しごとのあと、久しぶりにジュンク堂書店池袋本店へ。松村正直著『高安国世の手紙』(六花書林)と、きさらぎあいこ著『近藤芳美の音楽の歌―或る楽章からマタイ受難曲まで』(本阿弥書店)を購入。高安国世氏といえば作曲家松村禎三氏。松村氏は、肺結核闘病中に俳句結社で結社賞を巡り寺山修司氏と張り合ったほどの俳人だが、旧制三高時代は恩師の高安国世氏にいくつかの作曲作品を献呈しているらしい。まことに興味深い。
らあらあとわが声徹りゆく森よ 応(いら)へなきゆゑ癒ゆるこころは 大辻隆弘
大辻さんの第1歌集『水廊』所収の一首。「らあらあ」のオノマトペと、「声徹りゆく」の「徹」の字がまず目を引く作品。誰もいない森に向かって「らあらあ」と叫ぶ作中主体。その声はすうっと徹って、戻ることなく深い森の奥に吸い込まれて行くのだが、とくべつ何も「応へなきゆゑ」、作中主体のこころはしずまってゆく。そういう一首。
大辻さんの第1歌集『水廊』所収の一首。「らあらあ」のオノマトペと、「声徹りゆく」の「徹」の字がまず目を引く作品。誰もいない森に向かって「らあらあ」と叫ぶ作中主体。その声はすうっと徹って、戻ることなく深い森の奥に吸い込まれて行くのだが、とくべつ何も「応へなきゆゑ」、作中主体のこころはしずまってゆく。そういう一首。