行政処分を行う為の調査なのであり、本来的には刑事罰を与えるものではない、という主旨かと思います。改正前であると犯則調査がなかったわけですから、基本的に刑事罰を目的とはしてこなかった、検察への告発は特別な事例のみという運用が行われてきた、ということです。

全医連が出した調査権限に「裁判所令状」というのが出ていたと思いますけれども、あれを導入するということになれば、犯則調査と同じ意味合いになってしまうので、この後には刑事手続が控えている、というのを前提とすることになってしまいます。ですから、木之元弁護士の解説の如くに行政上の調査に係る権限は憲法違反だ、というような主張を真に受けて信じてしまうなら、令状主義に基づいて調査を行うのだ(=裁判所令状があるので、法的強制力はより強力になってしまう、刑事司法の手続に事実上則る)、ということを自ら肯定・是認することになってしまうでしょう。医療安全調査委員会の権限強化は危険だ、とか言いながら、わざわざ強い権限を持つ組織に仕立て上げようとしているとしか思われませんね。

やや論点が離れますが、当該委員会の持つ行政処分権限が強力過ぎる、とかの批判も目にすることがあったように思います。しかし、医療以外の分野においても、許認可取消や業務停止命令等の、比較的強力な行政処分権限は現在の省庁であっても有しているでしょう。こうした他分野との比較において、当該委員会の持つ権限が強すぎる、ということを主張しているのか疑問に思います。現時点であっても、「医師免許取消」処分の権限もあれば、医療機関の業務停止命令の権限も厚生労働省又は都道府県知事が握っています。当該委員会だけが暴力的な強権を持つ組織として成立するわけではありません。他にも、例えば公認会計士・監査審査会の権限との比較で、特別に無謀な組織となっているんでしょうか?
反対意見を述べている弁護士の方々が、そういうことを果たして考えたことがあるのか、甚だ疑問です。


手続法として問題がある、という主張をするのであれば、足りない部分を「条文中に書き込めばよい」だけではないかと思うのだが。法曹であれば、多分「適切な条文」というものを具体的に書けるはずであろう。それを是非教えて欲しい。具体的な例示として、早急に出して欲しい。

実体法の欠如というのも、具体例云々を言う前に、検討会の資料や議事録くらいは読んでからにしてはどうかと思います。クーパー使用が、みたいな単純事例だけではなく、もっと複雑な具体例も数多く出されていたのであり、井上弁護士が想定可能な例などではないでしょう。議論があまりに乱暴すぎるという指摘をされておられるが、乱暴なのは一体どちらなのか考えてもらいたいですね。

実体法にない概念とか言っているのも、疑問です。もしも、実体法上で何らの区別がないのであれば、211条1項は「業務上必要な~~処する。」で終わってよいはずではないか。何故、その後に「重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。」と続けなければならないのか?「重大な過失」という区分(概念?)が法的に存在していないのであれば、単に「業務上~処する」で済む話なのです。わざわざ余計な一文をくっつける必要性というものがないでしょう。しかし、実際には、最初の文と、それに続く「重大な過失~」の文は、条文上で明確に分かれているのであって、立法主旨としては(法律用語ではなく)“重大な”過失があれば、重大には至らない過失よりも罪が重い、ということでしょう。つまり、普通と重大と、区別があるということです。その範囲については、キッチリと線引きできるものではないので、個別に判断していくしかない、ということでしょう。「何が重大か」という法的定義は明確には存在していない、ということであると思います。平たく言ってしまえば、感覚の問題であり、主観的な評価による、ということになってしまうでしょう。これまでの運用上においても、法的に厳密な定義をすることなく「重大な過失」として認定されてきたのではないかと思います。

刑法上の評価を行うことなく、単なる情状で判断して警察に通知する、ということを問題としているのであると思うが、そもそも当該委員会は裁判所ではありません。例えば「刑法上の犯罪」として認定し、その認定したものだけを警察に伝えるということを行わねばならないとすると、委員会は裁きを行っているのと同じではありませんか。そんなことは検察だって、できません。不可能です。それを法の素人集団(法律家は入れるな、というご主張でしたよね?)でしかない当該委員会に求めるというのは、どういうつもりなのか理解しかねます。検察でさえ「犯罪だ」と思って裁判所に通知(実際には起訴)したのに、裁判所に「それは違います」ということで無罪判決を出されているではありませんか。それなのに、当該委員会に「刑法上の(重大な)過失」を実定法上で確定し(そんなことできるの?)、その確定したものだけを警察に通知せよ、と仰るわけですか。当該委員会は司法上(刑法上)の裁きを与える(決する)組織ではありません。
つまり、「これは犯罪なんじゃないか?」と委員会が判断した(そういう印象を持った)事例について通告するということなのであり、当該委員会の設置法等に例えば「刑法211条の適用事例」を通告せよ、というように、条文上に規定すること自体が不可能でしょう。「刑法211条の適用事例」かどうかを知ることができる(判定できる)のは裁判所だけだからです。裁判によってのみ、それが明らかにできる、ということになっているからです。法案中にそうした法的規定を置け(実定法として定めよ)、という要求そのものが、無理があるのではないかと思われるが。


何度も引き合いに出すが、公取の犯則調査と行政調査の区分についても、あくまで公取の主観的判断によるものであり、極端にいうと「悪質の程度」が並外れて酷いとか社会的に大問題だというような事例は犯則調査ということになるし、厳密に解釈を行えば事実上違法であっても軽微な事例については行政処分で対応している、ということになっているでしょう。
独禁法の12章権限は89条適用事例が該当するが、89条は3条違反や8条1項1号違反があれば、その適用となります。

条文では、

・事業者が、単独に、又は他の事業者と結合し、若しくは通謀し、その他いかなる方法をもつてするかを問わず、他の事業者の事業活動を排除し、又は支配することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限すること(3条違反)

・一定の取引分野における競争を実質的に制限すること(8条1項1号違反)

となっており、いずれもやや抽象的な部分があるのである。

したがって、個別の事例ごとに公取が判断し、犯則調査と行政調査を振り分けるよりないのである。「競争の実質的制限」という違反を厳密に解釈・適用すれば広範囲に及んでしまうことになるであろうが、実際には検察に告発されているのは一部に過ぎないだろう。12章規定が制定される以前には、区別のない調査権限でしかなかったが、公取が告発事案を内部的に判断して(検察との事前協議は当然あったろうが)、告発していたということである。独禁法45条4項において、
『公正取引委員会は、この法律の規定に違反する事実又は独占的状態に該当する事実があると思料するときは、職権をもつて適当な措置をとることができる。』
となっているが、「適当な措置」というのが厳密かつ具体的に定められているかといえば、そうではないでしょう。
行政調査かそれとも犯則調査に該当しているかの区分は、たとえ同じ3条違反とか8条1項1号違反であるとしても、公取が内部的に判別しているに過ぎず、条文上では12章規定を適用するのは「必要があるとき」という規定があるのみです。つまり「必要なら」犯則調査ができますよ、という定めなのであり、行政処分で対処し検察への告発をしないという事案であれば、3条違反があることが判っても「適当な措置」で済ませることも可能です、ということです。


こういう時にも、弁護士の先生方は、「適当な措置」という曖昧な規定ならば大変なことになってしまう、とか言うのでしょうか?或いは、「必要があるとき」といういい加減な条文だから、検察捜査をどんどん狙って、好きなように司法権力の介入が行われてしまうので「大変危険だ!」とか、大騒ぎをするのでしょうか?

ならば、独禁法改正の前に、大規模反対運動でも展開しておけばよかったものを、そうした法案阻止運動が大々的に行われたことを私は知りませんが。勿論、経済団体とかは反対声明を出していたと思いますけれども(主に罰則強化に対して)、業界団体が反対したとて立法措置はなされたわけですが。

要するに、弁護士の先生方は、行政法や行政制度等について十分に理解してもいないにも関わらず、通り一遍の批判を出しているとか、法案の文言だけを見て不備を指摘したいということの為に、低レベルな批判や解説をしているとしか思われません。法案成立阻止という意図だけにしか見えない、ということです。


代替医療っぽい分野でも、よくいるんですよ。まともな医学的議論からは外れているにも関わらず、「○○をすれば病気が治ります」とか言う輩が。医学的理論に基づいて正しいのであればよいのですが、他の専門家(医師)たちに簡単に撃破されることは珍しくはないでしょうね。なので、法学上の論争(専門家同士による評価)を突破できた論説だけが信頼に値するのであって、どこぞの個人が「違憲ではないか」「法に欠陥があるのではないか」というような見解を述べたとしても、全くあてにはならない、ということです(当然、私も含めて)。法学素人の一般人には、正しい解説を行っている人の見分けがつけられない、ということです。正当な医療ではない、まがい行為に引っ掛かるのは、患者が正しい医療と怪しげな療法との区別がつけ難いから起こるのだ、ということは覚えておいた方がよいと思います。